2016年1月17日日曜日

日本財政の破綻

財政危機対応の時間的猶予は「異次元緩和終了」まで


クリスマス・イブの24日、政府は2016年度予算案を閣議決定しました。歳出総額は96.7兆円と最高額を更新、一方税収増で新発国債は34.4兆円に抑え、経済再生と財政再建の二兎を追う形となりました。

折しも、ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授が、日本財政が危うくなるのは、2%の物価目標が達成するか、日銀が緩和策を終了する時、と警告しました。

ルービニ教授は、日本の公的債務がGDPの240%にも達しながら、危機が表面化しないのは、日銀の買い入れにより、国債金利が低く抑えられているためで、それが維持できなくなり、国債の大量売却が始まる時が危機の始まりと警告しています。

日銀の異次元緩和実施期間が猶予期間、ということになります。その間に財政再建にめどを立てる必要があります。

その割に、政府には財政に対する危機感がありません。危機感のない政府と財務省との間で軋轢が強まっています。そもそも消費税再引き上げ時の軽減税率による1兆円余の財源さえ、決まっていません。政府からはアベノミクスによる税収増や、円安で発生した外為特会の差益(埋蔵金)20兆円を使え、といった声も上がり、論議を呼んでいます。

財務省にしてみれば、円安、株高で企業収益、税収が増えた分は、今後海外環境如何ではどうなるかわからず、外為特会の差益を活用するには、その分のドル資産を売らなければなりません。それは円高を招き、結果として差益(埋蔵金)が減ってしまい、なによりドル資産の売却は米国政府が首を縦に振らない、との意識が強くあります。

来年度予算では、名目GDPの成長率を3.1%と高めにおき、そのもとで税収が57.6兆円と、バブル時の90年、91年度以来、3番目の高い税収をあて込んでいます。景気が下振れしたり、為替が円高になり、株価が下落したりすると、この税収は厳しくなります。「アベノミクスの成果」を、永続的なものとして組み込んでいる点に危うさを感じます。

利払い費を払うために国債を発行する悪循環に陥る恐れ


ルービニ教授の言う危機は、日銀が国債を買わず、むしろ売る段になって金利が急騰するケースを想定しています。来年度予算の中で国債費は23兆円余、このうち利払い費は10兆円を想定しています。前提となる長期金利は1.6%で、これまでの1.7%と言う不自然な水準からは引き下げましたが、まだ余裕があります。日銀が緩和を続ければ、来年も2兆円以上のおつりがきます。しかし、1千兆円以上の国債を発行していながら、利払い費が10兆円以下で済んでいるのは、日銀の国債買い入れにより、金利が低く抑えられているからです。

2%インフレが実現し、日銀が自然体に戻れば、長期金利は3%以上に跳ね上がり、ゼロ金利も修正すれば、中短期国債の利回りも上昇します。

国債の利払い費はすぐに30兆にも高まります。そうなると、国債費、つまり利払い費を払うために国債を発行する悪循環に陥り、予算は組めなくなります。そして財政危機が表面化します。この点を考えると、政府の名目3%強の成長と言う前提は危険です。現在のGDPギャップは0.4%しかなく、潜在成長率が0.5%以下となれば、当面実質成長率は1%にも届きません。そこで名目3%成長に拘ると、物価が2%以上になります。

そうなると、日銀の目標達成で、現在の大量国債買い入れは見直しへとつながり、国債利回りに動揺が走ります。異次元緩和の終了となれば、国債価格下落を恐れて金融機関が国債の売却に走り、さらに金利が高まります。

労働需給がタイトで、景気対策を打っても成長余地がない時には、財政で無理に景気支援をする必要はなく、無理をすれば逆に副作用が出ます。こういう時には、経済成果として税収が増えた分で、国債の減額を進め、財政危機のマグニチュードを少しでも小さくしておく必要があります。
今は二兎を追う時期ではなく、赤字削減を優先した方が、日本のためです。 マネーボイスより

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