2016年3月21日月曜日

介護職員等処遇改善の待遇はやる気なし

日本共産党、民主党、維新の党、生活の党、社民党の野党5党が共同提出していた介護職員等処遇改善法案が17日の衆院本会議で、自民、公明、おおさか維新の反対多数で否決されました。介護報酬の削減に続いて介護職員の抜本的な待遇改善に背を向けるもので、安倍政権が掲げる「介護離職ゼロ」は名ばかりであることを示しています。

同法案は、深刻な人手不足を打開し、利用者サービスを守るために、他産業と比べて10万円も低い介護や障害者福祉分野で働く人たちの賃金を、月6千円から1万円引き上げるもの。サービス提供に直接携わる労働者だけでなく、事務職など全労働者の賃金を引き上げるのが特徴です。

介護・障害者福祉従事者だけを引き上げる場合は1人あたり月額1万円、事務職など全職種を引き上げる場合は同6千円を引き上げることが可能で、事業者がどちらかを選べるようにしています。

参考人質疑でも、政府の処遇改善はサービスに携わる職員だけに限定しているため、「チームで働いているので、法人で持ち出しをして事務職の人も含めて支給している。全職種に給付できるのは、とてもいい」(堀越栄子・日本ケアラー連盟代表理事)と賛同する意見が出されました。

理由示せず反対

ところが、塩崎恭久厚労相は何の理由も示さず、「政府は反対だ」と衆院厚労委員会で答弁。法案の採決で自公など3党は反対討論に立たず、何の理由も示さずに否決し、大義のなさを示しました。

厚労省は、2025年までに新たに100万人の介護職員が必要になると推計(12年比)していますが、その方策としては、離職者に対する再就職準備金の貸し付け、中高年に対する就労に向けた入門的研修などはあるものの、抜本的な賃金改善はありません。

それどころか、介護事業者に払われる介護報酬を、2015年4月から過去最大規模に匹敵する2・27%も引き下げたため、賃金改善が進んでいません。

報酬引き下げのさい厚労省は、賃金改善を行う事業者には報酬を上乗せする(加算)ので、1万2千円程度の賃上げになると説明していました。しかし、日本介護クラフトユニオンの調査(4千人)では、賃上げは6千円にとどまっています。

これに対し5野党の法案は、報酬とは別に助成金を支給し、賃上げに確実に結び付く仕組みです。反対理由も示さずに否決した3党の姿勢は党利党略というほかありません。

小さく見積もる

安倍内閣は、「介護離職者ゼロ」に向け、介護の受け皿を2020年代初頭までに50万人分増やすと掲げています。しかし、実際は、すでにある38万人分の計画に12万人分を上積みしただけです。

介護離職者は年間10万人を超えるのに離職防止対象者を1万5000人に限定。特別養護老人ホーム待機者52万人に対し、解消する対象者を自宅待機の15万人に限定して、目標を小さく見積もっています。病床削減によって在宅医療に追いやられる約30万人も対象に含まれていません。

介護サービス整備目標を小さく見積もり、人材確保にも実効性がない―名ばかりの「介護離職ゼロ」を掲げる安倍内閣と国民の矛盾は避けられません。 しんぶん赤旗より

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