2015年11月6日金曜日

VWの不正を明らかにしたのは日本の測定器

独自動車大手、フォルクスワーゲン(VW)は、ディーゼルエンジン搭載の車種で排ガス規制を不正に逃れていた問題に関する対策費が計300億ユーロ(約4兆円)以上に上ると社内で分析しているという。独メディアが10月24日に報じた。

VWは7~9月期にリコール(無料の回収・修理)費用を中心に66億8500万ユーロ(8900億円)を一時費用として計上した。その結果、同期の最終損益は17億3100万ユーロ(2300億円)の赤字となった。7~9月期は不正によるブランド毀損の販売面への影響はまだ軽微だったが、10月以降は予断を許さない。当然、VWの経営は一段と悪化する。問題発覚後、VWの株式時価総額は3分の1にあたる4兆円を一時、失った。

VWショックは日本企業を直撃した。東京株式市場で自動車関連銘柄は軒並み売られた。完成車メーカーではマツダやいすゞ自動車の株価が一時、急落した。マツダは欧米でディーゼル車を幅広く展開。いすゞはディーゼルトラックを販売している。マツダは「全てのガソリンおよびディーゼルエンジンを、各国の規制に厳格に適合させており、違法なソフトウェア、ディフィートデバイス(無効化機能)は一切使用しておりません」というリリースを発表した。

日本メーカーの中でもVWとの関係が深かったのはスズキだ。スズキはVWと資本提携していたが、8月に解消した。両社の対立のきっかけとなったのは、ディーゼルエンジンである。09年の提携当時、スズキはディーゼルエンジンを持っていなかった。VWからの技術提供を期待したが、VWは応じなかった。そこで、フィアット・クライスラー・オートモービルズから技術供与を受けたため、VWとの間の溝が深まった。もしVWからディーゼルエンジンの供給を受けていたら、スズキにも不正疑惑の目が向けられていた可能性もある。

スズキは保有していたVW株式をすべて売却。7~9月期に売却益367億円を特別利益として計上する。スズキが保有するVW株の時価は、3月末に比べて700億円目減りした。9月17日にVWが保有する株式(19.9%)を4600億円で買い戻した。完全に縁が切れ、VWショックを免れた。

取引先企業に影響広がる

VWの取引先企業では、日本ガイシ、フジクラ、IHIの株価下落が目立った。日本ガイシはディーゼル車に欠かせない排ガス浄化装置を主力とし、ポーランド工場で生産する粒子状物質低減装置(DPF)の最大顧客がVWグループだ。フジクラはワイヤーハーネス(自動車用の組み電線)の取引の半分がVWグループ向けだ。VWが大規模減産に踏み切った場合、一部工場の閉鎖も視野に入れているという。IHIは自動車用ターボ・チャージャー(排気ガスのエネルギーを利用する過給器)の大手でVW向け取引が3割を占める。

カーエレクトロニクス各社にも不安は広がっている。アルプス電気の子会社(40%強を出資)のアルパインにとってVWは、車載ディスプレイなどを供給する主要取引先の一つだ。VWや傘下の独アウディ向けの取引は全売り上げの1割を占める。

一方、ディーゼル車の退潮が進めば、トヨタ自動車日産自動車には追い風となる。トヨタはハイブリッド車(HV)で実績を築き、次世代エコカー燃料電池車FCV)でも先行している。日産は電気自動車(EV)をエコカーの中心に据えている。EV向け電池を扱うジーエス・ユアサ コーポレーションや日産系の自動車部品メーカー、カルソニックカンセイにも恩恵が及びそうだ。

不正を見抜いた計測器は日本製

もう1社、脚光を浴びている会社がある。VWの排ガス不正を見抜いた計測器をつくっている堀場製作所(堀場厚会長兼社長)の株価が上がった。VWのディーゼルエンジンの排ガス規制逃れが発覚するきっかけとなった米ウエストバージニア大工学部の調査に使われていた機材は、堀場製作所製の測定装置だった。実際に路上を走行させた排ガス検査では、車体を固定して行う試験場での結果と比べて窒素酸化物(NOx)が基準より最大で35倍多いことがわかった。

自動車の排ガス測定では、屋内で使用する据え置き型の測定装置が使用されてきた。VWの不正を契機に路上走行の排出値測定を求める機運が高まれば、堀場製作所の測定装置への需要は一気に高まる。同社は自動車排ガス測定装置の世界シェアの80%を占めている。       Business Journalより

日本のディーゼル車にも影響を与えている。日本のディーゼル車は不正なソフトウェアは使用していないと、宣伝をしている。

日本製の測定器が不正を見抜いた事は、喜ばしいことである。株価が上昇しているが、VWに製品を納入している企業に取ってみれば、死活問題である。

フォルクスワーゲンが経営危機に陥れば、中国が手をさしのべて買収するかもしれない。中国に取ってみれば、技術やブランド車を手に入れることが出来るだけに、中国が黙っているはずがないと思う。ヨーロッパの自動車市場も手にれることが出来るだけに、VW経営的に危機に陥れば中国が出てくるのではないかと思われる。

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