2017年12月24日日曜日

離島多い日本で重要な「統合火力誘導」

陸上自衛隊の教育機関の1つである富士学校(静岡県)に新しい施設が完成した。「統合火力教育訓練センター」だ。10月12日に落成式を迎え、同月23日から教育が始まった。今月22日に第1期生22人の教育が修了する。

センターでは、野戦特科(大砲)部隊の中に編成されている火力誘導班の隊員たちが学ぶ。これまでもあった部隊だが、島嶼(とうしょ)防衛に欠かせない任務を担うことになり、より強化する必要に迫られている。

島嶼防衛における火力誘導班の役割は、味方の主力部隊が到着する前に、島内の敵の戦力をたたきのめすことにある。

例えば、ある無人島に敵が上陸してきた場合、まず火力誘導班を送り込む。敵が観測できる位置に拠点を築くと、規模や場所などを報告する。ここまでは、これまでの任務通り。異なるのは、その敵情報を陸自だけでなく、海上自衛隊や航空自衛隊とも共有する点だ。

陸自が大砲を撃ち込むだけでなく、洋上から護衛艦が艦砲射撃を行い、上空から戦闘機が爆弾を投下する。LJDAM(精密レーザー誘導爆弾)の場合、命中するまで誘導し、確実に敵をしとめる。

陸海空自衛隊が持つ武器を、1つの目標まで誘導することを「統合火力誘導」と呼ぶ。

手本としたのが米海兵隊に編成された「ANGLICo」(アングリコ)と呼ばれる部隊だ。正式名は、Air-Naval Gunfire Liaison Company。和訳すると航空艦砲連絡中隊。このような部隊を陸自内につくることが最終目標だ。

国内では、実際に統合火力誘導射撃訓練を行える場所はないため、学ぶ場をつくった。施設の目玉は、1セット1億9000万円で、今年7月に納入された「統合火力誘導シミュレーター」だ。

大型スクリーンの前には、目標評定機(FCSS)模擬装置、模擬レーザー照射器などが置かれている。隊員たちは装置の前に着くと、スクリーン上に敵を探す。戦車や装甲車の形をした敵が確認できた。すぐに目標を分析する評定作業を行う。その情報をもとに、指揮官は、敵の殲滅(せんめつ)を決めた。

スクリーンに映し出された敵の周辺では、次々に火柱があがる。教場の中に爆発音も響き渡る。なかなか本格的だ。間断なく数十発もの砲弾や爆弾が撃ち込まれると、画面は煙で覆われる。

煙が晴れると、破壊された戦車や装甲車が映し出された。攻撃は成功した。

もし、1回の攻撃で効果がなければ、さらに修正したデータを送り、再び攻撃を誘導する。

米軍はイラクやアフガニスタンなどで、統合火力誘導により戦果を上げている。多くの離島を抱える日本だからこそ、統合火力誘導による攻撃は習得したい技である。
夕刊フジより

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