南シナ海に派遣された米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」の動向に中国が神経をとがらせている。米国防総省は「通常の作戦行動」と説明。中国が軍事拠点化を進める人工島周辺に入る「航行の自由作戦」ではないとしているが、南シナ海で中国をけん制する狙いが隠されているとみられる。
カール・ビンソンは1月初め、カリフォルニア州サンディエゴを出港し、ハワイとグアム沖で演習をしてきた。米軍は18日、カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群が南シナ海で活動を開始したと発表。今回の任務については「インド洋やアジア太平洋地域の同盟国やパートナー国、友好国との現在の緊密な関係をさらに強固にし、打撃群としての能力や即応性を示したい」としている。
米海軍横須賀基地(神奈川県)を拠点とする第7艦隊には、原子力空母「ロナルド・レーガン」が配置済み。アジア太平洋地域に2隻の空母艦隊が展開することになり、トランプ政権としても、オバマ前政権によるアジア重視の政策を続けていく意思を明確にしたものとみられる。
今回の空母派遣について、中国外交部の耿爽報道官は21日の定例記者会見で、「沿岸国の主権や安全を損ねる」と述べ、不快感を表明。中国共産党中央委員会機関紙・人民日報系の環球時報で中国の軍事専門家は「トランプ政権は以前の政権よりも南シナ海への干渉を強めるだろう。中国は外交的にも軍事的にも備える必要がある」と警告した。
これに先立ち、中国人民解放軍の機関紙・解放軍報などは「米国空母への準備は万端」で、南シナ海艦隊などが遠海での防空演習を行うと報道。演習は地上航空隊、沿岸防空システム、水上艦からなる連合防空作戦訓練で、沿岸防空システムでは西沙(パラセル)諸島・永興(ウッディー)島の紅旗9(HQ−9)ミサイル部隊や、南沙(スプラトリー)諸島に新設した人工島の76ミリ速射砲、30ミリ近接防御火器システムが、地上航空隊では主に海南島に駐留している「飛豹」(JH−7)爆撃機、殲撃11(J−11)BH/BSH戦闘機が参加する、などと詳しく伝えた。
さらに、観察者網は「島駐留の防御部隊と地上航空兵力などが参加する連合演習は、南沙の防御システムがすでに初歩的な作戦能力を備えていることを意味する」と指摘。「このタイミングでの中国による軍事演習実施は、南シナ海の島の主権と国家の安全を断固守るという決心と能力を示すものだ」と強調した。
南シナ海では年明け早々、中国初の空母「遼寧」が艦載機の発着訓練を繰り広げ、実戦能力を誇示した。米中両国の相次ぐ空母展開は、領有権争い続く南シナ海が「一触即発」の危機を依然としてはらんでいることを改めて示している。 レコードチャイナより
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