気温の上昇と、米や小麦といった穀物の需要増加によって、世界の地下水は今後数十年のうちに激減する可能性があるとする研究結果が発表された。(参考記事:「地下水が枯れる日」)
我々の食料のほぼ半分が、地球上の温暖で乾燥した地域で生産されている。そうした場所では、穀物に水を供給するために地下水の過剰なくみ上げが行われており、帯水層と呼ばれる地下の貯水層の水量が急速に減少している。最新の研究によると、今世紀半ばには、インド、パキスタン、ヨーロッパ南部、米国西部の広い範囲で帯水層が枯渇する可能性があり、そうなれば食料供給が打撃を受け、また18億人もの人々がこの貴重な水源を利用できなくなる。
米国コロラド鉱山大学の水文学者インゲ・デ・グラーフ氏は、具体的にいつ、どこの帯水層の水が限界に達するのかを予測するため、1960年から2100年にかけての地域ごとの地下水の動向をシミュレートするモデルを開発した。
その結果、カリフォルニア州の農業の中心地であるセントラルバレー、トゥーレアリ盆地、サンホアキンバレー南部では、早くも2030年代には利用可能な地下水がなくなることがわかった。インドの上ガンジス盆地やスペイン南部、イタリアでは、2040年から2060年の間に地下水が底をつく。さらには米カンザス州、オクラホマ州、テキサス州、ニューメキシコ州の地下に位置するオガララ帯水層南部は、2050年から2070年の間に枯渇する可能性がある。(参考記事:「地下水の枯渇、次世代に水を残せるか」)
「いちばん早く危機に見舞われる地域は、水の需要が高く、地表水が不足している場所です」と、12月にサンフランシスコで開催されたアメリカ地球物理学連合の大会で研究結果を発表したグラーフ氏は語る。
過去50年で地下水頼みの農地が急増
こうした乾燥地域では、過去50年間で急速に農業が発展した。降水量が少なく、川や湖もほとんどないため、地下からくみ上げる水だけが頼りだ。グラーフ氏によると、1960年以降、世界各地での過剰な水のくみ上げにより、すでにミシガン湖ひとつ分ほどの水が使われており、今後は気候変動と人口増加により、地下水の使用にさらに拍車がかかるものとみられる。グラーフ氏は、地下水位が約90メートルよりも深くなり、くみ上げ費用が多くの利用者にとってあまりにも高額になってしまった時点で、その帯水層は枯渇したものとみなしている。
論文の共著者でオランダ、ユトレヒト大学の水文学者、マルク・ビエルケンス氏は、地下水の減少により、世界の食料供給は打撃を受けるだろうと述べている。現在、世界の食料生産の40%は地下水を使った灌漑に頼っている。同氏の試算によると、もし利用できる地下水の量が半減すれば、農業生産高はおよそ6%減少するという。つまり、それだけの割合が、持続不可能な地下水利用に完全に依存しているということだ。
「人類全体が飢餓状態に陥るわけではありませんが、食料価格には大きな影響があるでしょう」とビエルケンス氏は言う。
地下水の枯渇によって影響を受けるのは食料だけではない。湿地帯の環境破壊や地盤沈下も引き起こされる。(参考記事:「カリフォルニアで地盤沈下が深刻化」)
2015年に行われた衛星観測による研究では、世界の主要な帯水層の大半(37カ所のうち21カ所)で、水が溜まるよりも速いペースで減少していることが明らかになった。「数多くの研究が、地下水の過剰な利用と、水や食料の安全がとてつもないリスクにさらされていることを指摘しています」と、NASAジェット推進研究所の水文学者ジェイ・ファミグリエッティ氏は述べている。「問題は、地下水があとどのくらい残っているのかがわからないことです」
持続不可能な灌漑は20%
グラーフ氏の研究は、帯水層の抱えるそうした問題に取り組もうとするものだ。通常の状態では、砂や透水性の高い岩の層は地中に染み込む雨、雪解け水、川の水などによって水が溜まり、涵養される。ところが猛烈なペースで水をくみ上げている現在のような状況では、特に降水量が少ない地域においては、水が減っていく量に涵養が追いつかない。(参考記事:「干ばつが招く地下水の枯渇」)
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者、キャロル・ダーリン氏によると、農業灌漑の少なくとも20%が持続不可能な状態にあり、その半数近くが小麦や米といった商業作物に使われている。そして、こうした過度の地下水利用の3分の2は、パキスタン、インド、米国によるものだ。
これらの研究からは、現在のような持続不可能な方法により、地球の帯水層の未来がどれほど脅かされているかがわかると、カリフォルニア大学デービス校でセントラルバレーの研究を行う水文学者、トーマス・ハーター氏は言う(同氏はいずれのプロジェクトにも参加していない)。
しかし、持続可能な地下水の利用法についての専門家でもあるハーター氏は、セントラルバレーの地下水が2030年までに枯渇することはないと考えている。同地域の帯水層では、過去数十年間にわたって過剰なくみ上げが行われてきた上、近年カリフォルニア州全土を襲った干ばつにより、事態はさらに悪化している。それでも、この貴重な水源を守る望みはまだ残されていると同氏は指摘する。カリフォルニア州は数年前、地下水規制法を成立させ、地域ごとの管理機関に持続可能な使用計画を立てることを義務付け、無秩序なくみ上げを制限する権限を与えた。(参考記事:「カリフォルニア初の地下水規制法が成立」)
「それでも、これが深刻な危機であるという事実は変わりません」とハーター氏は言う。「地下水はいわば、あらゆる人が使用するブラックボックスのようなものです。地域的な資源だという印象があるかもしれませんが、その影響は地球全体に及びます」 ナショジオより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2016年12月31日土曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
日産ケリー前代表取締役の保釈決定 保釈金7000万円 東京地裁
金融商品取引法違反の罪で起訴された日産自動車のグレッグ・ケリー前代表取締役について、東京地方裁判所は保釈を認める決定をしました。検察はこれを不服として準抗告するとみられますが、裁判所が退ければ、ケリー前代表取締役は早ければ25日にもおよそ1か月ぶりに保釈される見通しです。一方、...
-
インターネット 上には「掛けてはいけない電話番号」と銘打たれた、詳細不明の電話番号のリストが多数存在しています。それら電話番号と共に書かれている文面を見るに「掛けると死ぬ」「呪われる」「ドッペルゲンガー」「 宇宙人 」「貞子の電話番号」「花子さんの電話番号」などなど、いかにも恐ろ...
-
ホラー 映画『ファイナル・デッドコースター』で描かれるような遊園地での悲惨な死亡事故は、残念ながら現実でも起きてしまうことがある。今年8月には岡山県の遊園地で、走行中のジェットコースターの安全バーが外れ、乗客1人が負傷する事故が発生した。また、同日には大分県の遊園地でも、レールを...
-
人を殺した人と会う。 死刑囚 の実像に迫るシリーズ【3】 「“あの時”に 時間 を戻せたらいいのに、ということはいつも思います。ただ、もしも“あの時”に戻れるとしても、今の自分で戻りたいです。自分まで当時の自分に戻ったら、また同じことを繰り返してしまいそうだからです」 昨...
0 件のコメント:
コメントを投稿