2015年11月18日水曜日

テロ攻撃を受けフランスは戦時体制

フランスの怒りが炸裂した。129人が犠牲となった、過激派組織「イスラム国」(IS)によるパリ同時多発テロを受け、オランド大統領は演説で「わが国は戦争状態にある」と宣言し、IS掃討のため、シリア空爆をさらに強化することを表明したのだ。全面戦争を覚悟したのか、原子力空母「シャルル・ドゴール」を中東に急派させる。一方、ISは新たなビデオ声明で「ワシントンにある米中枢を攻撃する」と恫喝した。 

オランド氏は16日午後(日本時間17日未明)、パリ郊外のベルサイユ宮殿で上下両院合同会議を緊急招集した。

毅然とした表情で、「わが国は世界を脅かすテロ、過激主義と戦っている」「国は全力を挙げて国民を守る」「フランスはテロに破壊されない。フランスがテロリストを破壊する」などと演説し、IS壊滅のため、全世界的な反撃を呼び掛けた。近く、米露首脳と協議するという。

さらに、国家の非常事態に対応するため、(1)2年間で警察官など5000人を増員(2)フランス生まれのテロリストから国籍の剥奪を可能にする-考えを示し、非常事態宣言の3カ月間延長や、憲法改正も提案した。

フランス国会は通常、下院はブルボン宮、上院はリュクサンブール宮で行う。ベルサイユ宮殿での開催は異例。AFP通信によると、フランス大統領が上下両院合同会議で演説を行った例は、過去150年以上さかのぼっても今回を含め2度しかない。

「IS掃討」への強い決意の表れといえ、演説を聞き終わると、議員らはフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を熱唱した。同国の国歌には、《武器を取れ 市民らよ 隊列を組め 進もう 進もう! 汚れた血が われらの畑の畝(うね)を満たすまで》という歌詞がある。

フランスの強い決意を示すように、同国が誇る原子力空母「シャルル・ドゴール」が今週19日、地中海に面したトゥーロンの海軍基地から、中東に向けて出撃する。

同空母は、全長261・5メートル、全幅64・36メートル。乗員約1900人。艦載機は固定翼機35機、ヘリコプター5機で、斜めにせり出した飛行甲板「アングルド・デッキ」や、蒸気カタパルト(射出装置)も装備している。ここから、同軍のダッソーラファールF1戦闘機などが発艦して、ISの戦略拠点を爆撃することになりそうだ。

「疾風」という意味のラファール戦闘機は、アフガン紛争や、マリ共和国イスラム系反政府勢力への軍事介入にも投入されている。

米軍主導の有志国連合も動いた。

シリア東部アブカマルで15日に空爆を実施し、ISのタンクローリー116台を破壊したのだ。米国防総省が16日、発表した。

米政府は、ISが盗んだ石油を闇市場に密売し、1日当たり100万ドル(約1億2300万円)を得ているとみている。石油を運ぶ車両を攻撃し、組織の主要な資金源を断つ狙いがある。

さらに、米国務省は、サウジアラビアに対する計12億9000万ドル(約1589億円)相当の爆弾や関連装備の供与を承認し、議会に通知した。同省のトナー副報道官が16日、明らかにした。

兵器は、精密誘導兵器のスマート爆弾など。ロイター通信によると、サウジ軍によるシリアでのIS空爆などに使われるという。

こうしたなか、ISは16日、新たなビデオ声明を公表した。

シリアに軍事介入する国に対し、パリと同様のテロを実施するという警告で、「われわれは誓う。(米国の首都)ワシントンにある米中枢を攻撃する」と強調したのだ。

残虐非道なテロ組織による許し難い恫喝に、FBI(米連邦捜査局)は同日、「現時点で米国への具体的な脅威(の情報)はない」との見解を示したうえで、「米国人を守るために保安態勢を調整することは躊躇(ちゅうちょ)しない」とし、断固として即応する方針を強調した。夕刊フジより

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