作業時間を半分に短縮
日本の建設現場は2011年以降の東日本大震災後の復興需要、さらには20年の東京オリンピック開催に向けて大型工事が目白押しで、建設作業員不足が深刻化している。外国人技能研修性などを使って何とか工事をこなしているのが実態で、工事の効率化は請け負った業者の最大の課題になっている。
この絶対的な人出不足の環境の下で、コマツはGPSなどを活用したICT建機を使って施行を行い、監督、検査、維持管理という生産工程の流れをインターネットなどの情報通信技術を使って生産工程全体の生産性や品質の向上を図れるスマートコンストラクションを開発した。これを13年以降に日本だけでなく、北米、欧州、オーストラリアなどの現場に導入した。このシステムを使えば、ブルドーザーの位置を数㍍単位で割り出すことができ、3次元の図面によりプラスマイナス3㌢の精度で地面を整地できる。作業を自動制御で行うため、オペレーションを簡素化することができ、「作業時間を半分にできた現場もある」と話す。
これに時間軸を加え、ドローンが測量したデータなども取り込んで、すべての作業を「見える化」したのがスマートコンストラクションだ。航空測量による3次元測量により、盛り土する量やのり面を削る量などを数値化し、その工事を進めるためにはダンプカー何台分に相当するかなどを瞬時にはじき出し、効率的な作業ができるのが最大のメリットで、15年2月に発表した。
ドローンを飛ばして上空から測量することで、これまでの測量と比べて正確で緻密な測量が可能になった。従来の方法で測量して、ドローンで測量をやり直したところ、3500立法㍍、大型ダンプトラック600台分の誤差があることが分かった事例があったという。四家本部長は「工事の現場は予定通りには進まない不確実性の塊だが、スマートコンストラクションで事前に違いが分かっていることが、工事を進める上で重要なことだ」と強調する。
国土交通省も人出不足に対応して建設工事に関する設置基準を変えるなど、対応策を取ってきていた。その中でこの手法が同省の目にとまり、9月12日に開催された第1回未来投資会議の中で、建設生産性革命とその推進のための具体策としてコマツのスマートコンストラクションが取り上げられた。
この会議に出席した安倍晋三首相からは①建設現場の生産性を25年までに20%向上させる②3年以内に橋梁、トンネル、ダムなどの公共工事現場で測量ドローンを投入して施工、検査の工事プロセスを3次元データでつなぐ新しい建設手法の導入を目指すとの発言があった。この手法を建設現場に導入することで、人手による現場作業がICTを搭載した機械に置き換わり、これまで習得するのに何年もかかったノウハウも数か月で身に付けられるようになり、建設現場特有の3Kのイメージを払しょくし、人手不足も解消できると、している。
分かりやすい説明が大事
四家本部長は「ITの技術が組み込まれたスマートコンストラクションの手法を小さな建設会社が受け入れるには抵抗感があるので、無理に教えるのではなく、じっくり分かりやすく説明して、少しずつ理解してもらうしかない。スマートコンストラクションは大きな建設会社が大きな現場でしか使えない手法のように思われがちだが、コンビニの駐車場工事のような小さい現場でも使われている」と話す。中にはこのスマートコンストラクションを導入して売り上げを数倍に増やした中小企業の建設会社もあるそうで、中小業者への売り込みを積極的に働き掛ける。
ただ、現状ではスマートコンストラクションを行うにはITを駆使したブルドーザーなどは従来のものと比べてどうしても割高になる。このため、資金的に余裕のない中小企業では使いたくても使えない面がある。四家本部長は「ITを駆使したICT建機の普及はまだ1%未満しかなく、30%くらいまで普及してくれば建機のコストも下がってくる」と指摘、価格低下による普及拡大を期待している。
ただ、いくら効率化が進んでも工事現場の無人化は難しく、逆に無理をして無人化するとそのためのコストが掛かりすぎるとみている。「工場ならば(ロボットを使って)すべての作業を自動化できるが、建設現場の場合は一部をソフトウエアに落とし込み、一部は人間がやらざるを得ない部分がある。オペレーションをソフトとハードを組み合わせて価値を作りだすのが我々の仕事だ。人がやらなくてよい部分を機械にシフトさせていきたい」と指摘、工事現場の無人化は想定していない。
人手に依存して人海戦術を続けてきた日本の建設現場。コマツはスマートコンストラクションというICTを利用した手法により生産性を上げることができれば、公共事業を含めてコストダウンになるとみている。 BBC Newsより
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