南シナ海で、国際法を無視して人工島を建設している中国を食い止めるため、米国がスプラトリー(中国名・南沙)諸島にイージス駆逐艦を派遣して、4日目に突入した。「航行の自由」を守る監視・哨戒活動は続いており、習近平国家主席率いる中国は守勢に回っているのが現状だ。実は現在、南シナ海と日本海には2隻の米原子力空母が展開している。中国はいつの間にか、米空母による「挟み撃ち」に遭っていたのだ。
オバマ米大統領が承認した「フリーダム・オブ・ナビゲーション(航行の自由)作戦」を受け、米海軍制服組トップのリチャードソン作戦部長と、中国海軍の呉勝利司令官が29日、テレビ会談を行った。作戦開始後、米中の軍高官による直接対話は初めて。
リチャードソン氏は、国際法に基づく「正当な行動だ」と説明。呉氏は、米イージス艦の航行に「重大な懸念」を表明し、「米側が危険な挑発行為を続ければ、海空で重大な緊迫する事態が発生し、衝突が起こる可能性がある」と語った。新華社が伝えた。ロイター通信によると、双方は不測の事態を避けるため、同じ海域で軍同士が接近した場合、あらかじめ定められた手続きに従って行動することを確認したという。
「対中弱腰」外交と批判されてきたオバマ氏だが、今回は毅然とした行動を取っている。中国が「領海」と強弁する人工島周辺12カイリ(約22キロ)にイージス駆逐艦「ラッセン」を派遣し、監視・哨戒活動を継続している。
これだけではない。
スプラトリー諸島から数百キロというボルネオ島の北方海域には、インド洋での海上共同訓練を終えたばかりの、米原子力空母「セオドア・ルーズベルト」と、海上自衛隊の護衛艦「ふゆづき」が共同訓練を行っている。湾岸戦争でも活躍したセオドア・ルーズベルトは、艦載機85機、士官・兵員約3950人という「動く前線基地」だ。
加えて、朝鮮半島の東方の日本海には、米海軍横須賀基地を母港とする世界最大級の原子力空母「ロナルド・レーガン」(艦載機90機、兵員約3200人、航空要員2480人)が展開し、米韓両海軍の合同訓練(26~29日)に参加した。東シナ海を突っ切れば、南シナ海にいつでも出られる位置で、朝鮮半島を挟んで北京にも近い。
空母2隻はそれぞれ、イージス巡洋艦やイージス駆逐艦、攻撃型原子力潜水艦などを引き連れ、現代世界で無敵といえる空母機動部隊を編成している。両空母の動きは、米海軍が南シナ海にイージス艦を派遣した時期とピタリ重なる。地理的にも、中国を南北から「挟み撃ち」にしている。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「レーガンとルーズベルトの動きは、米軍の周到な作戦計画に基づいたものだ。中国を威圧し、威嚇している」と解説する。
東アジアに2つの米空母機動部隊が同時展開するのは初めてではない。
1996年の台湾総統選挙の前、中国は台湾海峡に何発ものミサイルを撃ち込んだ。「独立の動きを見せるなら、台湾への攻撃も辞さない」という、共産党指導部による恫喝だった。
これに対し、当時のクリントン米大統領は2つの空母機動部隊を台湾近海に急派させた。「中国の勝手にはさせない」との覚悟を示し、中国を思いとどまらせた。
今回の動きと極めて似ているが、南シナ海はそれだけ重要なのだ。
まず、南シナ海は、世界の貿易船の4分の1が通過する「海上交通の要衝」である。特に、原油は1日平均約1400万バレル。世界の原油輸送量の約3分の1が通過する。
加えて、「軍事戦略上の要衝」でもある。
元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏は「SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を搭載した『晋級』戦略ミサイル原子力潜水艦の問題が大きい」といい、続けた。
「中国の潜水艦基地がある海南島は、南シナ海の水深3、4000メートルの深海域につながっている。中国はそこに晋級原潜を一度潜らせて、米軍の監視網から逃れた後、台湾とフィリピンの間にあるバシー海峡を抜けて、米大陸まで弾道ミサイルが届く海域に潜ませようとしている。これは、米国の安全保障に直結する重大な問題だ」
日本の一部メディアは「中国、米国艦船航行を非難」「米国の中立性に疑問」など、中国の代理人のような報道を続けている。
だが、共産党独裁の中国が南シナ海の支配に成功すれば、経済上も安全保障上も絶大なカードを握る。日本や米国、東南アジア諸国は致命的な打撃を被るのだ。
今後の焦点は、中国が軍事基地の建設を中止するか、米国がどこまで対処するかに移る。
前出の世良氏は「中国は建設をやめないだろう。中国は一時、建設を中断するかのようなことを言っていたが、結局、急ピッチで滑走路3本を完成させた」といい、「米国は今後、イージス駆逐艦に加え、イージス巡洋艦なども派遣する。しばらく、にらみ合いが続くはずだ」と語る。
菅沼氏も「米中両国とも後には引けないが、軍事力では米国が圧倒しており、中国に対抗する力はない。展開次第では、習氏の権力基盤に直結する。水面下で、オバマ氏や米政権への工作活動を始めるのではないか」と語っている。夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2015年11月1日日曜日
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