＜日露＞共同経済活動 交渉枠組みで最終調整

日露両政府は、北方領土での共同経済活動を具体化するための政府間交渉の開始に向けて最終調整に入った。１５、１６両日の首脳会談で交渉枠組みの設置について合意を目指す。日本政府は、北方領土の主権を巡って両国が一定程度歩み寄ることができれば、水産業や観光業などでの協力に道を開く考えだ。日本の経済関係者が共同経済活動に備えて視察できるようにするため、元島民らに限定している査証（ビザ）なしでの北方領土訪問の対象を拡大することも、合意に向けて調整を進めている。

共同経済活動を巡っては、１９９８年に当時の小渕恵三首相とエリツィン大統領の合意を受け、実施方法を検討する政府間委員会を設置。両政府は２０００年にウニ、貝類の栽培漁業に取り組む方針で一致した。しかし、協議は同年に中断し、００年代半ばまで首脳会談で検討されたことがあったが、進展しなかった。

双方は昨秋から水面下で協議してきたが、首脳の会談を重ね、本格交渉ができる状況が整ってきたと判断した。日本側はロシアの主権を前提としない活動が必要と考えており、双方の法的立場が損なわれない特例的対応について交渉する。経済特区設置や合弁企業設立を検討するとみられる。

ロシアは共同経済活動を通じ、産業に乏しい北方領土の経済発展を促す狙いがある。安倍政権は日本の活動実態や人的往来を広げることで北方領土問題での日本の立場を国際社会にアピールできる上、両国の関係強化で領土交渉を進展させるてこになると判断。首脳会談では、北方領土問題を含む平和条約締結交渉とともに、共同経済活動や人的交流拡大を主要議題に位置づける考え。交渉では具体的な共同経済活動の業種も検討する見通しだ。日露外交筋によると、水産業や観光業を想定している。

首脳会談ではビザなし交流の拡大策での合意も目指す。ロシアの実効支配を強めることなく日本人が北方領土に行くための枠組みであるビザや旅券なしでの訪問は現在、元島民や学識経験者、報道関係者らに限定している。対象を拡大し、共同経済活動の交渉と並行して日本企業関係者が視察できるようにする。元島民らの墓参などでも現在の国後島経由ではなく、直接訪問先に行けるようにする方針だ。
　　
 ◇解説　法的立場の維持、課題

日露両国が共同経済活動の交渉を開始する際、最も高いハードルは双方の法的立場を損なわない活動のあり方だ。北方領土に進出する外国企業はロシアの法律に従っているが、日本企業が同様の活動をした場合、ロシアの実効支配を認めることになる。

参考になるのは日露漁業協定で、北方領土周辺の日本漁船の操業を認める一方、ロシア当局による違法操業の取り締まりは盛り込まず、管轄権をあいまいにした。ただ、共同経済活動は用地取得やロシア側との取引など複雑な上、長期間に及ぶ。ビジネス関係者が犯罪に巻き込まれた場合の司法管轄権も考慮する必要があり、「管轄権の棚上げ」だけでは難しい。

それでも日本が共同経済活動を重視するのは、極東などでの経済協力と違い、領土問題に直結するためだ。北方四島には約１万７０００人のロシア人が暮らし、「ロシア化」が進んでいる。日本政府は、現在はほとんどない日本の活動を広げ、実態としての「日本化」によって領土交渉を動かす手がかりにしようとしている。yahooニュースより