為替市場では一時1ドル=110円台をつけるなど、急速に円高ドル安が進んでいる。世界経済の先行き不透明感が強まる中、投資マネーのリスク回避が加速しているからだ。米国や中国経済への不安が高まる一方で、安全資産とみなされる円を買う動きが強まっており、識者の間では1ドル110円割れも想定されるという。
元をただせば「中国への懸念」
まず、足元の急速な円高ドル安進行について、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「根底にあるのは中国経済の減速に対する懸念だ。原油安だけでなく米国経済の減速懸念も元をただせば中国から始まっている」と話す。
「中国政府が大規模な景気対策を打ち出せば、一時的に市場は好感するだろう。ただ、現在の状況を引き起こしたのはリーマンショック後に打ち出された景気対策で、結局は同じことになる」と述べ、対策の手詰まり感を指摘する。
三菱東京UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「そもそも日本の経常黒字と円の実質的な金利上昇という、『円高に進む理由』がある。これにドル売りの流れが加わり、投機筋が乗ってきたことで、足元のような状況になっている」と解説する。
今後想定される為替レートについて、内田氏は「日米間の実質金利差から考えて107円程度まで円高が進む可能性はある。さらに、これから発表される米国の小売りや雇用の統計の結果、米国の内需が予想を下回っていることが確認されれば、一気に105円方向に向かう可能性もある」と語る。
先の唐鎌氏も「購買力平価から考えて1ドル=100~105円台が想定される」とし、いずれも110円割れが想定されるという点で見立ては共通している。
「協調して具体策出すのは難しい」
日銀の黒田東彦総裁は3日、都内の講演で「追加緩和の手段に限りはない」と述べ、さらなる金利引き下げに躊躇しない姿勢を示している。
しかし、「今回のマイナス金利の導入決定では、直後に円安に振れるもののすぐに円高基調に戻ってしまった」(内田氏)ことから、「日銀にできることは、もうない」(唐鎌氏)との見方がじわじわと広がっている。
今月下旬に開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で国際的な対策を期待する声もあるが、唐鎌氏は「各国で通貨に対する思惑が違うため、協調して具体策を打ち出すのは難しいのではないか」と指摘した。 日経ビジネスより
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2016年2月13日土曜日
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