2017年4月24日月曜日

中国国産空母、力を誇示 近く進水

中国海軍の「悲願」といわれてきた初の国産空母が近く進水する。中国海軍の創設記念日の23日、遼寧省大連市の港では空母の巨体を水上に浮かべるため、ドックへの注水が始まった模様だ。今秋の中国共産党大会で2期目に入る習近平総書記(国家主席)にとっても、純国産の空母進水は「強軍建設」の成果としてアピールできそうだ。
海洋進出強める姿勢
艦載機が飛び立つスキーのジャンプ台のような甲板が肉眼でもはっきりみえる。ドック近くの遊歩道は市民の記念撮影スポットになっていた。地元市民たちは「次は原子力空母だ」「米国にはまだまだ及ばない」と空母談議をしていた。
米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」が朝鮮半島近海に接近し、米朝間で緊張が高まる。だが、中国国内では米空母より国産空母への関心が高い。
空母を自前で建造できる国は米露英仏など限られた大国であり、国内外へのアピール効果は絶大だ。中国軍は将来的に4隻以上の空母を保有する計画とされる。だが、米国のように、原子力を動力として艦載機の離陸を助ける「カタパルト」を備えた最新鋭の国産空母の建造を目指すかは明らかにしていない。

中国の空母には省の名前がつけられる。非公式に伝えられるのは「山東」だ。進水後、各種の装備が取り付けられ、2020年ごろに就役するとみられる。海軍が既に保有する空母「遼寧」(排水量6万7000トン)と同じ通常動力型で、排水量はやや小ぶりな5万トン級とされる。
中国国防省は「設計、建造で『遼寧』の経験を吸収した」と説明する。「遼寧」は旧ソ連時代の空母を改修した中古品だけに作戦能力は限定的とされ、中国側も「研究・訓練用」と位置付ける。今回は「遼寧」に比べてレーダーなどの装備が新型となり、艦載機を12機多い36機運用できるとの報道もある。ただ専門家の間では性能面で劇的な進歩はないとの見方が主流だ。
空母構想は「中国空母の父」と呼ばれる劉華清・元中央軍事委員会副主席が1987年に空母と原子力潜水艦を2本柱とする海軍装備の近代化を提案し本格化した。劉氏は回想録で「米ソと競争するためではなく対台湾闘争や南沙諸島の紛争解決、海洋権益を守るため」と記す。劉氏が夢見た空母建造は現実となった。
 
だが、中国軍の海洋戦略は大きく変容した。15年の国防白書は、劉氏が訴えた「近海防御」だけでなく、日本から台湾、南シナ海に及ぶ中国の防衛ライン「第1列島線」を超えて「遠海護衛」を加えた複合型の戦略に転換する方針を明記した。昨年末に「遼寧」が西太平洋で初の遠洋訓練を実施したことは象徴的な出来事だろう。
中国が力を誇示するほど周辺の懸念は深まる。米国は日本や韓国などとの同盟を深化させ、日
本もヘリコプターを搭載できる「空母型」の大型護衛艦を4隻配備し、対潜水艦戦や島しょ防衛の能力の向上を図っている。インドも国産空母の進水にこぎつけている。台湾は「空母キラー」と呼ばれる新鋭艦を開発、就役させるなど軍拡競争の兆しが出ている。

習氏の軍掌握後押し
 
純国産の空母進水は秋の党大会に向け、習氏が進める海空軍重視の改革を後押しする成果になりそうだ。
 
23日付の中国軍機関紙・解放軍報によると、習氏は21日に南部戦区の陸軍部隊を視察し、「陸軍の転換を貫徹しなければならない」と指示。海空軍との統合作戦能力の向上を訴えた。
習氏は昨年2月、陸軍中心だった中国軍の組織改革に踏み切った。「7大軍区」を「5大戦区」に改編するなど米国にならった陸海空3軍の統合運用を目指している。
 
習氏は先だって一昨年9月に中国軍の兵力を30万人削減し、200万人体制にする方針も打ち出していた。組織と兵員を大きくそがれる陸軍を中心に不満が高まり、昨年10月には退役軍人ら約1000人が国防省前で抗議デモを展開している。
習指導部は、軍制服組のトップを務めた郭伯雄、徐才厚の2人の元中央軍事委員会副主席を汚職で摘発し、軍幹部の腐敗に次々とメスを入れることで不満を封じ込めている。
習氏は21日の視察でも「郭伯雄、徐才厚が流した毒の影響を全面的に徹底して粛正せよ」と訓示した。軍に「毒の影響」が残っているとも受け取れる。
中国軍に現在39人いる現役上将(大将)のうち、習氏が2012年に軍トップに就任後、自ら任命した上将は23人にとどまる。軍を掌握したとの評価が定着しつつある習氏だが、200万人の組織を完全に掌握するのは容易ではない。
前回12年の党大会で投票権のある代表約2300人のうち、軍人は過去最多の約300人を占めた。秋の党大会で2期目の人事を固めたい習氏にとって、軍は1割以上の票を持つ基盤であり、空母など装備近代化は「果たすべき公約」でもある。 毎日新聞より
 
中国の空母建造を巡る主な動き
1987年   原子力潜水艦との2本柱で開発を決定
  
98年   香港の「民間企業」がウクライナ政府から空母「ワリャーグ」を購入
90年代  購入の企業がワリャーグを「洋上カジノ」にと言及
同後半   ミンスクなど退役空母を相次いで購入
2000年代  訓練用空母との見方が浮上
  11年   国防省が空母の研究・開発を進めていると初めて公表
  12年   空母が「遼寧」と命名され研究・訓練用として就役
  16年末  「遼寧」が初めて西太平洋で訓練
  17年1月 「遼寧」が台湾海峡を航行
  ?     初の国産空母進水
 ■ことば
 
船舶の進水
建造した艦船を水上に浮かばせる段階。この後に船内の残り部分を据え付けて完成・就役となる。中国は2011年7月、空母の研究開発を初めて公表し、翌月に試験航行。12年9月に就役と「遼寧」の名称を公表した。この時の式典には当時の胡錦濤国家主席や、軍の役職を持たない温家宝首相が出席していた。 毎日新聞より

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