2017年12月31日日曜日

「新日英同盟」軍事的急接近の背後にあるものとは 

第1次大戦前の「日英同盟」の復活か

河野外相と小野寺防衛相が今月14日、ロンドンを訪れてジョンソン英外相、ウィリアムソン英国防相と2+2会談を行い、防衛面で関係を強化することで合意した。来年には陸海軍の日英合同演習が予定され、世界一の性能になるとされる空対空ミサイルの共同開発計画も進行中だ。この海洋国家同士の軍事的急接近を、20世紀初頭の日英同盟にたとえる報道も見られる。

◆日英は防衛上の歴史とニーズを共有する島国
 

会談を通じて、来年、英国海軍のフリゲート艦HMSサザーランドとHMSアーガイルが訪日し、海上自衛隊と合同演習を行うことが決まった。日英海軍が合同演習を行うのは、日英同盟が解消された第1次世界大戦後初。英陸軍部隊も来年来日し、陸上自衛隊と歴史上初めての演習を行う予定だ。『アジア・タイムズ』は、「日本と英国は第2次大戦では敵同士だった。しかし、過去は過去だ。この2つの島国は来年、海軍合同演習を計画している」という書き出しで、2+2会談の成果を報じている。

日英両国は防衛装備品の技術協力にも力を入れ始めており、特に英国製ミーティアミサイルに日本製の電子部品を組み込んだ新型空対空ミサイルの共同開発は、完成すれば世界一の性能となると期待されている。2+2では、4大臣が試作研究・発射試験を含むプロジェクトの次の段階への進展への期待を表明した。

英シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサエティのジョン・ヘミングス氏(アジア研究所ディレクター)は、英紙テレグラフに寄せた記事で「両国は海軍の歴史を共有しているだけでなく、両海軍は共通した未来に向かっている」と指摘。「英国と日本は似た防衛上のニーズを抱えている。アメリカと密接な防衛上の結びつきがある島国であり、防衛予算は概ね同規模で、特に海軍、空軍の装備では非常にニーズが似通っている」という元在日英国大使館員のコメントを引用している。

◆アメリカ偏重解消が狙いか
日英の急接近の裏には、中国の脅威と朝鮮半島情勢の緊迫、英国のEU離脱といった世界情勢の変化があるというのが、識者の共通した見方だ。英オックスフォード大学の日本専門家、イアン・ニアリー教授は、日本のトランプ政権への不信感も影響していると指摘。

「日本では、現アメリカ政権、そしてもしかして将来の政権も、アジア太平洋地域を重視しないのではないかという懸念が広がっている」と、中国国営新華社通信のインタビューに答えている。

有事の際にアメリカがどこまで日本を守ってくれるのかという疑念が、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ政権の誕生で強まっているのも確かだ。米軍事アナリスト、エリック・ウェルトハイム氏は、そのため「日本は実際、可能な限り、あらゆる所で友人を作ろうとしている」と指摘する(アジア・タイムズ)。米国偏重のリスクを回避するため、なるべく多くの国と同盟関係を築き、中国に対抗していこうというわけだ。ニアリー教授は「これは世界情勢の変化に対応した動きだ。日本はオーストラリア、インドとの関係を強化した。そして今度はフランスとイギリスだ」と新華社に語っている。

EU離脱を控えた英国としては、中国の海洋進出が進む中、自国経済を支えるアジア太平洋地域のシーレーンの防衛は死活問題だ。ヘミングス氏は、NATOによる東ヨーロッパ防衛でドイツの負担を増やし、余剰戦力をシーレーン防衛に回すのが、「ポスト・ブレクジット」のイギリスの戦略と見ているようだ。「東ヨーロッパ防衛の重心をドイツに担ってもらうよう促すことができれば、それにより英国海軍をスエズ運河からシンガポールにかけての貿易ルートの防衛に回すことができる」と述べている。

◆「軍国(帝国)主義の復活」という批判は的外れ
上記のような情勢を踏まえ、河野外相は、ロンドンでの記者会見で「日本は英国の『スエズの東』(アジア太平洋地域)への復帰を歓迎する」と述べたという。一方のウィリアムソン国防大臣は、日本を「アジア太平洋地域における英国の最も近い友人」だと表現し、朝鮮半島の緊張が高まる中、両国関係の発展は非常に重要だと述べた。

オックスフォード大学のニアリー教授は、これらの発言を踏まえ、「今回の(2+2の)合意は、英国と日本がお互いに同盟国、あるいは準同盟国だとみなしていることを示した。集団的自衛権の観点で、(有事の際には)日本がその同盟国の援助に来る可能性もある」と語っている。そして、憲法改正や武器輸出緩和に動いた安倍政権の動きが、“新日英同盟”誕生に結びついたと解説している。

その安倍政権の動きは、国内ではしばしば「軍国主義の復活につながる」と批判されている。似たような声は英国でもあるようで、ヘミングス氏は、今のイギリスが海に目を向け、海洋進出を再開していることに対し、「一部の者には、これが大英帝国の過去に戻るように見えるかもしれない」と書く。そのうえで、「実際には英国の未来を守るためにやっていることだ」と、批判の声を打ち消している。infoseek newsより

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