前回(「『黒船』トランプが中国・習近平政権に仕掛ける、3つの最終戦争」)は2017年に習近平政権が直面する「外患」について解説したが、今回は中国政府が抱える「内憂」について考えてみよう。
最大の内憂はやはり、とどまるところを知らない経済の衰退である。今月13日、中国税関当局は2016年の貿易統計を発表した。輸出額前年比7.7%減、輸入額5.5%減という衝撃的な数字である。
中国の経済統計の信憑性が疑われている中で、貿易統計は信ずるに値する数少ないデータの一つである。貿易というのは相手があるから、中国が一方的に捏造するには限界があるからだ。従って自国の統計数字をあまり信用しない李克強首相も、この貿易統計に接したときは、頭の中が真っ白になって茫然自失に陥ったのではないだろうか。
一国の輸入には消費財輸入と生産財輸入の2つの部門がある。昨年の輸入額がそれほど減ったのは、要するにこの1年間、中国国内の消費と生産の両方がかなり落ち込んでいるということである。そして、輸出額7.7%減という数字はより一層、中国経済の絶望的な状況を鮮明に示してくれているのである。
今まで、中国の経済成長の最大のネックは、国内消費の決定的な不足であった。個人消費率を見てみると、日本が60%程度、米国が70%程度であるのに対し、中国の場合はわずか37%前後で異常に低い。中国経済の中で、13億の国民が消費する分は経済全体の4割未満なのである。
後の6割の中国経済はどこで創出されているのか。一つは投資分野の継続的投資拡大、もう一つはやはり、貿易部門の対外輸出の継続的拡大である。つまり、中国国民があまり消費してくれないから、輸出の拡大で中国製の安いモノを海外で売りまくり、国内の雇用を確保し、経済の成長を支えてきたのである。これが中国の成長戦略の柱であった。
その一方、国内の投資拡大を支えるために、中国政府が十数年間にわたって人民元を無制限に刷って乱発した結果、2010年あたりから国内で深刻なインフレが発生し、人件費の急騰が深刻になってきている。このため、「安さ」が唯一の取りえである「Made in China」が国際的な競争力を徐々に失っていった。
その結果、2010年までに毎年25%前後の伸び率を誇った中国の対外輸出の急成長は完全に止まってしまい、2016年のそれは7.7%減のマイナス成長となったことは前述の通りである。つまり、今まで、中国の高度成長を支えてきた「輸出」という柱が既に崩れてしまっているのである。
輸出がマイナス成長となると、中国政府の虎の子である外貨準備高は見る見るうちに減っていく。そして、沿岸地域の労働密集型の輸出向け産業が破滅的な打撃を受けて倒産が広がり、失業者があふれるような事態が起きてくるのである。それはまた国内の消費不足をさらに深刻化させ、社会的不安の拡大を誘発する要因にもなっている。
こうした中で、最大の輸出相手国であるアメリカのトランプ政権が本格的な「貿易戦争」を中国に仕掛けていけば、それが中国の輸出減に追い打ちをかけ、中国経済にとどめの一撃を与えるのかもしれない。外患と内憂はここで「両軍合流」となって、中国経済と習近平政権の両方を未曽有の危機に追い込んでいくのである。このような危機感があったからこそ、習近平国家主席は先日のダボス会議演説で「保護主義に断固反対」と強調してトランプ政権を牽制してみせた。
しかしどう考えても今年から、中国はアメリカとの「貿易戦争」で無傷でいられることはない。2017年における中国経済のさらなる衰退は必至であろう。 MAG2NEWSより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年2月1日水曜日
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