北朝鮮をめぐり、緊張が高まっている。市場はじわりリスク回避に動き、円高が進んだが、従来の構図で片付けるのは早計だ。円はいつ「安全通貨」でなくなるか分からない危うさをはらんでいる。
◇1994年「北朝鮮危機」が語られる不気味
米中首脳会談が開かれた4月6日に米国がシリア攻撃に踏み切った後、次のターゲットとして注目されるのが北朝鮮だ。米国は、核開発を続け、ミサイルの発射実験を繰り返す北朝鮮に対して、友好国である中国が抑え役としての役割を果たすように強く働きかけた。シリア攻撃は、「中国が動かないなら、米国自らがやる」という強い意志を見せ付けたと解釈されている。
実際、米軍はシリア攻撃後、朝鮮半島近海に空母を派遣。トランプ米大統領が自身のツイッターで中国抜きでの武力行使も辞さないことを示唆するなど「北朝鮮包囲網」を築きつつある。
緊張感は日本にも広まっている。証券エコノミストが不気味がる。
「なぜ、いま1994年の北朝鮮危機がメディアや識者の間で取り上げられるのか」
93年に北朝鮮は、ノドンミサイルを日本海に向けて発射。核開発疑惑も浮上した。北朝鮮をこのまま放置するのは危ないと見た当時のクリントン米政権が、北朝鮮の核関連施設を秘密裏に空爆する計画を立案。しかし、協力を求められた日本が断り、北朝鮮の核開発凍結を定めた米朝合意が成立したため、空爆劇は未遂に終わった。これが北朝鮮危機である。
◇トランプ大統領は「ドルは強すぎる」
だが、北朝鮮はその後、この枠組みをほごにして、核開発を続行。トランプ大統領に「核開発を許さない」と言わしめるまでの脅威となっている。
94年の北朝鮮危機が識者の間で語られるのは、「あの時、空爆していれば、いま北朝鮮の危機に日本がさらされることはなかった」という悔恨の情からである。
トランプ米大統領が医療保険制度改革(オバマケア)の見直しを断念するなど政権公約がぶれ始め、政治リスクが顕在化すると同時に、日々緊張が高まる北朝鮮情勢に市場も反応している。
安全資産とされる円を買う動きとトランプ大統領による「ドルは強すぎる」という口先介入で4月13日、一時1ドル=108円台と5カ月ぶりの円高・ドル安水準となった。円高が嫌気され日経平均株価は一時1万8500円を割り込む年初来安値を更新。リスク回避の動きがじわりと進んでいる。
◇円・株・債券の「トリプル安」も
リスクオフ=円高という構図は従来のパターンだが、「今回は、円高が続くとは限らない」と指摘するのは、生保系シンクタンクの主任エコノミストだ。
「中東や欧州のテロならともかく、北朝鮮を巡る緊張が高まれば、日本側のリスクも同時に高まる。万が一、米国がシリア同様に北朝鮮を先制攻撃すれば、いやが応でも日本も危機に巻き込まれる。そうなれば、円買いではなく円売りだろう」
BNPパリバ証券の中空麻奈・投資調査本部長は、仮に米朝間の「有事」に発展すれば、「円も株も債券も売られるトリプル安が起きる」と予想する。
ただし、現時点で北朝鮮情勢について、「海外の投資家からの問い合わせはない」と言い、「本当に緊張する状態が起きないと、投資家は動きようがない」と語る。
市場関係者の中には、今回の攻撃が米中首脳会談中の単独行動だったことから、「北朝鮮問題を巡って中国に対し指導力を発揮するよう揺さぶりをかけただけ」と冷静に分析する向きは少なくない。米国のシリア攻撃に伴う世界的なリスクオフムードは、一過性という見方だ。円も日本株も、再び買うチャンスを投資家が虎視眈々(たんたん)と探っているという。
しかし、「日本は大丈夫。円は安全資産のままであり続ける」と楽観するのはどうか。地政学リスクという日常を超えたリスクに対しては、平時の理屈が通じないものだ。そうした視点でいま一度、リスクを総点検する局面にある。 (週刊エコノミスト4月25日号から)
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年4月20日木曜日
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