2015年7月19日日曜日

中国経済の崩壊の影響

約14億人の人口を抱える中国には100万ドル(約1億2000万円)以上の資産を持つ富裕層が日本の3倍の360万世帯、年間可処分所得240万円以上の中間層となると1億2000万人といわれる。いまや彼らが世界の消費を支え、宝石や貴金属から、家電製品まで買い占めていく「爆買い」の主役となり、中国の輸入額は世界貿易の約1割、年間約2兆ドル(約240兆円)に達している。

 一方、ギリシャの債務危機をきっかけに起きた世界同時株安の余波を受けて上海、深センなど中国の株式市場では6月中旬から株価が急落。欧米の投資家は、「ギリシャより上海だ」といち早く株を売り、この1か月足らずで中国株は約3割も下がった。時価総額にして実に416兆円が失われた。中国バブルの崩壊が世界経済に及ぼす影響は計り知れない。金融論が専門の真壁昭夫・信州大学経済学部教授が語る。

「中国は最大の資源消費国で、石油や石炭から鉄鉱石、小麦などの農産物までがぶ飲みしている。その中国の経済活動が大きく縮小すると、まず資源価格が下落して産油国など資源輸出国の経済がおかしくなる。

 さらに中国を顧客にしている世界の自動車や工作機械、家電製品も売れなくなり、生産の縮小が連鎖して世界的なリセッションにつながる。最悪の場合、1929年の世界恐慌に近い状況に陥る危険性も否定できない」

 中国の最大の貿易相手国は日本である。中国経済に詳しい評論家の宮崎正弘氏は日本への具体的影響をこう分析する。

「例えば商社では中国とのビジネスの比重が高い伊藤忠商事が深刻な打撃を受けると予想される。伊藤忠はタイの企業と組んで中国国有企業最大手の産業・金融コングロマリット『CITIC』への1兆2000億円の出資に乗り出したばかり。

 また、自動車ではトヨタ、日産、ホンダ、三菱が現地に生産拠点を持つが、とくに中国で100万台以上生産している日産が大きな影響を受ける。中国への投資額が大きな企業と、そうした大手に従って中国に進出した多くの下請けメーカーに被害がおよぶ危険性もある」

それが想定できるため、中国の株価急落は瞬時に世界の株価に連動する。7月8日のチャイナショックでは、日経平均株価が1日で638円安で2万円割れ、ニューヨークダウも261ドル急落した。

 だが、中国の株価が3分の1まで下がる事態となればその程度では済まない。「その時は東京市場やニューヨーク市場でも株価が半値近くまで落ちていく可能性がある」とは多くの市場関係者が想定している最悪のシナリオだ。まさに1929年10月24日のブラックサーズデーの株価暴落から始まった世界恐慌への道ではないか。

※週刊ポスト2015年7月31日号

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