2015年12月20日日曜日

中国のTPP参加はほぼ不可能

中国と韓国の自由貿易協定(FTA)は年内発効の予定で、日中韓FTAの交渉も行われている。日本側は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を拡大することも検討しているようだ。中国がTPPに参加することは可能なのか。また、近く発足するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は中国のもくろみ通りに機能するのだろうか。

結論を先にいえば、一応、先進国で資本主義の韓国のTPP参加は可能だが、中国はかなり難しいだろう。

TPPでは、FTAのような貿易だけでなく、投資の自由化も含まれ、協定の第9章に規定されているからだ。中国は社会主義であるので、生産手段の私有化を前提とする投資の自由化を基本的に受け入れられない。

また、協定第17章では国有企業の優遇撤廃が規定されているが、中国の場合、国有企業が経済の大きな割合を占めているので、これも障害になるだろう。外国企業が国有企業と対等な競争条件で事業を行うことができるように、国有企業に有利な条件での貸し付け等は制約されるからだ。

TPPに参加すれば、中国は国有企業民営化などの改革を迫られる可能性が高く、国家体制を揺るがすことにもつながりかねない。

そう考えると、国有企業が多く、国内総生産(GDP)の3分の1程度を占めているマレーシアやベトナムがよくTPPに参加したものだ。これらの国は今後、国有企業の民営化など大改革を行う決意なのだろう。

さらに、協定第18章で規定される知的財産についても、知的財産保護の弱い中国がTPPに参加するハードルは現状ではかなり高い。

中国自身もTPPの参加は難しいと判断しているはずで、社会主義の「中国ルール」のままで自由貿易圏を広げようとしている。そのための囲い込みの手段がAIIBという構図だ。

ところが、AIIBについて、ちょっと信じられないニュースが飛び込んできた。夕刊フジでも詳しく報じられたが、融資資金を調達する際に発行する債券の格付けが当面なしであることが判明したのだ。これは、国際金融機関としては異例のことである。筆者は少なくとも聞いたことがない。

日米が参加しないAIIBの格付けは、後ろ盾になっている中国国債の格付けと同じ程度で、資金調達コストは日米主導のアジア開発銀行(ADB)より劣ることが予想されていた。本コラムでもそう書いたが、“なんちゃって格付け”ぐらいは取得すると思っていた。それが格付けなしというのは驚きだ。最終的には、韓国が資金の出し手になるだろうが、これでは、AIIBの先行きに不安を抱かざるを得ない。

AIIBについては、今年3月ごろ、「バスに乗り遅れるな」と日本の参加を促す識者やマスコミが多かった。ところが、今になって判明したことは、そのバスの運転手は免許を持つドライバーではなく、素人ドライバーによる危険運転バスで、乗ったら乗車賃は正規の何倍も取られるという悪徳バスだと言われかねない実態だ。 夕刊フジより

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