2016年4月8日金曜日

アメリカの衰退と日本の核武装

トランプが左派も保守も吹き飛ばしてしまった


米大統領選の共和党有力候補であるドナルド・トランプ氏がニューヨーク・タイムズのインタビューで日本と韓国の核武装を容認した。トランプ大統領が誕生するかどうかにかかわらず、核武装論はいまや日本が避けて通れない重要テーマになった。だが、日本で冷静に議論できるだろうか。

日本の安全保障をめぐる議論は、実は多くが「いざとなったら米国が日本を守ってくれる」というのが前提になっていた。リベラル左派は「米国が助けに来るのだから、日本は個別的自衛権で十分」といい、保守派は「米国の信頼をつなぎとめるためにも、集団的自衛権が必要」と主張してきた。

例外の1つは日本共産党だ。共産党は日米安保条約破棄の立場に立って「当面は自衛隊で守り、やがては自衛隊もいらない」と主張している。こう言うと「安保破棄も自衛隊廃止もいますぐにではない」という反論が返ってくるが、それは虎が猫の皮をかぶっているだけだ。国民を目眩まししているのである。

共産党の「米国に頼らない」という主張は、実は一部の右派とも共通している。違いは共産党が最終的に自衛隊不要論であるのに対して、一部の極右は日本の核武装を唱えている点だ。
上記の整理にしたがって言えば、私自身は保守派の立場に立つ。そのうえで自衛隊不要論は論外として、核武装論に対しては「日本の核武装に一番反対しているのは米国だ」という理屈を説明してきた。

たとえば、2015年7月31日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/44454)では「これ(日本の核武装)こそ米国が絶対に容認しない。米国は自分の手のひらに乗っている限りにおいて、日本の自衛隊を認めている。日本が核武装したら、日本が独り歩きしかねない。そんな事態は米国が全力で阻止するに違いないからだ」と書いている。

ところが、今回のトランプ発言はリベラル左派はもちろん保守派も吹き飛ばして、一挙に極右に味方するかのような内容になっている。

「あなたは日本の核武装に反対するか」という記者の質問に対して、トランプ氏はこう語り出す。
「私たち(米国)がもう何もできない、という時点がいつか来るだろう。いまは基本的に米国が日本を守っている。北朝鮮が何かをしようとすれば、日本から電話がかかってきて『どうにかしてくれ』と言うわけだ。だが、いつか私たちがどうにもできない時点が来る」

「私にとって大問題は核兵器とその拡散だ。米国にはもうカネがない。私たちが取り引きした時(訳注・日米安保条約を結んだ時)は、米国は豊かな国だった。強力な軍隊もあった。だが、いまや豊かな国ではない。核兵器だってお粗末な状態だ。本当に動くかどうかさえ分からない。つまり米国はもうかつてと同じ国ではないのだ」

記者は追い打ちをかける。

「日本や韓国には『もしも米国が頼りにならないなら、自前の核抑止力を持って北朝鮮に我々の抑止力を確信させてやる必要がある』という議論がある。これは合理的な考え方か。あなたは日本や韓国がいつか自前の核兵器を持つと思うか」

トランプ氏の返事はこうだ。

「どこかの時点で、我々はその問題を語らなければならない。もし米国がいまのような弱体化を続けるなら、日本や韓国は米国と相談しようがしまいが、自前の核抑止力を持ちたいと思うだろう。彼らは、米国と一緒にやっていくことで十分に安全と感じる、とは思えないからだ。

日本や韓国を米国がどう支援してきたかといえば、非常に強力だったとも言えない。もう米国が非常に強力で力強く、豊かな国でないとするなら、日本と韓国の核武装問題は米国と相談することなく、彼らの国で議論されるようになるだろう」

さらに記者が「それに反対しないのか」と聞くと、こう続ける。

「米国はもう世界の警察官ではない。そして不幸にも世界には核兵器がある。パキスタンも北朝鮮も持っている。北朝鮮が持っているなら、日本も持つ。そのほうが当然、いい状態だ。私は日本のファンだ。私たちが攻撃されても、日本が何かをしてくれるわけではない。だが日本が攻撃されたら、米国は全力で救援に駆けつける。これはまったく一方的な取り決めだ。これこそが真の問題なのだ」(一部要約)

これで見る限り、トランプ氏には米国があれこれと日本に指図する意図はなく、日本と日本人自身の問題とみているのだ。つまり、ボールは日本の側にある。

私が冒頭で「日本の核武装論は避けて通れないテーマになる」と書いたのは、トランプ氏と同じ理由である。米国の力が衰えて世界の警察官ではなくなるのなら、日本人が「日本だけはなんとしても米国が核兵器で守るはず」と勝手に思い込んでいるのは危険だ。もしかしたら「米国が日本を見捨てる可能性もある」という前提で戦略を考えたほうがいい、という話になる。だから避けて通れない。

オバマ大統領はトランプ発言に対して猛烈に反発している。大統領は「そんな発言をする者は外交や核政策、朝鮮半島や世界情勢を理解していない」「これ(米国と日韓の同盟関係=核の傘)によってこの地域で核開発競争が起きるのを防いできた」(http://www.asahi.com/articles/ASJ42424VJ42UHBI00R.html)と批判した。これが東アジアの安全保障に関わる専門家の共通認識でもある。

米国の思惑に沿って言えば、核の傘を提供することによって東アジアの平和と安定を保つ一方、先のコラムで触れたように、日本の独り歩きを防ぐ意味もある。75年前に日本は米国と戦争をした国であることを米国は忘れていない。トランプ氏が見通したように、もしも「いつかの時点で」米国が日本や韓国から撤退したら、どうなるか。

韓国は当然、自前の核保有を真剣に考えるだろう。実際、すでに議論は起きている。韓国が核を持てば、日本も検討せざるを得なくなる。中国と北朝鮮、ロシア、それに韓国の核を前にして、日本だけが通常兵器に頼るわけにはいかない。領土問題はもちろん、通商交渉でも核保有国の強腰に脅される状態が日常化しかねない。

つまりオバマ大統領が言うように、米国の撤退によって日本と韓国、北朝鮮、中国、ロシアそれに遠くインドの間で核開発競争が激化する。そんな事態を避けるためにも、米国は日本と韓国に核の傘を提供してきた。それが米国の安全保障利益にも合致していた。

幸いというべきか、飛ぶ鳥を落とす勢いだったトランプ氏はここへきてウィスコンシン州の予備選で大敗し、勢いに陰りが見えてきた。だからと言って、トランプが大統領にさえならなければ、日本の核武装論も消えてなくなるかといえば、そうではないだろう。長期的に見て、米国の弱体化はおそらく止まらないからだ。

以上でお分かりのように、トランプ氏は日本に核武装を勧めるというより「米国がもう日本を守ってやれないほど弱体化が進んでいくなら、やがて日本人自身が核武装を検討し始めるだろう」と語っている。議論の出発点である米国の弱体化が避けられないなら、自分は日本の核武装を容認するし、そのほうがいいという論理構成になっている。

見て見ぬふりをしてきたツケ

だからこそ日本は米国の弱体化を見越して、米国を日本の防衛につなぎ止めることが重要になる。安倍晋三政権が昨年、安保関連法を見直して集団的自衛権の一部容認に踏み切ったのも、本質的には、そういう戦略に基づく判断である。「日本防衛が米国の負担になる」というトランプ氏の議論に先手を打った意味もある。

米国のつなぎ止めに失敗して日本からの撤退を許し、ひいては核の傘の提供中止に至れば、そのときにはトランプ氏が予想するように、まさに日本の核武装が選択肢に上ってしまう。日本にとっては自前の核武装を防ぐためにも、米国との同盟関係を強化する必要がある。

それにつけても、日本の野党はいったい何を勘違いしているのか。野党はトランプ発言を暴言と思っているだろうが、いつまでも米国が無条件に守ってくれるのを前提に個別的自衛権を唱えているようでは、トランプ氏から笑われるだけだ。トランプ氏は「米国はそんなにお人好しではないよ」と苦笑いするだろう。

米国が撤退すれば、その分、日本は軍事力を強化せざるを得ず、やがては核保有論に行き着く。トランプ氏は日本が見て見ぬふりをしてきた、当たり前の議論を大統領選とニューヨーク・タイムズという舞台で鮮明に示してみせた。次は日本が議論を深める番だ。とりわけマスコミの役割は重要である。 現代ビジネスより

アメリカは衰退傾向は止められないので、日本や韓国を守る事は出来ないという。日米同盟が崩壊すれば、日本は軍隊を持ち核武装する道しか日本の国を守る事は出来ない。アメリカ任せではなく日本の問題として、考えなければならない時期に来ているのではないでしょうか。

前にも書いたが、アメリカ人が日本の為に血を流すとは考えられないと書いた。これからのアメリカは内向きの国になるのではないかと思われる。

これから、世界を指導するのは中国になるのではないかと思われる。中国に対抗する為には、強力な軍隊と核兵器は必要である。中国は沖縄を自国の国に編入する事を目指しているだけに、軍隊を持ち対抗しなければ、中国はやりたい放題する。

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