まず北朝鮮問題ですが、米国は表向きこそ朝鮮戦争で韓国とともに戦い、停戦中の今日も同盟国ということになっています。そして北朝鮮は表向き「反米」を前面に出し、核弾頭を米国本土に到達させる脅威を喧伝しています。しかし、金正恩委員長の周辺はウォルト・ディズニーや米プロバスケットボールのグッズであふれています。
経済力の乏しい北朝鮮が、カネのかかるミサイル発射を繰り返し、核実験を繰り返す状況は不自然と見るべきで、北朝鮮の「中国向け石炭輸出で外貨を稼いでいるから」との説明では不十分です。為替、金利が落ち着いていることを考えると、裏で誰かが金を出し、技術支援をしていると考えるのが自然で、米英パトロン説が有力です。
米国は朝鮮半島統一に関心があり、それは韓国主導でも北朝鮮主導でも構わないはずです。朝鮮半島を基地として、そこから北京を監視するシナリオがあります。韓国が政治的に混乱し、北朝鮮にとっては南進(南攻)のチャンスでもあります。北が攻めてきた場合に、在韓米軍が北と戦う保証はなく、むしろ在韓米軍を引き揚げる可能性さえあります。
今回の訪韓では、北朝鮮の状況・情勢を探るとともに、在韓米軍の扱いについて、単に駐留経費の引き上げだけでなく、そもそも在韓米軍を残しておいてよいのかも検討し、韓国の意向を探るものと見られます。裏を返すと、もし米国が在韓米軍を近いうちに引き揚げる話が出てくれば、北朝鮮の南進が近い、というシグナルになります。
米国の狙いはすでにかなりの程度実現
米国が韓国に主眼を置く理由のもう一つ、米国が韓国に“THAAD”を配備することを決めましたが、中国が米国にではなく韓国に対して報復に出ているため、韓国経済がダメージを受け、韓国内に動揺が広がっていることについてです。北京政府は中国人の韓国旅行を抑制したり、韓国芸能人を中国から排除したり、韓国のチャーター便の認可をしなかったり、様々な形での経済的報復が目立ちます。
米国としては、中国政府の動きを監視する目的もあり、何が何でもTHAADの配備は進めたいわけで、韓国世論の反対を抑える必要があります。朴大統領の弾劾についても米国の影響が少なくないようですが、最高裁がどのような判断を下すかはともかく、韓国財閥の弱体化は進んだわけで、その面では米国の狙いはすでにかなりの程度実現しました。
搾り取られる日本
この韓国問題が米国には喫緊の問題で、今回、日本訪問は付け足しの面があります。朝鮮半島有事が起これば、その際に日米がどう対応するかも議論しておく必要があります。その辺は表立って報道されることはないと思われますが。あとは経済ディールで日本から何を得るか、ということになります。
米国の意向としては、日本にも軍事費の拡大をさせ、GDP比で2%まで引き上げさせたい、との思いがあるようです。そして米軍の駐留経費の負担増も持ち出される可能性があります。日米同盟の強化というのは上辺の話で、TPPに拘る安倍総理はうるさいので当面首脳会談は持たず、今回は代わりにマティス長官に総理を表敬訪問させる模様です。必要があれば当面は麻生・ペンス会談で代行させる模様です。その点、麻生大臣の健康状態が不安ですが。
※編注:本稿執筆後、安倍首相とトランプ大統領は電話で会談を行い、2月10日にワシントンで日米首脳会談を行うことで合意した
こうした空気が伝わったか、さすがに安倍総理もTPPに替わって日米二国間協議もやぶさかでない、と姿勢を修正しつつあります。国内では敵なしの安倍総理も、「俺様大統領」の相手は楽ではなさそうです。 MONEY VOICEより
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