2016年3月4日金曜日

日本共産党は科学的社会主義を投げ捨てたのか

私が入党した1967年当時、日本共産党と中国共産党は、大げんかの最中だった。当時、毛沢東主席は「日本人民の前には4つの敵(=(1)米帝国主義(2)佐藤栄作内閣(3)ソ連共産党(4)日本共産党)がいる」として、その打倒を呼びかけていた。

きっかけになったのは、毛主席が「文化大革命」を契機として、武力闘争絶対化方針や、ソ連共産党への非難を押し付けてきたのに対し、日本共産党がこれを拒否したことだった。当時の「赤旗」には、毛主席や中国共産党批判が載らない日はなかったぐらいだ。

この関係は、98年6月に関係が正常化されるまで、32年間も続いた。この間の日本共産党の中国批判は、実に手厳しいものであった。

例えば、靖国参拝問題である。85年8月15日、中曽根康弘首相(当時)が公式参拝したのに対し、中国が抗議の声をあげた。抗議の内容は、「A級戦犯が合祀されている」ということに絞ったものであった。

こうした中国の態度に、日本共産党は「靖国問題の核心はA級戦犯合祀問題ではない」「中国政府の態度は重大な内政干渉である」と厳しく批判したのである。

だが、関係正常化した現在は、靖国神社について「侵略戦争を、自存自衛の正義の戦い、アジア解放の戦争と美化し宣伝することを存在意義とする」「A級戦犯が(中略)犠牲者として合祀されている」(志位和夫委員長、2014年1月29日、衆院本会議)などと、その態度を中国寄りに転換させているのである。見事なまでの豹変(ひょうへん)ぶりだ。

いま、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島や、パラセル(同・西沙)諸島では、中国が岩礁を勝手に埋め立てて人工島を建設している。パラセル諸島のウッディー(同・永興)島には、戦闘機が派遣され、地対空ミサイルが配備されるなど軍事基地化が進んでいる。

これらの諸島は、ベトナムやフィリピンなども領有権を主張し、その帰属は国際法上、明確になっていない。

中国は国際法を無視して、強大な軍事力を背景に一方的に領有権を主張し、既成事実化を強行的に進めている。これは日本のシーレーン(海上交通路)の安全にも由々しき事態である。

ところが、志位委員長は昨年11月、テレビ東京番組で、核・ミサイル開発を進める北朝鮮を含めて、「北朝鮮、中国にリアルの危険があるのではなく」と発言していた。正常化前なら、中国共産党を最大限に非難したことだろう。

民族自決権を奪われているチベットやウイグルについても同様だ。

私が入党した時代には、「民族自決権の擁護こそ、科学的社会主義(マルクス・レーニン主義)の神髄の1つだ」と学んだものである。だとするなら、チベットやウイグルに対する中国共産党のやり方が、科学的社会主義に照らして正しいのか否か、その態度を鮮明にすべきであろう。

それとも、中国の顔色を見るだけなのか。

■筆坂秀世(ふでさか・ひでよ) 1948年、兵庫県生まれ。高校卒業後、三和銀行に入行。18歳で日本共産党に入党。25歳で銀行を退職し、専従活動家となる。議員秘書を経て、1995年に参院議員に初当選。共産党のナンバー4の政策委員長を務める。2003年に議員辞職し、05年に離党。評論・言論活動に入る。著書に『日本共産党』(新潮新書)、『日本共産党と中韓』(ワニブックスPLUS新書)など。

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