北朝鮮の金日成主席生誕105年の記念日(15日)を前に、中国当局が中朝国境に近い東北部で、放射性物質や化学物質の拡散を想定した緊急の24時間即応態勢を敷いていたことがわかった。6回目の核実験に踏み切る構えを見せる北朝鮮に対して米国が軍事圧力を強める中、朝鮮半島有事への強い危機感を中国側が抱いていた実態が浮かんだ。
北朝鮮と国境を接する遼寧省内の地方政府が14日付で、北朝鮮の核問題に関する「緊急通知」を関係部局に出していた。通知は、北朝鮮で放射性物質や化学物質による「突発事件」が発生した場合に「わが国の環境安全と公衆の健康に影響や損害が生じる可能性がある」と指摘。上級部門の指示により即日、地方政府全体が「緊急待命状態」に入ることが明示された。
通知は関連部局に対して当直者を配置し、責任者は24時間連絡が取れる状態を保つよう要請。指示があれば直ちに対応するよう求めた。17日時点でこの措置が解除されたかは不明だ。
北朝鮮は北東部の豊渓里(プンゲリ)で核実験の準備を終えているとみられるが、15日には実施に踏み切らなかった。今回の中国側の対応で、北朝鮮の動向をつかみきれていない現状もうかがえる。
これまで中国当局は北朝鮮が核実験を行った際、国境付近で放射性物質の監視測定を実施。ただ今回は化学物質の拡散も想定していることから、米国による化学関連施設への武力行使なども想定していた可能性がある。日米韓は北朝鮮が大量破壊兵器の化学兵器も保有しているとみている。
一方、中国国営中央テレビは17日までに、中国海軍の北海艦隊に所属する新型ミサイル駆逐艦「西寧」が黄海で数日間、対空戦や対潜水艦戦などを想定した初の実弾訓練を実施したと報じた。朝鮮半島有事をにらんだ動きとの見方もある。
■「北は米を試さない方がいい」ペンス副大統領
韓国を訪問中のペンス米副大統領は17日、黄教安(ファン・ギョアン)首相(大統領代行)と会談し、北朝鮮が核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射など新たな軍事挑発をした場合、強力な懲罰的措置を取っていくことで一致した。
会談後、黄氏と共同記者会見に臨んだペンス氏は、「(北朝鮮への)戦略的忍耐は終わった。全ての選択肢がテーブルの上にある」と北朝鮮への攻撃の可能性を示唆した。
核放棄に向けて動かない限り、北朝鮮との対話に応じないとしたオバマ前政権とトランプ政権の方針が違うことを明確にし、「北朝鮮は米大統領の決意や米軍の力を試したりしない方がいい」と警告した。また、「この2週間で(北朝鮮は)シリアへの(米国の軍事)行動を通し、新しい米大統領の阻止力を目の当たりにしただろう」とも語った。
ペンス氏は「韓国を百パーセント支える」と述べ、「核の傘」を含む拡大抑止力で韓国を守ることも約束。「核兵器による攻撃やあらゆる攻撃にも、圧倒的で効果的な方法で対処する」と断言した。また、北朝鮮の核問題解決に中国が影響力を行使するよう動かなければ「米国は同盟国とともに対処する」とも述べた。
一方、ペンス氏は米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国への配備を「同盟のために進める」とも表明し、配備に反対している中国の韓国への経済報復を批判した。
ペンス氏はこの日、北朝鮮との軍事境界線がある板門店や付近の非武装地帯(DMZ)を視察。ヘリコプターで板門店に近い国連軍拠点キャンプ・ボニファスに降りた後、前線の米韓両軍を激励した。
■米大統領補佐官「正恩体制は予測不能で残忍」
マクマスター米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は16日のABCテレビのインタビューで、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受け、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の体制を「予測不可能で、兄(金正男(ジョンナム)氏)や家族を殺害する残忍さを示してきた」と非難。同盟国の日韓両国、中国とともに、北朝鮮への圧力を強化する考えを強調した。
マクマスター氏は「トランプ米大統領は米国、同盟国、地域のパートナーが核兵器を持つ敵対政権の脅威の下に置かれることを認めない」と述べるとともに、北朝鮮の度重なる挑発行為により「問題は頂点に達している」と強調した。
ただ、マクマスター氏はトランプ氏が「あらゆる選択肢」の中から対抗措置を取る可能性があるとしながらも、「平和的に問題を解決するため、軍事的手段に至らない全ての行動を取るときだ」と述べた。 夕刊フジより
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