ジェットコースターの急坂を迎えた日本
木本:日本の人口はどのように変化するのか。今日は、人口問題について教えていただきます。
まず、「日本人口の歴史的推移」という面白い形をしたグラフが、いま私の目の前にあります。
森田:これは長期的な日本の人口推移をグラフにしたものです。西暦600年から2200年までの人口の推移を見ると、平安時代が500万人強、関ヶ原の戦いの時で現在の10分の1の1200万人、江戸時代に3000万人を超えて、明治以降、急激に増えました。2010年まではドカンと上がったわけです。ところが、そこが頂点で、これからジェットコースターのフリーフォールのように急減していきます。
木本:徐々にじゃなくて、急激に下がる原因は何でしょう。
森田:これは、少子化につきます。
木本:基本の部分を聞きますけど、そもそも、どうして少子化になっているんでしょうか。
森田:結婚する人が少ない。結婚しても子どもを作らないし、作っても1人か2人しか作らない。経済成長が鈍って多くの人が正社員になれなくなっているので、子どもを産み育てる経済的余力がない。産んで育てようにも、女性が働きに出るための保育所が足りない、という流れです。また、女性が高学歴化して、かつては多くの人が20代で第一子を産んでいたのが、今では過半数の人が30歳を過ぎるようになったので、4人も5人も産めません。そういういろいろな理由が重なっています。
人口が減る要因は以前からあった
木本:ここを解決すれば人口が増える、という答えのパターンが見つからない。
森田:日本だけではありません。多くの国がいろいろな政策を打ち出しているのですが、どの国も少子化対策には苦労しています。
木本:かつてないものを経験しているんですね。
森田:それを示しているのが2つめのグラフです。「日本の人口推移(年齢3区分)」を見てください。こういうカーブになるんです。
木本:先生、すみません。2つめのグラフ以降は、ヤフーニュースなど一部のサイトでは見ることができないので、わかりやすく説明してください。
森田:過去130年を振り返ると、1955年が年少人口がいちばん多かった時代です。そのあと団塊ジュニアの時代にもう一度、山になっている時期があります。その後、3番目の山ができないままずっと減ってきています。
「生産年齢人口」、つまり生産活動の中核を担う15歳以上65歳未満の人口をみると、1995年をピークに減っている。少子化に気がつかなかったのは、高齢者がどんどん長生きし、総人口は、国勢調査では2010年(総務省の「推計人口」と呼ばれている公的な年次別人口では2008年)まで増え続けていたために隠されていたのです。ただ、高齢者も無限に生きられませんから、人口が急速に減り始める。しかも、子どもの人口は減っているから、全体の人口はさらに減っていくわけです。
木本:なるほど。人口構成をみれば、問題は以前からあったわけで、人口急減は予測できていた、ということですね。
森田:次のグラフ、「人口ピラミッドの変化」を見てください。昔は子どもが産まれても、栄養状態や医療の未発達で毎年多くの人が亡くなった。そして、65歳まで生きる人がほんの少ししかいなかった。
木本:1960年がそういう年齢構成ですね。本当にピラミッドのような形をしています。
森田:ところが医療が発達して、皆が長生きするようになった。2010年の65歳前後の人口は非常にボリュームがあります。2030年の予想を見ると、少子化でだんだん下の年齢層がすぼんでくるのがわかるでしょう。
木本:焼き物作りのためのロクロみたいな形に変化していきます。
森田:だんだん横幅(人口)が狭くなって、ピラミッド型から砲弾型になって2060年には壺型になるわけです。
木本:器に例えると、だんだん不安定な形になってきている。明らかに後期老齢人口の赤い部分が膨らんでいますもんね。
2060年にいちばん多いのは86歳
森田:推計ですが、2060年でいちばん多い年齢層は86歳なんです。
木本:ええ⁉ 86歳のお年寄りがいちばん多くなるんですか。
森田:86歳の女性が70万人強になる推計です。
木本:やっぱり女性のほうが長生きする。
森田:男性よりは長生きなのは間違いない。2060年の推計だと、産まれてくる女の赤ちゃんは多めに見積もっても33万人、真ん中で23万人。少ない場合には16万人です。70万人以上いる86歳に対して、生まれてくる赤ちゃんが20万人強だと……。
木本:赤ちゃんは3分の1以下にすぎない。
森田:赤ちゃんがどんどん減っていくわけです。生まれた時のボリュームからして、移民など外から人が入ってこない限り、将来膨らむことはあり得ません。その後、年を重ねるほど下はもっと細くなる。まったく数学的な計算ですが、西暦3000〜3500年には最後の日本人がいなくなるのです。
木本:ええ!そんな計算になるんですか。
森田:1人の女性が一生の間に生む子ども数の平均値が合計特殊出生率ですが、2.07だと親世代と同じ数の子どもが産まれて人口がずっと維持できます。今は1.45程度まで落ちています。そうである限り親の世代より人口は増えない。少子化対策で増やそうといっていますが、それは簡単ではない。次のグラフ「女性20~39歳人口の減少」を見てください。
いちばん外の枠が2010年でその世代の女性は1584万人います。でも2060年には、736万人で、2010年の46.5%と半分以下になるのです。
木本:たしか20~30代って、生物学的には女性がいちばん子どもを産みやすい時期ですよね。
森田:おっしゃるとおり20~30代の女性から約95%の赤ちゃんが産まれますが、過去の少子化の影響でその世代の女性の数が減っている。したがって、1人の女性が2.07人産んだとしても子どもの数は減っていきます。それが繰り返されるので長期にわたって人口は減るということになる。少子化対策などが功を奏して、急に生まれるようになったとしても、底を打つのが2060~2070年くらいと計算されています。
都市部では高齢者の人口急増が起こる
木本:でも、今を生きる僕らにとっては、現在のバランスの悪さにも問題がありますよね。
森田:そこがまさに高齢者の問題。グラフで頭でっかちなピラミッドを見せましたが、若い世代は減っても、高齢者の世代は固まりとして残ります。それが社会保障の課題になる。では、次のグラフ「高齢者の都道府県分布の変化」を見てください。
木本:グラフがたくさんありますね。どう見ればいいんでしょうか。
森田:都道府県ごとに65歳以上の人がどれだけいるかですが、特に首都圏・都市部で爆発的に高齢者が増えます。これをどうするかが21世紀前半のわが国の大きな課題といえます。
木本:なるほど。高齢者に限ると人口は急増するわけですね。とくに大都会は高齢者が急増しますね。
森田:まだ見てほしいグラフがあります。次のグラフ「従属人口指数の年次推移」を見てください。従属人口指数とは年少人口と老年人口を足したものを生産年齢人口(15歳~65歳)で割った数字です。支える世代と支えられる世代の比率がわかります。戦前は70%ありました。つまり働く人100人に対して70人くらいの子どもと高齢者がいた。
木本:働ける大人が、お年寄りと子どもを結構な負担で支えていたと。
森田:一方戦後、団塊の世代と団塊ジュニアが大人になった時は、生産人口がすごく増えましたが、子どもが減って、お年寄りも少なかった。生産人口に属する人たちが社会の富を作りますが、その富を「次の世代と高齢者を支えるためのおカネ」にあまり使わなくて済んだ。そこで残った部分を新たに投資できて、高い経済成長を生み出した。それが人口の観点から見た高度経済成長の説明。人口ボーナスという概念です。
木本:なるほど。では人口オーナスとはなんですか。
森田:高齢者が増えてくると社会保障で支えなければならない。すると生産人口が生み出した富のうちのかなりの部分が社会保障に振り向けられる。いわゆる投資に向けられるおカネが少なくなる。それが人口オーナス。オーナスとは負担という意味です。
木本:高度経済成長をしたら、次は成熟というのが人口で説明できるわけですね。
森田:はい。そこで成長が止まってしまう。次のグラフ「世界の従属人口指数」はアジアの国の比較を示したものですが、日本は1970年から1990年くらいまでがボーナスの時期でした。韓国は現在ボーナスの後期に相当します。
木本:日本と10年ずれている感じですね。
どの国もボーナスを経験し、その後は下がる
森田:中国、インドネシア、インドもそうですが、それぞれ歴史の中で一度だけ人口ボーナスを経験するといわれています。でもその後は、どの国も角度は違ってもカーブを描いて下がってくるでしょう。
木本:ジェットコースターの登りから下りに転換するときのお腹がフワッとするような感覚ですかね。
森田:その例えはいいかもしれません。中国は今ボーナスのいちばん低いところにあるかもしれません。中国に経済成長が起こって、それがだんだん低下していくのは、他の要因もありますが、人口的にはボーナスの概念で説明できる。
木本:確かに爆買いの時期と一緒。韓国もボーナスが終わる。少子化対策として、移民をどうするかは大きな問題ですよね。たとえば、ドイツは積極的に移民を受け入れてますが、どんな思惑があるのでしょうか。
森田:去年、シリアなどから急増した難民を受け入れたのには思惑があると思います。ドイツも人口が減っていて、生産維持のためには労働者が必要だということ。日本にも移民をと言いますが、それほど簡単ではない。
次のグラフ「出生数と死亡数の推移」を見てください。2010年の人口ピークを過ぎてから1年で28万人減っています。産まれた赤ちゃんが100万人で、亡くなったのが130万人弱。こらから毎年30万人減っていく。2039年をピークに毎年100万人以上減ります。毎年100万人以上を海外から受け入れるとはどういうことなのか。でも、そこまでしないと人口が維持できないのです。
木本:それだけの人口減少を補おうと、ドンと受け入れたらバラエティの世界も変わるかもしれない。いま、バラエティ番組では海外から来たタレントが大人気です。ひな壇を目指してますます熾烈な戦いが繰り広げられるような気がします。僕も危なくなってしまう。
簡単には移民を増やせない
森田:それもありますし、その人たちはどこから来るんですか、という問題もある。日本に貢献してくれる学歴の高い人に来てくださいと言っていますが、それは世界中が求める人材なわけです。どなたでもよくて、低賃金で労働してもらえる方を受け入れたとします。仮に彼らを日本人にして、国民として同等に扱うならば将来の社会保障にもかかわってきます。
木本:いろんな仕事をしても選挙権はなかったりして、制度を整備するのも必要ですし、われわれも変わっていかないといけませんね。
森田:人権や憲法の問題からも考えなければいけません。労働力とだけとらえて、非人道的な政策をとる国や、要らなくなったら帰ってもらう制度の国もある。今のままでは日本で移民を受け入れるのは難しい。暗い話ですが、これもあれもというハードルが高いです。
木本:地球全体で人口は減っているんですよね。
森田:地球全体で見れば人口ボーナスが終わって、全世界で人口が減るところまでいっていませんが、インドでも少子高齢化の傾向が出てきています。その一方でアフリカ諸国の人口は増えている。かつては先進国の人口比率が高かったのですが、南アジア、アフリカがかなりの人口を占めるようになる。人数は力ですから、国際政治の情勢も変わっていくことになるでしょう。
木本:なんとも暗い気持ちになりますね。後編の日本人は「人口急減の恐怖」を直視するべきだでは、少子高齢化社会のトップランナーである日本に何が起こるのかをお訊ねします。よろしくお願いします。 東洋経済ONLINEより
森田:これは、少子化につきます。
木本:基本の部分を聞きますけど、そもそも、どうして少子化になっているんでしょうか。
森田:結婚する人が少ない。結婚しても子どもを作らないし、作っても1人か2人しか作らない。経済成長が鈍って多くの人が正社員になれなくなっているので、子どもを産み育てる経済的余力がない。産んで育てようにも、女性が働きに出るための保育所が足りない、という流れです。また、女性が高学歴化して、かつては多くの人が20代で第一子を産んでいたのが、今では過半数の人が30歳を過ぎるようになったので、4人も5人も産めません。そういういろいろな理由が重なっています。
人口が減る要因は以前からあった
木本:ここを解決すれば人口が増える、という答えのパターンが見つからない。
森田:日本だけではありません。多くの国がいろいろな政策を打ち出しているのですが、どの国も少子化対策には苦労しています。
木本:かつてないものを経験しているんですね。
森田:それを示しているのが2つめのグラフです。「日本の人口推移(年齢3区分)」を見てください。こういうカーブになるんです。
木本:先生、すみません。2つめのグラフ以降は、ヤフーニュースなど一部のサイトでは見ることができないので、わかりやすく説明してください。
森田:過去130年を振り返ると、1955年が年少人口がいちばん多かった時代です。そのあと団塊ジュニアの時代にもう一度、山になっている時期があります。その後、3番目の山ができないままずっと減ってきています。
「生産年齢人口」、つまり生産活動の中核を担う15歳以上65歳未満の人口をみると、1995年をピークに減っている。少子化に気がつかなかったのは、高齢者がどんどん長生きし、総人口は、国勢調査では2010年(総務省の「推計人口」と呼ばれている公的な年次別人口では2008年)まで増え続けていたために隠されていたのです。ただ、高齢者も無限に生きられませんから、人口が急速に減り始める。しかも、子どもの人口は減っているから、全体の人口はさらに減っていくわけです。
木本:なるほど。人口構成をみれば、問題は以前からあったわけで、人口急減は予測できていた、ということですね。
森田:次のグラフ、「人口ピラミッドの変化」を見てください。昔は子どもが産まれても、栄養状態や医療の未発達で毎年多くの人が亡くなった。そして、65歳まで生きる人がほんの少ししかいなかった。
木本:1960年がそういう年齢構成ですね。本当にピラミッドのような形をしています。
森田:ところが医療が発達して、皆が長生きするようになった。2010年の65歳前後の人口は非常にボリュームがあります。2030年の予想を見ると、少子化でだんだん下の年齢層がすぼんでくるのがわかるでしょう。
木本:焼き物作りのためのロクロみたいな形に変化していきます。
森田:だんだん横幅(人口)が狭くなって、ピラミッド型から砲弾型になって2060年には壺型になるわけです。
木本:器に例えると、だんだん不安定な形になってきている。明らかに後期老齢人口の赤い部分が膨らんでいますもんね。
2060年にいちばん多いのは86歳
森田:推計ですが、2060年でいちばん多い年齢層は86歳なんです。
木本:ええ⁉ 86歳のお年寄りがいちばん多くなるんですか。
森田:86歳の女性が70万人強になる推計です。
木本:やっぱり女性のほうが長生きする。
森田:男性よりは長生きなのは間違いない。2060年の推計だと、産まれてくる女の赤ちゃんは多めに見積もっても33万人、真ん中で23万人。少ない場合には16万人です。70万人以上いる86歳に対して、生まれてくる赤ちゃんが20万人強だと……。
木本:赤ちゃんは3分の1以下にすぎない。
森田:赤ちゃんがどんどん減っていくわけです。生まれた時のボリュームからして、移民など外から人が入ってこない限り、将来膨らむことはあり得ません。その後、年を重ねるほど下はもっと細くなる。まったく数学的な計算ですが、西暦3000〜3500年には最後の日本人がいなくなるのです。
木本:ええ!そんな計算になるんですか。
森田:1人の女性が一生の間に生む子ども数の平均値が合計特殊出生率ですが、2.07だと親世代と同じ数の子どもが産まれて人口がずっと維持できます。今は1.45程度まで落ちています。そうである限り親の世代より人口は増えない。少子化対策で増やそうといっていますが、それは簡単ではない。次のグラフ「女性20~39歳人口の減少」を見てください。
いちばん外の枠が2010年でその世代の女性は1584万人います。でも2060年には、736万人で、2010年の46.5%と半分以下になるのです。
木本:たしか20~30代って、生物学的には女性がいちばん子どもを産みやすい時期ですよね。
森田:おっしゃるとおり20~30代の女性から約95%の赤ちゃんが産まれますが、過去の少子化の影響でその世代の女性の数が減っている。したがって、1人の女性が2.07人産んだとしても子どもの数は減っていきます。それが繰り返されるので長期にわたって人口は減るということになる。少子化対策などが功を奏して、急に生まれるようになったとしても、底を打つのが2060~2070年くらいと計算されています。
都市部では高齢者の人口急増が起こる
木本:でも、今を生きる僕らにとっては、現在のバランスの悪さにも問題がありますよね。
森田:そこがまさに高齢者の問題。グラフで頭でっかちなピラミッドを見せましたが、若い世代は減っても、高齢者の世代は固まりとして残ります。それが社会保障の課題になる。では、次のグラフ「高齢者の都道府県分布の変化」を見てください。
木本:グラフがたくさんありますね。どう見ればいいんでしょうか。
森田:都道府県ごとに65歳以上の人がどれだけいるかですが、特に首都圏・都市部で爆発的に高齢者が増えます。これをどうするかが21世紀前半のわが国の大きな課題といえます。
木本:なるほど。高齢者に限ると人口は急増するわけですね。とくに大都会は高齢者が急増しますね。
森田:まだ見てほしいグラフがあります。次のグラフ「従属人口指数の年次推移」を見てください。従属人口指数とは年少人口と老年人口を足したものを生産年齢人口(15歳~65歳)で割った数字です。支える世代と支えられる世代の比率がわかります。戦前は70%ありました。つまり働く人100人に対して70人くらいの子どもと高齢者がいた。
「人口ボーナス」が高度経済成長の要因
木本:働ける大人が、お年寄りと子どもを結構な負担で支えていたと。
森田:一方戦後、団塊の世代と団塊ジュニアが大人になった時は、生産人口がすごく増えましたが、子どもが減って、お年寄りも少なかった。生産人口に属する人たちが社会の富を作りますが、その富を「次の世代と高齢者を支えるためのおカネ」にあまり使わなくて済んだ。そこで残った部分を新たに投資できて、高い経済成長を生み出した。それが人口の観点から見た高度経済成長の説明。人口ボーナスという概念です。
木本:なるほど。では人口オーナスとはなんですか。
森田:高齢者が増えてくると社会保障で支えなければならない。すると生産人口が生み出した富のうちのかなりの部分が社会保障に振り向けられる。いわゆる投資に向けられるおカネが少なくなる。それが人口オーナス。オーナスとは負担という意味です。
木本:高度経済成長をしたら、次は成熟というのが人口で説明できるわけですね。
森田:はい。そこで成長が止まってしまう。次のグラフ「世界の従属人口指数」はアジアの国の比較を示したものですが、日本は1970年から1990年くらいまでがボーナスの時期でした。韓国は現在ボーナスの後期に相当します。
木本:日本と10年ずれている感じですね。
どの国もボーナスを経験し、その後は下がる
森田:中国、インドネシア、インドもそうですが、それぞれ歴史の中で一度だけ人口ボーナスを経験するといわれています。でもその後は、どの国も角度は違ってもカーブを描いて下がってくるでしょう。
木本:ジェットコースターの登りから下りに転換するときのお腹がフワッとするような感覚ですかね。
森田:その例えはいいかもしれません。中国は今ボーナスのいちばん低いところにあるかもしれません。中国に経済成長が起こって、それがだんだん低下していくのは、他の要因もありますが、人口的にはボーナスの概念で説明できる。
木本:確かに爆買いの時期と一緒。韓国もボーナスが終わる。少子化対策として、移民をどうするかは大きな問題ですよね。たとえば、ドイツは積極的に移民を受け入れてますが、どんな思惑があるのでしょうか。
森田:去年、シリアなどから急増した難民を受け入れたのには思惑があると思います。ドイツも人口が減っていて、生産維持のためには労働者が必要だということ。日本にも移民をと言いますが、それほど簡単ではない。
次のグラフ「出生数と死亡数の推移」を見てください。2010年の人口ピークを過ぎてから1年で28万人減っています。産まれた赤ちゃんが100万人で、亡くなったのが130万人弱。こらから毎年30万人減っていく。2039年をピークに毎年100万人以上減ります。毎年100万人以上を海外から受け入れるとはどういうことなのか。でも、そこまでしないと人口が維持できないのです。
木本:それだけの人口減少を補おうと、ドンと受け入れたらバラエティの世界も変わるかもしれない。いま、バラエティ番組では海外から来たタレントが大人気です。ひな壇を目指してますます熾烈な戦いが繰り広げられるような気がします。僕も危なくなってしまう。
簡単には移民を増やせない
森田:それもありますし、その人たちはどこから来るんですか、という問題もある。日本に貢献してくれる学歴の高い人に来てくださいと言っていますが、それは世界中が求める人材なわけです。どなたでもよくて、低賃金で労働してもらえる方を受け入れたとします。仮に彼らを日本人にして、国民として同等に扱うならば将来の社会保障にもかかわってきます。
木本:いろんな仕事をしても選挙権はなかったりして、制度を整備するのも必要ですし、われわれも変わっていかないといけませんね。
森田:人権や憲法の問題からも考えなければいけません。労働力とだけとらえて、非人道的な政策をとる国や、要らなくなったら帰ってもらう制度の国もある。今のままでは日本で移民を受け入れるのは難しい。暗い話ですが、これもあれもというハードルが高いです。
木本:地球全体で人口は減っているんですよね。
森田:地球全体で見れば人口ボーナスが終わって、全世界で人口が減るところまでいっていませんが、インドでも少子高齢化の傾向が出てきています。その一方でアフリカ諸国の人口は増えている。かつては先進国の人口比率が高かったのですが、南アジア、アフリカがかなりの人口を占めるようになる。人数は力ですから、国際政治の情勢も変わっていくことになるでしょう。
木本:なんとも暗い気持ちになりますね。後編の日本人は「人口急減の恐怖」を直視するべきだでは、少子高齢化社会のトップランナーである日本に何が起こるのかをお訊ねします。よろしくお願いします。 東洋経済ONLINEより
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