2016年1月17日日曜日

X線天文衛星、来月打ち上げ

日本の次期X線天文衛星、アストロHが2月12日、鹿児島県種子島にある宇宙航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられます。ブラックホール、銀河団、超新星爆発の残骸などX線で輝く高エネルギー天体を観測し、宇宙の謎の解明を目指します。

アストロHは、日本のX線天文衛星として6機目。2005年から昨年まで観測を続けた「すぐさ」の後継機です。

重量は2.7㌧で、観測時は全長14㍍。日本の天文観測衛星では最大です。大型の衛星でも宇宙環境試験や打ち上げ時の振動試験を終える。筑波宇宙センターで製作されます。

打ち上げ後は、地球の上空575㌔㍍を1週96分かけて周回しながら、目標天体に向けた姿勢で連続観測をします。

宇宙の物質の少なくとも80%は、X線でしか観測出来ない高温状態にあります、と説明するのは、アストロH計画の責任者、高橋JAXA教授です。宇宙の全貌を知る上で不可欠の手段です。

天体からやってくるX線は、暑い地球の大気に吸収されて地上に到達出来ない為、宇宙で観測しなければなりません。

1992年のロケット観測で始まったX線天文学は、宇宙が、数千万~数億度もの高温の天体現象に満ちている事を明らかにしてきました。すだれ型の観測装置を発明した小田博士の活躍を始め、79年に打ち上げた「はくちょう」以来の衛星5機による観測成果など、X線天文学の黎明期から日本は、お家芸、といわれる世界をリードしてきました。

その成果の上に開発されたアストロHは、①X線光子エネルギーを超高精度で測定する、②4種類の検出器を使い、同じ天体からやってくる抵エネルギーから高エネルギーまでのX線光子を同時に観測・撮影する、という能力を持つことで、これまでの衛星を圧倒しています。

世界初の装置として注目される「X線マイクロカロリメーター」は、X線光子が物質に当たった時にエネルギーが熱に変わり、物質の温度がわずかに上がるのを測定します。微少な温度変化を捉えるため、検出器を絶対温度でわずか0.05℃に冷却。X線光子のエネルギーを従来の30倍の高精度で測定します。可視光の、色、にあたるX線の波長から、天体の元素組成、物質の運動などが詳しく分かります。

「すざく」も同様の検出器を搭載していましたが、打ち上げ後に冷却に必要な液体ヘリウムが消失する事故がありました。今回、この失敗を踏まえ設計を工夫しました。

一方、X線天文の画像を撮影する3種類の検出器は、すざくの10~100倍の感度を達成。これまで見えなかった暗い天体の像もとらえます。12㍍という長い焦点距離が必要な検出器は「伸展式光学ベンチ」に取り付けられ、打ち上げ後に宇宙空間で衛星本体から6㍍先まで伸ばします。

アストロHの観測で期待される天体の情報を、高橋さんは洗濯機の水流に例えます。渦が見えるだけではなく、どれくらいの速度で回っているのか、それがお湯なのか水なのか、油が混じっているのかまでわかり分かる、と話します。

X線を放つ物質の種類や運動を調べ、ブラックホールの成長過程、多様な元素の起源の謎に迫り、超高密度などの極限状態での物理法則の検証に挑みます。

過去の観測で、高温ガスで満たされた銀河団の中を飛び回っている銀河たちがガスの、抵抗、を受けて徐々に中心部に落下していることを次々とつきとめた牧島・理化学研究所研究顧問は、銀河が高温ガスを引きずっている現象を直接捉えたいと意気込みます。

アストロHは打ち上げ後、太陽光パドル展開や伸展式光学ベンチを実施。装置の性能確認や試験観測を行い、今秋頃から国際公募による観測を始めます。

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