2016年12月18日日曜日

小型ロケット「イプシロン」 進化した2号機20日発射 低コストと高性能を両立

小型ロケット「イプシロン」の2号機が20日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付(きもつき)町)で打ち上げられる。低コストで効率的という特徴を維持しながら、打ち上げ能力を高めた強化型だ。進化した機体で需要の拡大を目指す。

効率化を実現
 
イプシロンは小惑星探査機「はやぶさ」などを打ち上げたM5の後継機。日本が60年以上にわたって独自に開発を続けてきた固体燃料ロケットの伝統を受け継ぎ、2013年に初号機を打ち上げた。液体燃料を使う主力機のH2Aが大型衛星を搭載するのに対し、こちらは小型衛星用だ。

1段目は新規に開発せずH2Aの固体ロケットブースターを転用。2、3段目もM5の上段を活用し、開発コストを抑えた。多くの人手が必要だった打ち上げ前の点検を自動で行うほか、管制作業はパソコンを使ってわずか数人で行えるなど、打ち上げの大幅な効率化に道を開いた。

イプシロンを統括するJAXAの森田泰弘教授は「従来のロケット開発は機体を中心に考えられてきたが、組み立てや運用などを含むシステム全体として、打ち上げの仕組みを簡単にしたい」と話す。

能力3割アップ

2号機の全長は初号機より1・6メートル長い約26メートル。2段目には進化の象徴として矢印のマークを新たに描いた。矢を放つ伝統行事の流鏑馬(やぶさめ)が地元の肝付町で行われていることにもちなんだという。

放射線が強い地球周囲の帯状空間を観測するJAXAの科学衛星「エルグ」を搭載。打ち上げ費用は初号機と同程度の50億円に抑える。H2Aのほぼ半額だ。

初号機と比べ2段目の燃料を4割増量し、打ち上げ能力を約3割向上させた強化型の機体が最大の特徴だ。2段目はサイズが大きくなったが、機体に使う炭素繊維複合材料の強度を高い精度で解析することで使用量を減らし、軽量化に成功した。

衛星搭載部は70センチ長い約5・4メートルに拡大。こうした改良により、強化型は重さ100~600キロ程度の小型衛星の大半が搭載可能になった。

電子部品も大胆に刷新した。象徴的なのは機械式から半導体式に変更した2、3段目の点火装置だ。点火はロケットにとって最も基本的な機能で特に高い信頼性が求められるため、実績のある部品を使うのが常識だった。森田氏は「怖くて誰も変えようとしなかった部分だが、小さくて軽い部品を使うため挑戦した」と明かす。

今後も部品を旧式から最新式へ、宇宙専用品から汎用(はんよう)品へと順次、転換して低コスト化を進める。

改良を継続へ

大型機との相乗効果による改良も続ける。来年度の3号機は、従来の火薬ではなく機械仕掛けで衛星を分離するH2Aの新技術を導入し、衛星に与える衝撃を世界最小水準に抑える。

1段目は20年度に初打ち上げを目指す次世代大型機H3のブースターと共通化し、コストをさらに削減。将来的に30億円以下の打ち上げ費用を実現できるか検討中だ。

今後は強化型で年1回程度の打ち上げが続く見込みで、来年度は経済産業省の地球観測衛星「アスナロ2」、18年度は技術実証衛星、19年度には日本初の月面着陸機「スリム」を予定している。

小型衛星は従来の科学分野に加え、通信や地球観測などの実用分野で需要増加が見込まれる。イプシロンは当面は政府の衛星で実績を積むが、将来は企業や海外の衛星打ち上げも目指すという。宇宙利用の裾野を広げる存在になれるか注目される。

森田泰弘JAXA教授「作業の妥当性、外部で常時検証」

初号機の成果をどう振り返るか

「打ち上げをシンプルにした。大型機などの技術も使ってコストを抑え開発期間を短くし、ロケットは機種横断的な開発が重要だという手本を世界に示せた」

2号機の意義は

「初号機に大きな改革を加え、低コストだけでなく高性能化も実現。機体全体を最適な性能にした。今後もどんどん成長させ、宇宙開発利用を盛り上げたい」

コストや効率化を重視するあまり信頼性を犠牲にしていないか

「それは全くない。やせ我慢するような開発はしていない。例えば、部品点数を減らせれば機体が軽くなって性能が上がり、コストは下がる。しかも壊れる要因が減る。このように高性能、低コスト、高信頼性の3点を考え開発している」

初号機では機体の姿勢を監視するコンピューターの設定ミスで、打ち上げが直前に延期されるトラブルがあった

「点検で思い至らない部分が若干あることにチーム内で気付かなかった。その後、開発や製造、点検の過程で常時、チーム外の人が作業の妥当性を独立に検証する体制にした。実際の飛行と極力同じ試験を行い、同じにできない項目は別の方法で全て確かめている」

2号機成功の自信は

「100%の自信が必要だが、それでも成功するか分からないのが打ち上げだ。しかし点検や試験を徹底しており、100%を超える数字が頭にはある」

未来のロケットはどんな姿になるか

「プラモデルのように簡単に作れるようになればいい。年に何機という頻度ではなく、飛行場から毎週のように簡単に飛んでいくロケットを夢見ている。イプシロンはその出発点だ」 産経新聞より

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