韓国の高度成長を半導体とともに牽引してきた造船業界が“沈没”寸前だ。「ビッグ3」と呼ばれる現代重工業、サムスン重工業、大宇造船海洋の韓国造船大手3社は昨年、そろって過去最大の赤字に陥ったとみられる。世界経済の減速に伴う受注減が響いたのは間違いないが、韓国内では技術力の向上をおざなりにして安値受注を繰り返してきた「未熟な競争文化」を問題視する声もあがる。製造強国を誇ってきた韓国の自信喪失は明白だ。
■8兆ウォンの赤字
「これほどひどい業績になるのは初めてだ」
聯合ニュースは韓国造船業界関係者のこんな嘆きを伝える。
同ニュースによると、大宇造船海洋の昨年の営業赤字は約5兆ウォン(約4950億円)、現代重工業とサムスン重工業もそれぞれ1兆4000億~1兆5000億ウォンと造船、証券業界は推計しているという。ビッグ3がそろって兆単位の赤字を計上するのは初めてで、合計では8兆ウォンにも達する史上最悪の危機的状況だ。
大宇造船海洋に対しては大株主で債権団の中心である政府系の韓国産業銀行が昨年10月に合計4兆2000億ウォンに上る支援策を発表した。資金の手当てがなければ、経営破綻が免れないところまで追い込まれている。
大宇造船海洋は昨年8月以降、早期退職などで部長クラス以上の社員を1300人から1000人に減らし、本社役員も3割削減。不動産など一部資産も売却するなど厳しい再建計画を実施中という。リストラを余儀なくされているのは他のビッグ3も同じだ。
「最近公開された映画『オデッセイ』の原作を読んだが、火星で孤立した主人公が地球に戻るという希望を失わず生存のために死闘した結果、無事に帰還するのを見て感銘を受けた」
中央日報は同社の鄭聖立社長が再建の努力を「火星からの帰還」にたとえる悲壮な覚悟を報じている。
造船不況は韓国の地域経済にも打撃を与えている。造船所が密集する巨済市では、市場・スーパーの売上高が1年間に20~25%減少するなど、景気の冷え込みが顕著だ。
■後進的な競争文化
なぜ、これほどまでの苦戦を強いられるようになったのか。
世界的な造船不況というだけでは説明しきれない。世界の造船市場は日本、中国、韓国が9割を占めるが、中でも韓国の受注の落ち込みが際立っているからだ。
韓国経済新聞などによると、韓国の造船企業は昨年、1015万CGT(標準換算トン数・建造難易度などを考慮した船舶重量)を受注した。1位の中国より10万CGT少なかった。日本は914万CGTで、3位だった。市場シェアは中国が30.3%、韓国が30%、日本が27.1%となり、中国の受注量1位は2012年から4年連続という。
問題は下期の受注動向だ。中国が692万CGTを受注したのに対し、韓国は342万CGTと中国の半分にもならなかった。日本(442万CGT)にも追い抜かれている。
受注量の差は年末に近づくほど広がっており、11~12月は中国が韓国の8倍にも上った。12月の韓国の受注量は2009年9月以来の最低水準という。
価格競争力のある中国が技術力もつけ、もともと技術力に優れる日本は円安で価格競争力を増しており、両国に韓国が挟撃される構図となっているようだ。
加えて、韓国が原価割れの安値受注も辞さずにシェアを守ろうとしたことで損失が拡大。注力してきた海洋プラント(原油などの掘削・生産装置)でも技術不足で工期が遅れたり、原油安を背景に契約のキャンセルが相次いだりしたことも傷口を広げた。
韓国内では造船業の不振の原因として「たい焼きでも作るように船を作り、いわゆる『カタログ営業』だけを続けてきたのだから技術力があるはずがない」(韓国経済新聞)、「勝利のためにはどんな変則的な方式も辞さないという後進的な競争文化が根底で作用している」(中央日報)といった“自虐的”な見方も出ている。
■座礁の危機
造船業で日本が40年以上守り続けた世界一の座を韓国が奪ったのは2000年だ。それ以降、造船業は韓国経済の自慢の種だったが、近年は中国に1位を譲り渡しただけでなく、日本にも追い上げられ、焦りの色を深めている。日本のシェアは13年が16.5%、14年が21.6%、15年が27.1%と拡大傾向にある。
中央日報は「主力産業の危機は韓国経済の危機だ。このまま放置すれば成長エンジンが止まり『韓国号』は座礁するだろう」と警鐘を鳴らしている。
実際、韓国銀行(中央銀行)が発表した15年の成長率は2.6%(速報値)だった。韓国メディアによると、政府は3%台を目標としていたが、2012年以来、3年ぶりの低水準となった。輸出の伸びが鈍化し、14年の2.8%から15年は0.4%になったことが響いた。
造船業の苦境は大きな曲がり角に立った韓国経済を象徴しているといえるだろう。夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2016年2月14日日曜日
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