2017年12月27日水曜日

「米朝開戦の可能性は100%」 元外交官がこう断言する理由

北朝鮮崩壊説は、前世紀から起こっては消えてきた。だが'18年は、金正恩政権が、かつてない危機の時代を迎える。暴発か、爆撃か、それとも。日中韓の専門家が占った金正恩政権の最期と次期政権。

まずは2月に核実験

12月12日、京都の清水寺で、恒例の「今年の漢字」が発表された。清水寺の森清範貫主が、巨大な筆を振り上げて綴った。

「北」。

集まった人々の間で、大きなどよめきが上がった。北朝鮮の核とミサイルの脅威が高まった年という意味だった。

実際、'17年は北朝鮮の脅威が、最高潮に上昇していった一年だった。

2月13日にクアラルンプール国際空港のロビーで、金正恩委員長の異母兄・金正男氏が毒殺され、世界が震撼した。

以後は5月、8月、9月と3度にわたって、IRBM(中距離弾道ミサイル)「火星12」を発射。日本列島の上空を通過したことで、日本にも緊張が走った。

また7月には、2度にわたってICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星14」を発射。11月29日には、アメリカ大陸全土をカバーする射程1万3000kmのICBM「火星15」の発射実験も行った。

さらに9月3日には、6度目となる過去最大規模の核実験を強行。

まさに一難去ってまた一難の、多難な北朝鮮情勢だったが、'18年はいったいどんな年になるのか?

「米朝開戦となる確率は百パーセントです」

こう断言するのは、元外交官の原田武夫氏だ。原田氏は、小泉政権時代に外務省北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)として訪朝し、拉致問題の解決に尽力した北朝鮮問題の専門家。

現在は、シンクタンクIISIA(原田武夫国際戦略情報研究所)を立ち上げ、国際問題について数々の予測や提言を行っている。

原田氏が続ける。

「'17年の年末まで、米中だけでなく、最後にはフェルトマン国連事務次長までもが訪朝し、北朝鮮と交渉の努力を重ねてきました。しかし効果はなかった。

そこでトランプ政権は、北朝鮮との交渉は失敗したと判断。'18年は、唯一残されたオプションである軍事オプションに動くのです」

12月11日と12日、平壌で軍需工業大会が行われ、金正恩委員長は、「わが国を世界最強の核強国、軍事強国として、さらに輝かせていく」と宣言した。

この大会は、「核戦力の大業の完成宣言」が目的だったが、アメリカではむしろ、「クリスマス核実験説」まで飛び交っているのだ。

北朝鮮は金正恩時代に入った'13年と'16年、「光明星節」を控えた時期に核実験を強行している。その前例にならえば、'18年2月16日の前に核実験を行うことは十分考えられる。

平昌オリンピックが危ない

北朝鮮が再度の核実験を強行すれば、トランプ政権はいよいよ、軍事オプションに傾いていくのは間違いない。

韓国の著名な軍事問題専門家である李永鐘中央日報統一文化研究所長は、「米朝開戦は4月頃になる」と見る。

「北朝鮮は、'17年9月15日に『火星12』を発射した後、75日間沈黙しました。その時、アメリカは、北朝鮮に対する希望的観測も持ちましたが、北朝鮮は結局、さらに性能アップさせた『火星15』を発射しました。

つまり、単に技術を向上させる時間稼ぎをしていたに過ぎなかったわけで、アメリカはますます北朝鮮に対して疑心暗鬼になった。

そして『あと3ヵ月程度で北朝鮮の大量殺戮兵器が完成する』と言い出しています。これは、そうなった時がレッドラインだという意味です。

2月9日に開幕する平昌冬季オリンピック・パラリンピックは、3月18日に閉幕します。それを待って、米韓は北朝鮮が最も嫌がる大規模な合同軍事演習を予定しています。

これに北朝鮮は猛反発し、挑発を強めるでしょう。もしかしたら、太平洋上での水素爆弾実験を強行するかもしれないし、平昌オリンピックでテロを起こすかもしれない。いずれにしても'18年春、北朝鮮リスクは最大限に高まるのです」
Photo by GettyImages

トランプ政権は'17年4月6日、電撃的にシリア政府軍基地に、59発ものミサイルを撃ち込んで、世界を驚愕させた。

また、「冬季オリンピックの後に戦争あり」というジンクスもある。4年前にソチ・オリンピックが終了するや、オリンピックを開催したロシアが、ウクライナのクリミア半島に侵攻し、占領してしまったからだ。

実際、北朝鮮と1300kmもの国境を接する中国は、「春危機」を覚悟している。北京在住ジャーナリスト、李大音氏が証言する。

「習近平総書記は、11月17日に腹心の宋濤・党中央対外連絡部長(共産党の外相に相当)に親書を持たせて平壌に派遣しましたが、宋部長は金正恩委員長に無視されて帰国。

習近平政権は、これでもう金政権を見限ると同時に、'18年春の米朝衝突もやむなしとの結論に至ったのです。

習総書記が、11月に訪中したトランプ大統領に頼んだのは、『3月までの開戦は絶対に避けてほしい』ということ。

3月に開く全国人民代表大会で、大臣以下の幹部人事、省庁再編などを行うため、それを終えるまでの有事は、何としても避けたいからです。

それは、3月18日に大統領選を控えたロシアも同様です。しかしその後は、むしろ戦争は政権の求心力を高めるのです」

パニックに陥る北朝鮮

中国はすでに、「春危機」への準備に余念がない。李大音氏が続ける。

「すでに中朝国境の鴨緑江に架かる中朝友誼橋を閉鎖し、平壌との航空便をストップしました。北朝鮮製繊維製品の輸入も禁止し、北朝鮮への液化天然ガス輸出も禁じた。1月までに中国在住のすべての北朝鮮人を追い出します。

その一方で、11月末から内モンゴル自治区で、北朝鮮との国境を管轄する北部戦区の第78集団軍が、本格的な軍事演習を始めています。これは近未来に米朝開戦となった時に、国境を突破して北朝鮮に突入する演習です。

他にも、国境沿いの吉林省では、核汚染から身を守る訓練を行ったり、北朝鮮難民用施設の建設を始めたりしています」

それでは、アメリカによる北朝鮮空爆はどのような形で行われるのか。前出の李永鐘氏が語る。

「空爆は限定的なもので、短時間のうちに電撃的に行われるでしょう。その目的は、北朝鮮の核とミサイル能力を減退させることです。

咸鏡北道豊渓里にある核実験場、平安北道寧辺にある核基地、それに主なミサイル発射場や生産工場などを、ピンポイント攻撃するわけです。

もちろん、平壌の朝鮮人民軍司令部も叩きます。その前に、サイバー攻撃をかけて朝鮮人民軍の電子システムを破壊するでしょう」

こうしたアメリカ軍の攻撃に対し、北朝鮮が常々公言しているように、「ソウルを火の海にする」リスクはないのか?李氏が続ける。

「朝鮮人民軍は不意打ちを喰らって、パニックに陥るはずです。そしてひたすら防御に集中せざるをえないため、韓国に反撃する余裕などありません。それくらい、米朝の力の差は、歴然としているのです。

もしも朝鮮人民軍が韓国を攻撃しようとしたなら、アメリカ軍はその戦力もすぐに殲滅します。かつ金正恩政権の転覆に着手する。

金正恩委員長は挑発的で好戦的な指導者ですが、アメリカとの全面戦争は自殺行為だということくらいは分かっています。そのため全面戦争には踏み込めない。

そうかといって、防御一方になれば、金正恩委員長に対する失望感が、北朝鮮の軍や党のエリートはむろん、一般住民の間にも広がっていく。

つまり、ひとたびアメリカ軍が攻撃を加えれば、アメリカ軍に抵抗してもしなくても、金正恩政権は滅亡するのです」

1950年の朝鮮戦争で、アメリカ軍を中心にした国連軍が北上した際、金正恩委員長の祖父・金日成主席は、一目散に鴨緑江を渡って、中国に落ちのびた。

だが「血盟関係」と言われた朝鮮戦争当時と違って、現在の中朝関係は、前述のようにむしろ一触即発の状態にある。金正恩委員長は、たとえ無事に鴨緑江を越えたとしても、中国当局に召し捕らえられてしまうのは確実だ。

現在の北朝鮮は、もう一つの伝統的後見国であるロシアとは蜜月を築いている。そのため、ロシア政治が専門の中村逸郎筑波大学教授によれば、「金正恩一家はロシアに亡命する」という。

「ロシアは北朝鮮からの要請を受けて、'13年にロ朝国境近くのハサンから北朝鮮の羅先まで、全長54kmの鉄路を完成させました。その時、線路の地下に、有事の際に金正恩一家が亡命できるようトンネルを作ったのです。

金正恩一家がハサンまで脱出できれば、そこからウラジオストク軍港を経て、北極海のムルマンスク軍港へ行く。

最後は北極圏にある非武装地帯のスヴァールバル諸島に、身柄を移します。そこにはすでに、金一家の亡命用の別荘地まで用意してあるのです」

後継者も決まっている

それでは、金王朝が崩壊した後、北朝鮮はどうなってしまうのか?前出の李永鐘氏が語る。

「金正恩政権の転覆までは、アメリカが主導しますが、その後は、むしろ中国が主導する形で進むでしょう。

ポスト金正恩として有力なのは、崔竜海党副委員長と金漢率氏です」

Photo by GettyImages 崔竜海党副委員長

崔竜海副委員長は、金日成主席の片腕だった崔賢元人民武力相(国防相)の次男で、67歳。軍人出身ではないが、11月に黄炳瑞軍総政治局長が失脚したことで、事実上のナンバー2にのし上がった。

また金漢率氏は、2月にマレーシアで毒殺された金正男氏の長男で、22歳。現在は第三国に身を隠している。

「崔竜海副委員長は、'13年5月に習近平総書記にも面会しています。いわゆる『二世のボンボン』なので、中国としては傀儡にもってこいの人物と判断しています。

一方、金漢率氏は現在、アメリカにはいませんが、アメリカが匿っているようなもので、金王朝の血脈を継ぐ正統な後継者として担ごうとしています。

いずれにしても、次期北朝鮮の政権は、トランプ、習近平、プーチンの3頭会談で決まるでしょう」(前出・李大音氏)

最後に、北朝鮮の新政権に、日本はどう関わっていくことになるのか。ソウル在住ジャーナリスト・金敬哲氏が語る。

「金正恩政権が崩壊すれば、日本人と韓国人の拉致被害者が解放されます。

ただ、北朝鮮を復興させるための費用も、日本と韓国が拠出することになるでしょう。韓国は北朝鮮と同胞で、日本は前世紀の植民地支配の補償を清算していないからです。日本が拠出する金額は、数兆円規模に上るでしょう」

たった1年で、北朝鮮情勢は、かくも激変していくのだ。ライブドアニュースより

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