2015年11月8日日曜日

南シナ海の制空権はアメリカが握る

米国と中国が南シナ海を舞台に緊張状態にあるなか、「制空権」をめぐる両国の攻防からも目が離せない。習近平国家主席率いる中国は、勝手に埋め立てた岩礁を軍事基地化して同海域を支配しようとしたが、米国は原子力空母「セオドア・ルーズベルト」を同海域にとどまらせて、精強な航空戦力を誇示して徹底対峙しているのだ。イージス駆逐艦1隻に震え上がった「赤い帝国」は、空の戦いでも身動きが取れない状態にある。 

「私の視察は、地域の平和と安定に極めて重要な役割を担っている米国の軍事力を示すものだ」

カーター米国防長官は5日、マレーシア・ボルネオ島北方の南シナ海を航行中の空母セオドア・ルーズベルトに、新型輸送機オスプレイで降り立った。米軍が誇る戦闘機の着艦を視察した後、記者団にこう語った。

カーター氏は前日、ASEAN(東南アジア諸国連合)拡大国防相会議に出席し、「航行の自由」について、中国側と激突したばかり。同空母は、艦載機85機、士官・兵員約3950人という「動く要塞」。自ら乗艦することで、米軍のプレゼンスを示し、覇権を強める中国をけん制した。

軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「同空母1隻の総戦力は、ベルギーやオランダなど、ヨーロッパ中堅国の全軍事力に匹敵する」と語った。

航空自衛隊南西航空混成団司令を務めた佐藤守・元空将(軍事評論家)も「セオドア・ルーズベルト1隻が南シナ海に展開しているだけで、習政権はまったく身動きが取れない。『制空権』は米軍が完全に握っている。中国は手も足も出ないだろう」と分析した。

「制空権」とは、その空域で敵に妨害されることなく、自由な作戦行動を可能とする軍事的支配権のことだ。第2次世界大戦以降、一定海域を支配する「制海権」を握るためには制空権の獲得が不可欠となった。空母は、制空権を担う航空機を前線に進出させるための運搬艦艇といえる。

セオドア・ルーズベルトには、米海軍空母航空団で最も歴史がある第1空母航空団(CVW-1)が艦載されており、3000キロ以上の航続距離を持つ戦闘攻撃機「F/A-18 スーパーホーネット」、最新鋭の早期警戒機「E-2Dアドバンスド・ホークアイ」など、世界最高レベルの陣容を誇っている。

AFP通信は10月30日、同艦の甲板上で、クルーたちがスーパーホーネットの機体チェックを行っている様子を動画配信した。米海軍はメディアを通じて、「いつでも出撃できるぞ!」とのメッセージを中国に送ったといえそうだ。

これに対し、中国軍は早期警戒機「KJ2000」や、同国唯一の空母「遼寧」に艦載する戦闘機「殲(J)15」などを保有しているが、いずれも、その能力や性能は不明な点が多い。

前出の井上氏は「公表している通りの性能が出るかどうか、大いに疑問だ。中国の戦闘機などは『カタログ性能』ともいわれている。しかも、実戦経験もない」と解説する。

といって、中国軍も指をくわえて眺めるわけではない。

前出の佐藤氏は「中国が最近、南シナ海・パラセル(中国名・西沙)諸島のウッディー(永興)島で、戦闘機『殲11』の訓練を行ったという情報が入ってきた」と明かした。

殲11は、ロシアのスホーイ27を輸入したり、ライセンス生産した中国の主力戦闘機。米国や日本のF15イーグル戦闘機と互角に戦うことができるとされ、200機以上が空軍と海軍に配備されているという。

ただ、米中がにらみ合う南シナ海・スプラトリー(同・南沙)諸島を考えると、佐藤氏は「戦闘行動半径としてはギリギリだ」といい、中国の現空軍力では、米軍には太刀打ちできないとの見方を強調する。

「ヒゲの隊長」の愛称で知られ、防衛政策に精通する自民党の佐藤正久参院議員も5月23日、ツイッターで以下のように指摘している

《南沙諸島に一番近い中国の滑走路を持つ基地は西沙諸島だが、それでも600キロメートルはある。一方、台湾や比(フィリピン)、越(ベトナム)は南沙諸島に滑走路を持つが中国はない。(中国が南沙諸島で)滑走路建設を急ぐ理由はここにある》

つまり、中国は南シナ海上空の制空権を握るためにも、スプラトリー諸島に「不沈空母」として使用する人工島を造成し、滑走路建設を急いでいるのだ。

オバマ米大統領が承認した「フリーダム・オブ・ナビゲーション(航行の自由)作戦」の発動は、そんな中国の思惑を打ち砕いたといえる。

米中のにらみ合いは今後も続きそうだが、習指導部には今のところ打つ手はなさそうだ。
夕刊フジより

日本近海にはロナルド・レーガン空母が待機している。北と南から中国を睨みをきかせている。

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