南シナ海を航行する米海軍艦艇に対する中国海軍艦艇の追尾行動が注目されている。3月にはジョン・C・ステニス空母打撃群の周辺に多数の艦艇が集結。昨年5月には沿岸海域戦闘艦(LCS)を中国海軍のフリゲート艦が目視できる距離で追尾した。挑発的とも取れるこうした行動の背景には、中国海軍が近年、周辺海域での演習を強化し、その能力に自信を深めていることがありそうだ。(台北 田中靖人)
「実戦」想定」
人民解放軍の機関紙、解放軍報は昨年12月18日、南シナ海の「某海域」で16日に実施された対抗演習の模様を報じた。演習には、北海・東海・南海の3艦隊から艦艇と航空機が参加。同紙記者は「中国版イージス」と呼ばれる052C(NATOコード=旅洋II)型駆逐艦「蘭州」で演習の様子を観戦した。
記事によると、演習は「実戦化」を念頭に置いたもので、数千平方キロという演習海域が指定されている他はシナリオはなく、各指揮官が自らの判断で行動する。蘭州を旗艦とする赤軍(中国軍)側は、青軍(仮想敵)のジャミング(通信妨害)で早期警戒機の情報が入らず、艦載レーダーのみで相手部隊を探す。青軍はこのレーダー信号を探知し、航空機からの対艦巡航ミサイル攻撃などで蘭州に動力停止に至る損害を与えたと判定された。赤軍の指揮官は別の艦に乗り換えざるを得なかった。一方、赤軍も直ちに反撃し、青軍の駆逐艦1隻を大破、フリゲート艦1隻を撃沈したと判定され、“戦果”は五分五分だったとしている。赤軍は演習の過程で、「第三国の商船」を青軍の艦艇と見誤り、対艦ミサイルで攻撃する失敗もしている。
台湾海軍の予備役大佐はネット上で、この演習が「機動7号」だった可能性を指摘。事実であれば、「機動」と称される演習としては、初めて南シナ海で実施されたことになる。ただ、中国国営新華社通信(電子版)は昨年11月20日にも、3艦隊から派遣された艦艇や航空機が対潜戦(ASW)の対抗演習を南シナ海で連日、実施していると報じている。7月には南海艦隊とみられる部隊が、「100隻以上」の艦艇と数十機の航空機などによる対抗演習を行うなど、南シナ海での対抗演習が強化されているもようだ。
演習も高頻度に?
台湾海軍が発行する学術誌「海軍学術雙月刊」の今年2月の論文によると、「機動」は、北海・東海・南海の3艦隊がそれぞれの担当海域を越えて行う実動対抗演習の呼称で、「機動1号」は1991年に実施された。1号から5号(2013年)までは平均で4・5年に1度の間隔で行われ、実際に担当海域を越えた統合対抗演習の形式になったのは、4号(05年)以降だという。
注目すべきは、5号の後の6号が、1年後の14年12月に実施されている点だ。5号も6号も、参加する鑑定は第1列島線を「突破」し、西太平洋で行われた。中国国防部は「機動6号」について、中国海軍の歴史上、参加兵力が最多で、難度も最高、「戦場」の環境も最も実際的だったと強調した。論文は、習近平国家主席(中央軍事委員会主席)が掲げる「強軍(強い軍隊)」の方針を貫徹するものだとしている。15年末の演習が「機動7号」ではないかとする見方も、「機動」が5号以降、毎年の実施へと変更されたのではないかという推測に基づいている。
海空協同作戦か
論文は14年末の機動6号について詳細な分析を行っている。この演習では、仮想的の青軍の役割を担ったのは、北海艦隊の駆逐艦2隻、フリゲート艦2隻と補給艦。加えて、H(轟)6G爆撃機2機、Y(運)8J海上警戒機2機、Y9電子偵察機1機が上空から支援した。中国軍役の赤軍は、東海・南海の2艦隊の混成部隊で、中国版イージスを含む駆逐艦3隻とフリゲート艦4隻、補給艦1隻と情報収集艦「北極星」で構成した。ちなみに、前年の機動5号でも北海艦隊が青軍、東・南艦隊が赤軍を担当している。
論文は、青軍に200キロという長距離防空能力を持つ中国版イージスが配置されておらず、戦闘力に差がある点に注目。一方で、青軍には航空機5機編隊が参加しており、「海空協同作戦」の検証だった可能性を指摘している。Y9は長距離の海空域のレーダー・通信情報探知能力があり、Y8Jで洋上および海中の目標を探知、作戦行動半径約1800キロのH6Gが対艦ミサイルYG(鷹撃)12を登載すれば、日本の沖ノ鳥島周辺海域までの敵を攻撃できるため、この5機編隊は「全てがそろった戦術単位」だとしている。
また論文は、Y9とY8Jが、対艦弾道ミサイルDF(東風)21Dの終末段階での誘導を目的としている可能性にも言及している。
空母戦闘群をいまだ編成できず、防空や警戒監視の能力不足が指摘されてきた中国海軍だが、この論文の指摘が正しければ、その不備を長距離航行が可能な航空機で補おうとしていることになる。
中国軍の「弱点」を検証した米ランド研究所の15年の報告書「中国の不完全な軍事変革」は、中国軍の訓練は往々にして能力の「高さ」を誇示するものが多く実戦的ではないと指摘している。だが、解放軍報が15年末の南シナ海での演習の「失敗」を報道していることからみれば、シナリオ通りの楽な演習をこなしているとはいえなさそうだ。「ハード(装備)は近代化されているが、ソフト(練度)はまだまだ」という中国海軍への偏見をいつまで持ち続けられるのか、予断は許されない。
産経新聞より
中国の海軍力の増強は目に見張るものがある。アメリカの海軍も中国の海軍力に負けるのではないかと思う。侮れない中国の海軍力である。アメリカの空母打撃団に挑発できるだけの自信を中国が持っているのではないかと思う。
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2016年4月10日日曜日
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