2016年4月8日金曜日

長時間労働規制

安倍晋三首相は長時間労働是正のため、残業規制の見直しを指示した。労働基準法を改正し、残業時間の上限を定め、罰則を設けることも検討するという。
 
労基法は労働時間を1日8時間、週40時間までと定めているが、「三六協定」と呼ばれる労使協定を結べば、法定労働時間を超える残業が可能になる。

特別な事情がある場合、延長もできるため、残業時間は事実上青天井となり、長時間労働を助長すると批判されてきた。

首相が三六協定を問題視するのはうなずける。欧州連合(EU)のように、労働時間の厳格な上限や1日に連続11時間の休息といった明確な規制を設けるべきだ。

しかし、今回の規制強化の方針には唐突感が否めない。安倍政権は労働規制を「岩盤」とみなし、その打破を成長戦略の目玉に位置付けてきたからだ。

典型が「高度プロフェッショナル制度」で、これを含む労基法改正案が国会に提出されている。

専門職を対象に、時間ではなく成果で賃金が支払われるようにする。「残業代ゼロ法案」と言われるゆえんだ。

高度プロフェッショナルの対象者は、労基法の労働時間、休日、割増賃金などの規定から除外される。三六協定も関係がない。

仮に、労働時間の上限を厳格化し、三六協定の乱用を防ぐ方向で労基法が見直されても、効果が及ばない恐れがある。

これでは、長時間労働是正の原則を確立する前に、例外をつくるようなものではないか。

制度設計の過程では、過重労働の歯止めとして、EU並みの労働時間規制を求める意見もあったが、経営側の反発で不十分な代替措置の導入にとどまった。

収入要件が平均給与額の3倍を上回る水準のため、対象者はわずかだが、これを突破口に将来拡大される不安は消えない。

長時間労働は、仕事と家庭生活の両立を妨げるばかりでなく、何より労働者の健康を脅かす。

首相が本気で是正に取り組むのであれば、規制の強化を先行させるべきだ。高度プロフェッショナル制度の導入は見送り、議論を仕切り直す必要がある。

先に首相は、同じ仕事であれば同じ賃金を払う「同一労働同一賃金」の法制化にも意欲を示したが、具体像は見えてこない。

夏の参院選を意識して、労働側に歩み寄るポーズではないか。空手形に終わるのは許されない。

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