2016年1月24日日曜日

情報を首相に報告する機関

朝鮮ウォッチャーが北朝鮮情勢を分析する上で欠かせない要素が、党や人民軍の高官の動きだ。要人が死亡した際に公表される葬儀委員会名簿での序列も大事だが、最も重要なのは、北朝鮮メディアが伝える金正恩の現地指導に、どの幹部がどれだけ随行しているかをカウントすることだ。
随行回数は金正恩との近さを表し、回数が多いほど政治的なパワー持っていることを意味する。 このような手法はOSINT(オシント=Open Source Intelligenceの略)と呼ばれ、分析に要する情報の9割以上を公開情報(Open Source)から収集する。北朝鮮のような「情報鎖国」、それも秘密のベールに包まれた権力中枢の動きを知る上で欠かせない情報活動だ。

「情報コミュニティ」の中心は内調だが

では、同じ手法を日本に用いると何が見えてくるか。 下表は朝日新聞の「首相動静」(2015年分)から、日本の情報機関よる首相への報告回数を抜き出したものだ。
これを見れば、日本の情報関の中でどこが“最強”であるかが一目瞭然となる。

内閣情報官外務省国際情報統括官防衛省情報本部長警察庁警備局長公安調査庁次長
116回8回16回8回8回

報告回数がずば抜けて多いのは、内閣情報調査室(内調)の長である内閣情報官だ。だが、これをもって内調を“最強の情報機関”とするのは早計だろう。
内調は内閣法と内閣官房組織令により、「内閣の重要政策に関する情報の収集・分析」を任務として設置された機関だ。そして、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁などで構成される「情報コミュニティ」の中心として、各情報機関から寄せられた情報を首相に週1回のペースで定期報告している。

「情報本部」という組織

つまり、首相の“情報参謀”である内閣情報官が首相に頻繁かつ定期的に情報ブリーフィングすることはルーティンの業務であり、当然のことなのだ。

「制度上、各省庁からの情報は内調に集約され、内閣情報官が首相や官房長官に報告する。しかし、各省庁が収集したものの中でも特に重要な情報は、それぞれの機関が独自に報告する慣わしになっている。

だから、各機関が首相に直接報告した回数を見れば、機関の“実力”を測ることができる。単なる“手柄争い”にならないよう、直接報告の是非については内調が調整していることもあり、重要情報をどれだけ入手しているかが客観的に分かるわけだ」(内調OB)

この言葉に従えば、“最強の情報機関”の称号は、公安警察を取りまとめる警察庁警備局でも、朝鮮総連などへの協力者工作を得意とする公安調査庁でもなく、防衛省の情報本部に与えられることになる。

秘密のベールに包まれた実態

公刊資料によれば、情報本部は2005年に防衛庁(当時)の中央情報機関として新編された軍事情報機関で、総務部、計画部、分析部、統合情報部、画像・地理部と電波部の6部と「通信所」と呼ばれる6つの電波傍受施設からなり、約2400人の要員を擁する。

数万人を抱える米国の中央情報局(CIA)や国家安全保障局(NSA)には見劣りしても、日本においては単独の情報機関として最大の陣容を誇っている。予算規模も、公安警察と公安調査庁の活動費が約20億円であるのに比べ、情報本部の予算総額は約650億円と巨額だ。

だが、多くのメディアが日本の情報機関として「公安」を取り上げているのに比べれば、情報本部は目立たない存在と言える。むしろ、名前すら聞いたことがない、という人が大多数ではないか。
一般の人々に限らず、「ハム担」と呼ばれるメディアの公安担当記者であっても、情報本部とツテを持っている者はほとんどいない。「それこそが真の情報機関たる所以だ」と、ある自衛隊OBは語る。

公安は「失格」

「我々は日本で唯一の純粋な『情報機関』であって、公安のように政治的な活動はしないし、する必要もない。そして、いつ誰がどこで話したのかも証明できないような“協力者情報”ではなく、物理的に集めた膨大なデータを情報に加工して、国家の安全保障に貢献している」
「だからマスコミや政治家などと会う必要もなく、相手からバーターで情報を得るため、こちらの情報を出す必要もない。外部との接触が増えれば、それだけ秘密が抜けるリスクも増す。公安の中には『ヒューミント』(人的情報活動)と称して、記者連中と酒を飲むぐらいしか仕事をしない面々もいるようだが、それでいいのか。週刊誌や小説で面白おかしく取り上げられている時点で、情報機関としては失格だ」(自衛隊OB)

しかし、情報本部が日本で最大最強の情報機関であるなら、日本人拉致事件の多発を止められなかった責任もまた最大ではないのか。実際、情報本部の深奥には、拉致事件多発とからむ「内部事情」が秘められているのである。  デイリーNKより

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