2015年12月25日金曜日

中国が格安の鉄鋼製品を世界にバラマキ

世界の鉄鋼メーカーが、中国発の価格暴落に苦しんでいる。景気減速で需要に急ブレーキがかかる中、中国からあふれ出た安価な鉄鋼製品が東南アジアなどへ流入しているためだ。中国の粗鋼生産は今や世界の半分を占める一方、過剰設備の削減は遅々として進んでいない。悪影響は日本メーカーにも及んでおり、「中国リスク」への対処が全世界の共通課題となっている。

「夏以降、中国経済の減速が非常に大きく利き始め、輸出に影響した。価格がどうなるのか先が読めない」

12月16日に会見した日本鉄鋼連盟の柿木厚司会長(JFEスチール社長)は今年1年をそう振り返り、中国の景気や鉄鋼業界の動向を読み違えたことを認めた。

中国の粗鋼生産量は、右方上がりで増え続け、2014年には前年比0.9増の8億2270トンと世界の半分、2位の日本(1億1070トン)の7倍以上に達した。しかし、今年は11月までで前年同期比2.2%減の7億3838万トンと低調だ。

中国国内の需要に急ブレーキがかかる中、中国鉄鋼工業協会に加盟する企業の約4割が赤字に陥っているとみられる。このため中国勢は生き残りに向けなりふり構わぬ輸出攻勢に出ており、その量は11月までで1億トンを超える。

この影響で、海外市況は大幅に悪化。代表的な鉄鋼製品で、建材などに使うホットコイルの海外価格は、4月に1トンあたり340~350ドルだったのが、足元では250~270ドルと、この半年だけで100ドル近く下げている。

中国製品は、東南アジアやインドをはじめ世界中に流れ込んでいる。“投げ売り”に直面した現地メーカーの経営は苦しく、10月にはタイ鉄鋼大手のサハウィリア・スチール・インダストリーズが破綻した。

中国製品は高品質の日本製品とはそれほど競合しないため、日本メーカーの打撃は比較的小さく、輸入量もわずかだ。それでも対岸の火事とはいかず、輸出採算が悪化しているうえ、中国製品に押し出された韓国や台湾の製品が日本国内へ向かい始めている。この影響もあって、新日鉄住金、JFEホールディングス、神戸製鋼所の大手3社は、9月中間決算発表に合わせて2016年3月期の連結業績見通しを下方修正せざるを得なくなった。

さらに中国製品の他国への流入は、激しさを増す通商摩擦の火種にもなっている。いかに成長鈍化が顕著とはいえ、中国のGDP(国内総生産)伸び率は6%以上あり、いずれ粗鋼生産量はプラスに戻るとみられるが、それでも需給ギャップの早期解消は望めそうにない。

中国には町工場レベルを含めると500社の鉄鋼メーカーが存在するとされ、それぞれが生産能力を増強してきた。年産3000万トン以上のメーカーも6社あるものの、上位メーカーへのシェア集中は一向に進まず、乱立状態が続く。

中国政府も再編の必要性は以前から認識してきた。7月には、今年で終了する10カ年の「鉄鋼産業発展政策」に代わる「調整計画」を公布し、稼働率向上や上位メーカーのシェア拡大を改めて打ち出した。だが、雇用や税収を維持したい地方政府は再編に消極的で、低金利融資などの形で経営を支え続けている上、「地方政府幹部の出世に影響するため簡単につぶせない」(業界関係者)という、この国特有の事情も抱える。

極限まで値下がりしたことで「(年産)2500トンクラスの中型高炉も止まり始めている」(新日鉄住金の樋口真哉副社長)が、民営メーカーの自然淘汰(とうた)が中心で、官主導の再編は遅れている。それどころか、宝山鋼鉄が9月に広東省で1000万トン規模の大型製鉄所を稼働させるなど、大手の能力増強は続く。

中国の生産余剰は生産量で1億トン、生産能力ベースでは3.5億トンに達するとされ、完全解消には10年かかるというのが業界の一致した見方だ。

「過剰生産の早急な対策が急務だ」

11月初旬、産業界を代表して訪中した日中経済協会の宗岡正二会長(新日鉄住金会長)が、中国の李克強首相に“直談判”したのに対し、李首相は「過剰生産能力を消化している最中。劣後した生産能力を期限をつけて淘汰する」と応じた。メンツにこだわる中国の首脳としては珍しく、率直に問題を認めた背景について、日本メーカー幹部は「中国国内向けに本気度を示す意味もあったのでは」と推測する。

中国はセメントや石油化学といった他の素材でも同様の問題を抱える。政治も絡んだ無秩序な構造にメスが入らない限り、世界中の関係者が気をもむ場面が続きそうだ。 産経ニュースより

この国は、自国の為なら他の国の事など頭にない国である。過剰生産ならば生産を抑制する事さえしない。鉄鋼を世界に投げ売りをして、倒産する鉄鋼メーカーもで始めている。

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