2016年6月19日日曜日

温暖化の負の連鎖

地球温暖化で北極圏の永久凍土が融解すると、そこにいる微生物が活発に活動を始め、大気中の二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスをどんどん放出し、温暖化をさらに加速する可能性があることが分かりました。北極圏の永久凍土を使って実験した米ノーザンアリゾナ大学などの国際研究グループが、科学誌「ネイチャー・クラスメート・チェンジ」に発表しました。

北極圏では夏でも土壌が凍ったままでほとんど溶けない永久凍土地帯が広がっています。内部に大昔に死んだ植物や動物の身体が分解されないまま有機物として大量に存在しています。有機物に含まれる炭素の量は、現在大気中に存在する二酸化炭素などを構成する炭素の2倍に上ると見積もられています。

地球温暖化は北極圏で特に大きな影響が出ると見られ、北極圏では最悪の場合、今世紀末の気温が今世紀初めより8.3℃上昇すると予想されています。そうなった場合、永久凍土の表面が大規模に解け出し、解けた水が低いところに溜まったままで、湿地帯を作る一方、高いところは土壌の水が抜けて乾燥すると考えられます。湿地帯では、有機物は今まで通り空気に触れませんが、乾燥してしますと空気にさらされる事になります。

研究グループは、地球温暖化の進行を想定し、温度上昇や乾燥化によって永久凍土に含まれる有機物がどうなるか調べました。アラスカ、カナダ、ロシアの北極圏にある永久凍土地帯25カ所で土壌を採取し、自然状態より温度10℃上げた場合と乾燥させた場合の二酸化炭素とメタンの放出量の違いを比較しました。

その結果、温度を10℃上げると二酸化炭素とメタンの放出量は自然状態よりも2倍になり、乾燥させると3.4倍になることが分かりました。こうした傾向は、土壌を採取した地域の違いや、針葉樹林やツンドラなどの植性の違いにかかわらず同じでした。

放出量増加の、犯人は微生物です。永久凍土が溶けると微生物による分解が始まります。そこが湿っているか、乾燥しているかで、動く微生物の種類の違うので、生成する温室効果ガスの種類も違ってきます。メタンは、二酸化炭素よりも強力な温室効果を持ちます。地球温暖化の進行で北極圏の永久凍土が大規模に解けた場合、湿地帯と乾燥した場合の比率がどうなるかはっきりしていないため、さらに研究が必要です。

研究グループは北極圏の永久凍土に含まれる有機炭素の量から考えてそこに起こる小さな変化も大きな影響を及ぼすだろうと警告しています。

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