2016年4月3日日曜日

中国経済失速で各地でデモ発生

中国で労働者によるデモやストライキが深刻化している。今月5~16日に北京で開かれた全国人民代表大会(全人代=国会)の期間中、黒竜江省で発生した数万人規模ともされる炭鉱労働者の賃金未払いへの抗議活動は、省幹部や中国共産党を批判するなど「まれにみる政治的に大胆なデモ」(国際紙インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ)に発展した。経済減速で大規模なリストラなどの構造改革が迫られる中、“労働者たちの反乱”に習近平政権は神経をとがらせている。

■省長の発言に猛反発

「陸昊(りくこう)(黒竜江省長)は嘘つきだ」「共産党は金を返せ」

米国に本部を置く中国語ニュースサイト「博訊」などによると、中露国境に位置する黒竜江省双鴨山(そうおうざん)市で9日から数日間、国有企業「双鴨山鉱業集団」の炭鉱労働者や家族らが街頭で抗議活動を展開した。

双鴨山鉱業集団では2014年以降、賃金の一部未払いや遅延が発生。6日に全人代で陸昊省長(48)が「賃金の未払いはまったくない」と発言したことが、労働者の怒りに火を付けたとされる。

あるデモ参加者は英紙フィナンシャル・タイムズに「陸昊は全人代で、黒竜江省の8万人の炭鉱労働者に対する賃金の未払いはないといったが、われわれは4カ月間も賃金を受け取ってない」と語った。地元当局はデモに対して数千人の警官を派遣、多数の労働者が拘束されたもようだ。

事態を重く見た陸省長は12日、賃金未払いについて「誤った情報を伝えられていた」と前言を撤回し、未払い分の早急な支払いを約束。15日までに少なくとも1月分の給与が支払われたという。

■政治的ジレンマ直面

香港を拠点に中国本土の労働環境を監視している非営利団体「中国労工通訊」によると、2015年に発生した労働者のデモやストライキは2774件で、前年(1379件)に比べ倍増した。

ここ数カ月は特に増加傾向が顕著で、昨年12月1日から今年2月8日までに発生したストライキなどは1050件に上り、このうち9割が賃金の未払いに関連したものだったという。こうした労働争議は工場労働者が多い広東省をはじめ、河南省や山東省、河北省などで集中的に発生している。

これらのデモのほとんどが私営企業の労働者によるものだったのに対して、黒竜江省のデモは国有企業の労働者が立ち上がったという点でも異質だ。

インターナショナル・ニューヨーク・タイムズは、「習政権が国有企業の大規模なダウンサイジングを考慮しているのと時を同じくして労働者のデモがわき起こった」と指摘。資本主義を取り入れつつも社会主義者として「労働者の守護者」を標(ひょう)榜(ぼう)してきた共産党が、「政治的なジレンマ」に直面していると指摘している。

■「ゾンビ企業」にメス

中国の経済成長を支えてきた石炭産業は現在、急激な投資増による生産能力過剰と石炭価格の低下により危機を迎えている。

中国の経済紙「華夏時報」(電子版)は昨年12月、炭坑が集中する山西省で県レベルの自治体のうち8割以上で炭坑労働者への未払いが発生していると報道した。

一方で、不採算事業を整理したり、他業種に転換したりする「退場」の枠組みが整備されていないことが、赤字を垂れ流しながら生きながらえる「ゾンビ企業」の増殖につながってきた。

こうした生産過剰の国有企業統廃合に向けて、習政権は石炭と鉄鋼業界だけで180万人のリストラを断行する方針だ。

もっとも中国の国有企業の大規模なリストラは今回が初めてではなく、1990年代後半から2000年代前半にかけて多くの民営化が進められた。ただ当時は高度成長期のまっただ中にあり、余剰労働力を吸収するだけの新たな産業と雇用が生まれていた。

さらに現在はインターネットやソーシャルメディアの普及により労働者の権利意識が覚醒し、抗議活動は増加の一途にある。労働者の権利を求める活動と、取り締まりを強める当局とのせめぎ合いが今後は激しさを増しそうだ。 夕刊フジより

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