2016年12月3日土曜日

過大評価される中国。未来を見据えた日本の技術開発とは?

世界のスーパーコンピューターの性能を競うランキング「TOP500」の最新版が20日に発表されましたが、自国製のマイクロチップを使用した中国のスーパーコンピューターが初めて世界最速と認定されました。しかも2位は昨年まで1位だった中国のスパコン「天河2号」でした。
 
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1位となったスパコンは「神威太湖之光」という名前で、2位の「天河2号」よりも約3倍、5位の日本製の10倍もの計算速度を誇ると言います。
スパコン、純中国製が初の世界1位 速さ「京」の10倍

半年ごとに発表される同ランキングでは、これまでも中国は2013年6月から6連覇してきましたが、しかしそのマイクロチップはすべてインテルなどのアメリカ製であり、「本当に意味のある世界一なのか」という疑問の声があがっていました。加えて中国のスパコンが核兵器開発に関与している可能性があるということで、昨年、米商務省がインテルなどに最新型CPUの輸出を禁じました。そこで中国は内製に転じて、今回、CPUを独自開発して世界一となったというわけです。

スパコン番付でも米中摩擦 CPU禁輸で揺らぐ中国の首位
中国製スーパーコンピューター「神威太湖之光」 出典:The Daily Signal/Li Xiang Xinhua News Agency/Newscom
中国製スーパーコンピューター「神威太湖之光」
出典:The Daily Signal/Li Xiang Xinhua News Agency/Newscom

これをもって「中国の技術力はすごい」という報道もあるようですが、はたしてそうでしょうか。日本の「京」も国産CPUですし、中国は2000年から独自のCPU開発をしてきましたので、特段、驚くべきことではありません。また、インテルも中国でCPUを生産してきましたから、基本技術自体は中国にパクられていたはずです。要するに、日本の新幹線をパクって「独自技術」を謳うようになった中国高速鉄道と同じだということです。

前回のメルマガでも述べましたが、冷戦終結後から戦争の形は変わり、熱戦から冷戦、そして現在進行中なのがサイバーウォーです。中華的思考では研究開発はバカがすることで、軍のサイバー部隊は他国の産業と軍事技術を標的としています。

中国アリババ・グループのジャック・マー会長が、自社のサイトに偽造品が溢れ、その対策が遅れていることに対して、「模造品の多くは正規品よりも優れている」と発言し、国際的な批判を浴びていますが、要するにそういうことです。技術をパクることで技術開発費を抑え安価で売るというのが中国の手法なのです。
中国・アリババ会長の「偽物は本物より高品質」発言が世界中で物議

しかも、中国のスパコンは、CPUを並列に並べて計算能力を高めたものです。例えるならば、自動車100台で荷物を引っ張るようなもので、当然、自動車1台よりは馬力が出ます。そのかわりガソリンも大量に使うわけで、中国のスパコンも運用コストの高さが問題視されてきました。昨年1位だった「天河2号」の場合は、フルパワー運用で年間の電気代は約29億円とされています。
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日本の「京」も基本的に同じ手法で計算能力を上げているため、電気代は年間15億円に達するとされています。

高性能でも実用性は高くない、中国製スパコン「本当の評価」

今回の「神威太湖之光」は、「京」と同等の電力で性能は9倍になるということですから、大幅な性能アップを実現したことは間違いありません。しかし中国におけるスパコンは「運用コストが高く使えるソフトが少ない」ということで、あまり実用性が高くないという評判です。
われらの「スパコン」は高性能だが…「運用コスト高く、使えるソフト少ない」=中国メディア

昨年まで世界1位だった「天河2号」は、中国人民解放軍国防科学技術大学が25億元(約410億円を投下して開発しましたが、2014年4月の運用開始以来、120社ほどにサービスを提供しているといいます。しかし、「天河2号に対して投下された資金はスパコンそのものの開発に使われたため、研究に活用できるソフトウェアの数が少なく、顧客は天河2号を使用するにあたって自らプログラムを組なければならない状況だ」といいます。

清朝末、中国では洋務運動(西洋の技術導入)という改革運動が起こりましたが、その際に叫ばれたのが「中体西用」でした。これは、中国の制度や文化、倫理などを根本として、西洋の科学技術を利用するという主張です。言い換えれば、中国というハードに、西洋のソフトを使うということでもあります。ところがこの改革運動は中途半端であったため、すぐに失敗してしまいました。

現在の中国も、「より大きいものがいい」「世界一がいい」という中国人の好みどおりに、高スペックのハードはつくるものの、それを動かすソフトはいまだ外国製に頼りっぱなしという状態です。

一方で日本は目指す方向を計算処理の速さではなく電力あたりの計算速度へと転向しており、TOP500と統合された省電力スパコンのランキング「Green500」では、理化学研究所が運用する「菖蒲」が2連覇となっています。先の車の例で考えれば、リッターあたり100km走る車を開発するようなものです。

中国の技術力を過小評価する必要はありませんが、過大評価するのも禁物です。「世界一」といっても、すでに世界的に評価されなくなりつつある分野で1位になっても、あまり意味がありません。

中国の主張する「世界一」が日本の脅威にならない理由

民主主義国では市民やマスコミによる「無駄な予算」に対する監視が強くなるのが通常です。先日、舛添都知事が公費の公私混同を追及されて辞任しましたが、中国の役人のように何億も着服したわけではありませんし、まだ違法性も確認されていません。しかし政治家としての倫理道徳が問われ、舛添氏が「タダ働きする」と言っても許してもらえず、結局辞任するしかありませんでした。ちなみに、この舛添都知事の問題は海外でも注目度が高く、「SEKOI」が「KAMIKAZE」「SUSHI」などと並んで、よく知られる日本語となりました。

それはともかく、このように、民主主義国では政策に対するコスト意識がどうしても高くなります。そのため、省エネ性能を伸ばす方向での研究開発が進むわけです。

一方で中国は共産党独裁ですから、為政者がカネを出すと決めれば、それが絶対になります。習近平のバラマキ外交には国内のネットでも批判が出ていますが、それでも国民がトップを交代させるシステムがないので、やりたい放題ができるのです。

つい最近も、腐敗官僚を追放して村長を直接選挙で選んだ広東省の烏坎村では、土地返還をめぐって上級政府に陳情しようとした直前に、住民側リーダーである村長が逆に収賄容疑で拘束されてしまいました。中国では住民が腐敗を摘発しようとしても、かえって逮捕されてしまうのがオチなのです。

とはいえ、ワイロ文化の中国では、多額の開発費や予算をつけても途中でそれが中抜きされ、末端へ行くとほとんど残っていないということがほとんどです。ですから、ビル建設などでも手抜き工事が横行し、鉄筋の代わりにゴミを混ぜるといったことが起こるわけです。

中国が日本の技術をパクって「自国技術」と胸を張る高速鉄道にしても、故障が頻発しているようです。中国での鉄道故障は2015年だけで1,500件、事故は210件にのぼっています。最も事故と故障が多いのが高速鉄道向けの車両で、製品の品質とメンテナンスのレベルが水準を下回っていることに原因があると指摘されています。
中国:鉄道故障が15年に1500件、中国中車の低品質原因か

自動車にしても、中国で圧倒的な信頼性を得ているのは日系車で、100台あたりの問題発生率が少ない自動車のトップ3は三菱、マツダ、レクサス。合弁メーカーでも東風ホンダ、次いで一汽トヨタ、そして広汽トヨタと日系が独占しています。一方、2010年の数字ですが、中国製の新車の故障率は6割近いという報告があります。

日本は江戸時代から高度なリサイクル社会でした。資源に乏しいこともあり、長持ちする優れた製品づくりをしてきたのでしょう。一方、中国人はその土地の資源を食い尽くせば、他の土地へ移動して資源を奪うということを繰り返してきました。中華思想の中国人にはエコや環境保全という概念はほとんどありません。

ですから「中国が独自開発のスパコンで速度世界一となった」といったところで、それほど脅威視する必要はないのです。 MONEY VOICEより

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