2017年12月31日日曜日

慰安婦像、交流ぎくしゃく 韓国訪問、市長や高校生が中止

慰安婦問題の最終的な解決をうたった日韓合意の経緯を検証していた韓国の検証チームが27日、結果を公表した。焦点のひとつが「少女像」。増え続ける像をめぐり、日韓の自治体間交流にもすれ違いが生じているが、活発な交流を続ける自治体もある。

「日韓合意の誠実な履行を期待する」。佐賀県唐津市は11月初旬、韓国南部にある姉妹都市・麗水(ヨス)市の朱哲鉉(チュチョルヒョン)市長宛てにこう記した親書を渡した。

麗水市に像が建てられたのは今春。唐津市の峰達郎市長や市議らが交流35周年の式典で9月に訪れた際は、像について言及しなかった。その後、交流断絶を求めるメールや文書などが唐津市に届くように。10月に麗水市に2体目が建てられ、親書を出した。峰市長は「お互いの意見を率直に言い合えるのが本来のあり方」と説明。麗水市から返書は届いていないという。

福岡市も、姉妹都市の釜山市にある日本総領事館前に像が設置された昨年12月から、職員や市民の交流が危険にさらされる恐れがあるとして、釜山市に繰り返し懸念を伝えてきた。高島宗一郎市長は「長い交流の歴史があるが、領事館前に像があることが日韓関係を冷え切らせている。耳の痛いこともしっかり伝えることが大切な関係だと思う」。

交流を見直した自治体もある。

秋田県青少年交流センターは、ソウルの南の平沢(ピョンテク)市と2011年から毎夏、高校生を互いに送ってきた。しかし今年、派遣を見送った。3月に派遣先の平沢市青少年文化センター前に像が設置され、「教育上適切でない」と判断した。平沢市からの派遣もなかった。来年度以降の再開に向けて秋田側から協議を申し入れても、返事はないという。

ソウルと平沢市の中間にある水原(スウォン)市。福井市は昨年10月、友好都市15周年を記念して予定していた東村新一市長の訪問を取りやめた。水原市が姉妹都市提携を結ぶ独フライブルク市に、像の設置を勧めていたことが分かったためだ。

東村市長が「信頼関係に影響を与える」と遺憾の意を伝える書簡を送ると、水原市の廉泰英(ヨムテヨン)市長から「日本との関係を悪化させたり侮辱したりするつもりはない」という趣旨の返信があった。

■関係維持努める例も

一方で、関係維持に努める自治体もある。

神戸市は、ソウルの西にある姉妹都市の仁川(インチョン)市内に民間団体が像を建てたことを把握しているが、静観する。神戸市国際課の担当者は「慰安婦像問題は日韓の政府間で解決されるべき問題だ。事態の進展を注視している」と語る。

釜山市と姉妹都市を結んで40年あまりの山口県下関市も「深い歴史とご縁がある」と見守る姿勢だ。

下関は江戸時代に朝鮮から派遣されていた外交使節団「朝鮮通信使」が本州で最初に立ち寄る地。現在も在日コリアンが多く暮らす。前田晋太郎市長は「個人的には像設置などの動きは残念」としつつ、「文化、経済的な交流はしっかりしていきたい」と話す。

■韓国自治体は軒並み積極的

韓国の市道知事協議会によれば、韓国自治体は日本の計215自治体と姉妹・友好関係にある。19日現在、韓国には確認されただけで少女像が88体ある。韓国自治体は軒並み、日韓交流に積極的だ。

唐津市から懸念の親書が届いたことを受け、麗水市の朱市長は11月、「35年間の交流協力が揺らがないことを望む」とするコメントを出した。福岡市との交流について、釜山市の関係者は「毎年の恒例行事は問題なく行われている」。平沢市では、7月に予定されていた松山市との青少年交流が中止されたが、9月に平沢市で開かれたマラソン大会には松山市民が参加。平沢市関係者は「現在は全く問題がない」と語った。

福井市などと友好関係がある水原市の担当者も「活発に交流している」と語る。

朝日新聞より

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