2015年12月5日土曜日

中国で倒産ラッシュ

中国で企業の大量倒産が発生している。かつては「世界の工場」と呼ばれた工業地帯の珠江(しゅこう)デルタでも、主要な一都市だけでこの1年で4000件もの企業が倒産したというのだ。国有企業を含む大企業の社債でも債務不履行(デフォルト)や利払いが遅れるケースが目立つ。人民元が国際通貨基金(IMF)の主要銘柄に選ばれたと喜ぶ中国だが、こうした破綻ラッシュは実体経済悪化の深刻ぶりを示しているようだ。

広東省の珠江デルタは、広州と香港、マカオを結ぶ三角地帯を中心とする地域を指す。中心都市の一つ、東莞(とうかん)市は1980年代以降にパソコンや家電製品、日用品などの工場が集積、外資系のメーカーも数多く進出した。出稼ぎ労働者相手の風俗が栄えたことから「性都」との異名も取った。

中国の毎日経済新聞のニュースサイト「毎経網」など地元メディアは、その東莞では1年間に電子製品など製造業を中心に少なくとも4000社の企業が倒産したと報じた。これは2008年のリーマン・ショック時以来2度目の倒産ラッシュだという。

報道によると、東莞では欧州の通信機器大手ノキアが4月に工場を閉鎖。労働コストの上昇もあって中国の内陸部や東南アジア、インド、アフリカなどへの工場移転も相次ぎ、空洞化が進んでいる。相次ぐ倒産について東莞市の市長は「市場経済の一部であり、製造業全体の危機ではない」と強調したという。

珠江デルタなどの倒産ラッシュについて、第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏は、「報道は相次いでいるが、中国の場合、なかなか実情はわかりにくい。ただ、過剰生産などの影響が表面化しているとも考えられる」とみる。

中国では、旺盛な投資が経済成長の牽引(けんいん)役となってきたが、成長鈍化に伴って生産能力の過剰さが問題になっている。労働者の賃金上昇もあって、生産拠点の国外流出が加速しているのが実情だ。

経営が行き詰まっているのは珠江デルタの企業だけではない。11月中旬には、年産1000億トンの巨大鉄鋼メーカー、唐山松汀鋼鉄公司が、資金難を理由に生産停止を発表。四川省に本社を置く銑鉄メーカー、四川聖達集団は、社債の期限前償還に応じられない可能性があると明らかにした。

また、国有企業の雲南煤化工集団とグループ企業は、10月末時点で13億1000万元(約252億円)の延滞債務を抱えていると公表した。

米経済メディアのブルームバーグは「警戒すべき中国の5つの社債」と題した記事を報じた。それによると、化学メーカーの翔鷺石化、鶏肉加工会社の福建聖農発展、スズ精練世界最大手の雲南錫業集団、ソーセージメーカーの南京雨潤食品、そして国有企業傘下の石炭会社、中煤集団山西華●(=日の下に立)能源という有名企業5社が年末から来年前半にかけて迎える社債の返済期限で支払いができるのか警戒されているという。

従来は国有企業はもちろん、民間企業でもデフォルト寸前で支援が入ることが多かったが、ここにきてデフォルトが増えている。

前出の西濱氏は「国有企業改革の流れという面もある。金融システムにリスクを与えないような企業を選んで、自浄作用をアピールする狙いもうかがえる」と分析する。

中国国家統計局と中国物流購買連合会が公表した11月の景況感を示す製造業購買担当者指数(PMI)は49・6と前月から悪化、好不況の判断の節目である50を4カ月連続で割り込んだ。

中国経済は製造業主体からサービス主体に移行しつつあるため安定成長が続くとの見方もあるが、英調査会社マークイットによるサービス部門のPMIは51・2と10月から低下している。

「不動産市況が二極化していることが問題だ。深●(=土へんに川)や上海は戻してきているが、地方都市は下げ止まっておらず、サービス業全体の足かせとなっている。日本のバブル崩壊後の不良債権問題のように法律的な枠組みを作って処理する必要があるが、市場の混乱を防ぎつつ、政府の手ではなく市場メカニズムを使うという難しいかじ取りを迫られている」と西濱氏。習近平政権はこの難題を解決できるのか。夕刊フジより

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