中国が仕掛けている「歴史戦」は過去の問題ではない。現在の国際政治、安全保障の問題と捉えるべきだ。日本はポツダム体制崩壊後、サンフランシスコ体制の一員となった。同時に米国と同盟国になった。
中国はこの関係を壊そうとして、日本は過去に途轍(とてつ)もない暴虐なことをした「悪い国」であるにもかかわらず、反省しないどころか、正当化していると宣伝戦を展開している。その象徴が「南京大虐殺」であり、「慰安婦=性奴隷」説だ。
残念ながら米国人の大半は、日本の歴史に興味も知識もない。中国の宣伝戦を前に、「そうか、日本は悪い国か」という印象を強くする。要するに、中国が狙っているのは米世論の日本からの離反だ。そして、ポツダム体制への回帰を呼び掛けている。ポツダム体制において米中は同盟関係で、日本はそれと戦った「悪い国」だ。日米同盟を解消して米中の協調を狙っている。
そのことと現在のアジアの情勢を重ね合わせると、どういうことになるか。アジアにおいて米国は存在感を低下させ、日本は孤立する。もう中国の思いのままだ。歴史問題は過去の問題ではなく、今現在の国際政治、安全保障の問題だと言ったのはそういう意味だ。武器を用いない戦争なのだ。
日本の保守派の一部にも、先の大戦における米国の原爆や空襲、沖縄戦などへの反発から、日米同盟を解消して自主防衛を説く向きもある。戦時における米国の、日本人を人間とも思わないような仕打ちへの反発は分からないでもない。
しかし、自主防衛は現実的ではない。自主防衛には現在の防衛レベルを維持するだけでも防衛費が年に22兆3000億円~23兆8000億円掛かるという防衛大学校教授の試算もある(武田康裕、武藤功著『コストを試算!日米同盟解体-国を守るのに、いくらかかるか』)。
中国への抑止力を高めるべく、防衛力を増強すれば金額はさらに上回る。国民は負担に耐えられるだろうか。
さらに日本一国で中国と対峙するのは戦略上も得策ではない。そうであるなら日米同盟を維持し、今一層の強化を図らなければならない。日米の安全保障の一体化を進め、米国をアジアに引き込むことが必要だ。
同時に中国の歴史戦、宣伝戦に対抗すべく、政府と民間の協力により対外プロパガンダを展開することだ。米国流のPRの手法が有効だ。国際社会、特に米国世論に向けて日本の言い分を主張する宣伝戦を強力に展開すべきときだ。政府の対応が求められる。 夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2015年12月18日金曜日
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