2016年1月1日金曜日

済州島が中国の植民地化

韓国有数のリゾート地として知られている済州島が、中国の進出に揺れている。東シナ海に浮かぶ済州島は単なる観光地にとどまらず、日本海や黄海に通じる海上交通路(シーレーン)をにらむ戦略的要衝でもある。怒濤(どとう)の勢いで進みかねない“中国化”に対し、韓国内では「このままでは済州島が中国の植民地になってしまう」との声も上がっている。

済州島への中国の進出ぶりを示す一例となったのが中国の邱国洪駐韓大使が今年7月にある会合で語った言葉だ。中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大に伴い、中国からの観光客が減少したのを受けて、邱氏は中国人観光客の韓国訪問を再び増やす方法の1つとして済州島のようにノービザで訪問できるようにすべきだとの提案を披露したのだ。

ノービザで次々と訪問

韓国は2006年7月に済州島のみを訪れる場合にはビザを必要としない「ノービザ対象国」に中国を含める措置を取った。このことをきっかけに済州島に中国人が押し寄せるようになった。2014年に済州島を訪れた観光客は約1200万人で、このうち中国人は280万人を超えている。

中国・北京から済州島まで空路で約2時間半、上海からは約1時間という近さもあって、当初は主に観光目的が多かったが、やがて不動産への投資、それも買い占めが行われるようになった。かつては済州島の山腹にリゾート施設を建設していたのが、最近では済州市の中心街にまでその対象が広がっている。

中国人が不動産を買い占める理由は主に2つある。

1つは投資目的だ。済州島を訪れる中国人を相手とした大型リゾートの建設やコンドミニアムの購入などがこれにあたる。2014年9月の時点で中国人や中国企業の名義となっている韓国国内の土地は約1197万平方メートルだったが、その70%が済州島に集中している。島内ではコンドミニアムやホテルの建設が続き、中国企業が1兆ウォンを投資して済州市に51階建てのビルを建設する構想さえ持ち上がった。

狙いは永住権の獲得

ただ、より注意を払わなければならないのが永住権の獲得だ。済州島では5億ウォンまたは50万ドル以上を不動産に投資すると、韓国で暮らすことができるビザが発給され、そのまま5年間不動産を保有すれば永住権が与えられる。この永住権獲得を目的とした不動産投資が行われているのだ。

「不動産投資移民制」と名付けられたこの制度の下、昨年8月までに外国人783人が永住権を獲得し、このうち中国人は98%にあたる768人に上った。

中国人が保有する土地は昨年6月時点で592万平方メートルで済州島の面積の0・3%だが、問題はその場所がどこかということと、その目的が何かという点にある。中国企業が山腹に建設したコンドミニアムの1つは1棟当たり5億ウォン。つまり、永住権獲得を狙う中国人への売却が目的になっている。

中国企業によるリゾート施設開発に伴う森林の伐採で、飲料水に使う地下水への影響も懸念されている。

戦略的環境の一変も

平成26年10月に済州島を視察した沖縄経済同友会がまとめた報告書は「不動産投資移民制」について、急増する中国人観光客向けに、市街地や山腹で大型観光施設の造成が意欲的に進められているが、そのほとんどが中国資本内で完結し、景観や森林の破壊、飲料水汚染など環境を損なう懸念があることから、済州島島民には恩恵をもたらさないと認識されている、と記している。

朝鮮日報によると、済州島の元喜竜知事は中国資本の急激な流入について「済州島の住民感情の根底には恐怖が横たわっている」と語ったという。こうした懸念を受けて、済州島の行政当局は今後、不動産購入の対象地域を観光地と遊園地に制限することや、5億ウォンの不動産投資に加え、地域開発債を5億ウォン以上購入するなどの条件を課すことで永住権取得のハードルを上げることを検討しているという。

ただ、島内への中国人の渡航や中国資本の流入を規制すれば、経済に打撃が出るとの懸念も韓国国内には出ている。済州島は軍事的な価値が高く、韓国政府は海軍基地の建設を進め、イージス艦の配備も予定している。その済州島が中国化してしまったら、東アジアの戦略的な環境は一変してしまうに違いない。 産経ニュースより

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