テロは貧困が原因ではないとするデータ
経済的不平等に関するベストセラー『21世紀の資本』の著者、トマ・ピケティ・パリ経済学校教授が、「テロ対策 治安一辺倒では不十分だ」というコラムを11月22日付ルモンド紙に寄稿し、邦訳が12月1日付朝日新聞朝刊に掲載されている。ピケティ氏は、中東は石油君主国の一握りの支配層に富が集中する、世界一格差の大きな地域だと指摘し、「イスラム国」などのテロリズムは「不平等が蔓延する中東の火薬庫で育まれたのだが、その責任は私たち(先進国)に大いにある」と論じている。
不平等と貧困が生む「屈辱と不公正」がテロリズムの主な原因だとする説は、先進国で広く信じられている。テロリズム貧困原因説は、「忌まわしいことをする人は、よほど人生に絶望しているに違いない」という、先進国国民の直感と一致しているからだ。
しかし、ここにピケティ教授の主張を一蹴する研究結果がある。実証的には、貧困と経済的不平等がテロリズムの主な原因だとする説は否定されているというのである。
2001年の米同時多発テロを受けて、アラン・クルーガー・プリンストン大学教授(オバマ政権の財務次官補・大統領経済諮問委員長)がテロリストのデータを分析したところ、次のように、高学歴者が多く、貧困層出身者は少なかった。
2)レバノンの政治・軍事組織ヒズボラの戦闘員は、1980‐90年代には支持母体であるシーア派住民の平均よりも学歴が高く、裕福な家庭の出身だった。
3)イスラエルとヨルダン川西岸地区で1987‐2002年に自爆攻撃を行ったパレスチナ人の貧困率は一般住民の半分で、学歴はかなり高かった。
4)1997‐2001年のテロ148件について、テロリストの出身国を分析し、市民的自由の程度が同じ国々を比べると、1人当たりGDPとテロリストの割合の間には関係がない。
5)2003‐07年にイラクで米軍に拘束された外国人戦闘員311人は、1人当たりGDPの比較的高い国の出身者が多かった。
パリ同時多発テロにしても、実行犯のうち2人はブリュッセルのバー店主、指揮官はブリュッセルの衣料品店経営者の息子で、中産階級出身だ。その点で、「テロリストの大半は、人生に絶望するほど貧しいのではなく、死をいとわないほど熱烈な信念のある人」だというクルーガー氏の結論にあてはまる。
ピケティ氏ら貧困原因論者は、テロリスト志望者の流れ、いわばテロリズム労働市場の供給側を抑制することを主張している。
一方、クルーガー氏は、テロリストの志望動機はさまざまであり、解消することは不可能だとして、「テロ組織の資金力と技術力を弱め、政府に対する平和的な異議申し立ての手段を保護・推進することによって、暴力で不満を解決しようとする側の需要を抑制する」ことを提言している。
したがって、先進国・石油輸入国は、経済的不平等を中東にもたらしていることよりも、石油君主国とその援助を受ける独裁政権による、市民的自由の抑圧を可能にし、その面から過激派を助長していることに対する責任を自覚しなければならない、と言えよう。MAG2NEWSより
意外といえば意外である。空爆により身内が犠牲になりその為にテロリストになっていくと思っていた。独裁政権による自由の抑圧がテロリストを生み出している構図である。
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