米国が、南シナ海の「航行の自由」を守る断固たる決意を示した。米軍のB52戦略爆撃機2機が最近、中国が岩礁を勝手に埋め立てて軍事基地化している南シナ海・スプラトリー(中国名・南沙)諸島近くを飛行したのだ。同爆撃機は、核兵器を搭載できる。中国の習近平国家主席も出席する、トルコでのG20(20カ国・地域)首脳会合と、フィリピンでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議を前に、習氏に重大警告を発したといえそうだ。
B52戦略爆撃機の飛行は、米国防総省当局者が12日明らかにした。中国が「自国の領海」と強弁する人工島の周辺12カイリ(約22キロ)の上空には入っていないが、中国の管制官から「警告」を2度受けたという。
2機は今月8~9日、グアムを離陸した。南シナ海方面への通常の任務の途中で、人工島近くを飛行したという。特段の支障なく、当局者は「国際法に完全に基づいて行動した」としている。
B52は、ボーイング社が開発し、米空軍が1955年に運用を開始した長距離戦略爆撃機。太平洋戦争で日本本土を空襲したB29の後継機にあたる。全長48・5メートル、全幅56・4メートル、全高12・4メートルと巨大で、最大速度は時速約1000キロ、航続距離は約1万6000キロ。愛称は「ストラトフォートレス(=成層圏の要塞)」。核爆弾や巡行ミサイル、空対地ミサイルを大量に搭載できる。ベトナム戦争では「死の鳥」と恐れられた。
中国は2013年11月、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に、一方的に防空識別圏(ADIZ)を設定した。米国はこの直後もB52を2機離陸させ、中国当局に事前通報しないまま、上空を飛行させた。この時も「中国への強烈な異議申し立て」といわれた。
習氏率いる中国は現在、南シナ海のほぼ全域を囲む9つの線からなる「九段線」(赤い舌)を引き、国際法を無視して南シナ海の大部分を「自国の領海だ」と主張。周辺国を力で恫喝し、複数の岩礁を埋め立てて軍事基地化を進めている。
オバマ米大統領は長く我慢してきたが、中国の暴挙を食い止めるため、「フリーダム・オブ・ナビゲーション(航行の自由)作戦」を承認し、米イージス駆逐艦「ラッセン」を先月27日、南シナ海に派遣した。
さらに同時期、インド洋での海上共同訓練を終えた、米原子力空母「セオドア・ルーズベルト」(士官・兵員約3950人、艦載機85機)を南シナ海で航行させ、プレゼンスを示した。
今回のB52の飛行には、時期的な意図もありそうだ。
15、16日には、トルコのアンタルヤで、日米欧に新興国を加えたG20首脳会合が開催。18、19日にはフィリピンのマニラで、APEC首脳会議が開かれる。いずれも、習氏は出席予定で、中国による南シナ海での人工島造成問題が議題となる見通しなのだ。
米ホワイトハウスは12日、オバマ氏と安倍晋三首相がAPEC首脳会議に合わせて、マニラで19日に会談すると正式発表した。
世界が注視する国際会議を前に、オバマ氏は圧倒的な軍事力と、強固な「日米同盟」の存在を示すことで、習氏に「南シナ海の航行の自由を守る」という決意を示したといえそうだ。
安倍首相は13日朝、G20首脳会合に出席前、「(中国の)力による現状変更の動きに多くの国々が懸念を持っている。『航行の自由』『法の支配』を守り、国際社会と連携する。日本もしっかりと発信していく」と、官邸で記者団に語った。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「B52爆撃機は攻撃可能なポイントまで飛行している。中国に向けた最後通告で『次は実弾もあるぞ』というメッセージを発した」と分析し、続ける。
「米軍は作戦の第1段階でP8哨戒機『ポセイドン』を飛行させ、第2段階で艦艇を派遣した。戦略爆撃機の投入は第3段階に位置付けられる。B52はベトナム戦争で、沖縄・嘉手納基地から出撃し、ベトナム本土に絨毯爆撃を行った。中国に『同様の攻撃を加えることが可能だ』と警告したといえる。公表されていないが、F22ステルス戦闘機『ラプター』が帯同した可能性もある。米国は、中国が主張する南シナ海の領海・領空を認めないという強い姿勢を改めて打ち出した」
中国が強硬姿勢を貫いたことで、米国の怒りを買ったのか。
軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「B52爆撃機は軍用機で最大級だ。米軍はあえて目立つ機体を飛行させて中国のレーダーに捕捉させた。挑発以外の何者でもない」と指摘し、続ける。
「習政権は権威を維持するため、南シナ海に戦闘機を派遣するなど、対抗措置に踏み切らざるを得なくなった。本音では、軍事力で及ばない米国との対立を深刻化させたくないが、何もしないでいると国内世論の反発を招く。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国にも弱い部分を見せられない。習政権はギリギリの判断を迫られる」 夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2015年11月15日日曜日
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