主な対象は、C型肝炎ウイルスに感染して肝細胞が壊れ、隙間にコラーゲンなどでできた線維が入り込んで肝臓が硬くなったC型肝硬変のうち、「非代償性肝硬変」と呼ばれる重症患者。初期の状態ならばウイルスを攻撃して進行を抑える薬があるが、肝臓の大半が線維に置き換わって重症化すると使える薬はない。
同病院肝臓内科の木村公則部長らは、国内のベンチャー企業ががんの治療を目指して開発した物質に、肝臓の線維を溶かす効果があることに着目した。
2014~16年に、重症の患者7人(56~74歳)らにこの物質を点滴で投与したところ、安全性がほぼ確認でき、4人の肝機能も初期の状態まで改善した。免疫細胞が活性化して肝細胞の周りの線維を溶かし、血流が戻って細胞の再生能力や機能が改善した可能性があるという。
来春から実施する治験では、重症患者を中心に約30人に投与して、詳細に効果を確かめる。木村部長は「これまでに重症の肝硬変が初期の状態に戻る常識外れの効果が見られている。いずれは最重症の患者や非アルコール性の肝硬変にも使えるようにしたい」と話していた。
稲垣豊・東海大教授(臓器線維症)の話「進行した肝硬変を治せる画期的な治療法で、難治性の患者にとって大きな福音だ。ただ、コラーゲンは皮膚や骨にとっても大事な成分なので、それらへの影響の有無をしっかり調べる必要がある」
慢性のC型肝炎患者の1割程度が感染から平均20年後に発症する。国内の患者数は推定20万~30万人。肝機能のレベルで初期の「代償性」と、腹水がたまったり、意識障害が出たりする重症の「非代償性」に分けられる。非代償性の患者の多くは数年で亡くなるとされる。読売新聞より
0 件のコメント:
コメントを投稿