2017年12月30日土曜日

北朝鮮が日本にミサイルを発射したらどうなるのか 

北朝鮮の弾道ミサイルが北海道上空を通過した際、全国瞬時警報システム(Jアラート)の緊急情報を受けて地下への避難など身を守る行動を取った人は5%台にとどまったことが、政府が12月13日に公表したインターネット調査で明らかになった。半数近くが「意味がないと思った」。が、実際、弾道ミサイルはどのように飛んできて、果たして避難には本当に意味がないのか。元自衛官で危機管理に詳しい軍事アナリスト、西村金一氏(65)=軍事・情報戦略研究所所長=に話を聞いたら、自筆のイラストとともに解説してくれた。

北朝鮮は四半世紀前から日本標的

《日本の弾道ミサイル防衛は2段構えだ。海上自衛隊のイージス艦に配備されている迎撃ミサイルSM3と、日本国内にある航空自衛隊の地対空パトリオットミサイルPAC3。SM3は、弾道ミサイルを宇宙で破壊し、PAC3は、大気圏に再突入してきたところを迎え撃つ》

弾道ミサイルが撃ち込まれる可能性はあるのか?

「僕はあると思います。日本に届く中距離弾道ミサイル『ノドン(蘆洞)=火星7号』は、1993年に最初の発射実験が行われました。そのころは内閣府の調査課というところにいたのですが、でも、日本海の真ん中ぐらい、500キロぐらいしか飛ばなかった。だから、(旧ソ連が開発した短距離弾道ミサイル)スカッドかなとも思った。あるいは、ノドンかもしれないなと。

その後、ノドンの射程圏は東京を含む1300キロという分析がなされ、迎撃ミサイルの研究が始まった。つまり、北朝鮮は、四半世紀前から日本に飛ばそうとして、日米は、それに対する研究をその間、行ってきたということです」

撃ちもらしは出てくる

迎撃システムで防げますか?

「PAC3での迎撃実験を40回ほどしました。PAC3の射程範囲(守備範囲)は半径20キロ。10キロ以内に飛んでくれば、100%防げます。最初のころは2回失敗したけど、そのあとは全部成功しているので。普通の弾道で飛んでくればね」

では、安心ですね

「飛んでくるのが、1発か2発なら大丈夫です。ただ、北朝鮮もそうだけど、ミサイルを持っている国は、いろいろと工夫する。絶対にミサイルを撃ち込みたいので。北朝鮮は、ノドンを200発、発射台を50機持っている。つまり、50発を同時に撃てるということです。するとイージス艦にあるSM3でまず撃ち落とし、撃ちもらしたミサイルをPAC3で迎撃したとしても、対応できないケースが出てくる可能性がある」

「実験結果は100発100中に近くても、いろんな角度で撃たれたとすると、命中する面積が小さくなる。弾道ミサイルは、すごいスピードです。巡航ミサイルの10倍、時速800キロは、もう飛行機のように目で見ることはできない。しかも、本当の戦争になったら、狙われるのは大都市です。しかし、PAC3の守備範囲から、外れるところがある。現在、大阪や仙台にはPAC3はありませんから、守れるわけがない」

地下シェルターを作るべき

ミサイルを撃ち込まれると何が起きますか?

「核ミサイルと、通常兵器は分けて考えなければ。今はまだ、ノドンに核を搭載する能力はありませんが、あと1~2年で小型化に成功すると僕は見ています」

「ある調査によると、100キロトン級の原爆(広島に投下された原爆は15キロ)が空中で爆発すると、半径2キロ以内の人間は即死、ビルも鉄骨もすべて壊れる。そこから離れれば離れるほど、被害は少ないと予測された。ノドンミサイルの精度は、直径5キロの目標に対して2発撃ち込めば1発当たるという程度の精度です。もう1発はどこにいくかわからない。あとは運です」

「土が1メートルあれば、放射線をある程度防げますから、地下シェルターを作るべきだと思いますね。全員は助からなくても、何人かは助かる。あとは頑丈なビルに入ることです。光が届かない厚いコンクリートの壁が守りになる」

通常の爆弾の場合は

「堅い頑丈なビルの中にいれば、守られやすいし、まあ、身を伏せて低いところにいれば、比較的、破片からも当たりにくくなる」

「本当の戦争になれば、弾道ミサイルが発射されてから、2、3分後にイージス艦のレーダーが信号をとらえて、Jアラートが流れます。その後、4分ぐらいで目標に到達する。今、こうやって大きな窓のある喫茶店でお茶を飲んでいますけど、Jアラートが鳴って、みんなが地下に行こうとエスカレーターに殺到したら危ないでしょ? 喫茶店は、お金を払ってくれというかもしれないし。だから、現実的には、すぐにお金を払って、窓際から離れて、建物の中央付近に行く。それぐらいの避難方法しかありません」

「あと心配なのは、VXガスやマスタードガスなどを使った化学兵器ですね。北朝鮮の通常爆弾の3分の1は、化学弾だといわれています。空中で迎撃しても燃え切れないものが、落ちてきますから」

北朝鮮は誤った判断をするかもしれない

北朝鮮が、1度でも韓国や日本を攻撃したら、米軍から報復されるので、絶対に戦争にはしない、ミサイル実験も核実験もおどしでしかないという意見がある

「戦争というのは正常な判断ができない、不安定な状態のときに、始まってしまうことがある。ロシアや中国が何千発も核弾頭を持っていても、直接の脅威にならないのは、理性的な判断をする国だと国際社会が見ているからです」

「一方、北朝鮮は、もうこのままでは生き伸びられないと、誤った判断をする可能性がある。一気に朝鮮半島を統一してしまおうとする判断もありえるということです。北朝鮮は1990年代中盤に大規模な飢餓が起きたが、その最中にも核とミサイルの開発を推し進めた。まともな判断ではない」

「理性的に考えれば戦争は起こらない。確かにそうですが、その論理はわれわれのものであって、(北朝鮮を指導する)金正恩は違うかもしれない。ですから、そのための準備は、しなければならない」

「米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)用の爆弾は、50発ぐらい、日本に届く中距離弾道ミサイル用は200発、韓国に届く短距離弾道ミサイル用は700発ぐらいあります」

戦争になる兆候はつかめますか?

「弾道ミサイルの発射実験の際の兆候は、3種類ほどあります。ひとつは部隊の動きです。発射台は移動式でも、だいたいの場所はわかっていますから、人工衛星などから変化がわかることがある」

「また、ミサイルが飛ばされると、弾頭部分から『テレメトリ信号』が出続けます。機器の温度や電流、電圧などの状態を示す信号です。今までの発射実験では、事前にこの信号がきちんと発せられるかをチェックします。しかし、本物の戦争になると事前のチェックはありません。

北朝鮮から、一切の無線が傍受できなくなったり、信号がキャッチできなくなったりしたら、おかしい。北朝鮮から一切電波ででていないという報道があったら、危ないと思ったほうがいいでしょう」産経ニュースより

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