政府・与党は、所得の高い一部の労働者を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度」を柱とする労働基準法改正案の今国会成立を断念する方針を固めた。民進、共産両党や連合などが改正案に強く反発する中、夏の参院選前に審議を強行する必要はないと判断した。
高度プロフェッショナル制度の対象は、金融ディーラーなど専門的な仕事に就く年収1075万円以上の労働者で、働いた時間に関係なく成果で賃金が決まる。改正案はまた、実労働ではなく「みなし労働時間」に基づいて賃金を支払う裁量労働制を、企画立案も手がける営業職などに拡大する。一方、月60時間を超える残業には50%以上の割増賃金を支払う規定を中小企業にも適用し、長時間労働を抑制する。
それでも、野党は「『残業代ゼロ』で長時間労働を助長する」などと改正案を批判。労働時間延長の上限規制や、始業後24時間を経過するまでに一定の休憩を企業に義務付ける「インターバル規制」の導入を盛り込んだ対案を国会に提出し、全面的に争う構えをみせている。
政府は昨年の通常国会でも、安全保障関連法の成立を最優先し、改正案を衆院で継続審議扱いにした。安倍晋三首相は今年1月の施政方針演説で「労働時間に画一的な枠をはめる従来の労働制度、社会の発想を大きく改めなければならない」と訴え、今国会での成立に意欲を示していた。
しかし、政府・与党は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の承認案と、農業対策を盛り込んだ関連法案の今国会成立を見送ったため、6月1日までの会期を延長する必要はなくなった。与党内では「改正案を強引に審議すれば参院選にマイナスだ」という声が大勢になっている。
安倍政権は「多様な働き方が可能な社会への変革」を掲げているが、政策の中身よりも政治判断で法改正を先送りする状況が続いている。
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