2017年6月22日木曜日

モンゴルの電気を東京へ アジア向け国際送電網検討大詰め

モンゴルで、国境を越え東京などアジア各国の大都市に電気を送る「アジアスーパーグリッド構想」の検討が大詰めを迎えている。風力や太陽光、化石燃料が豊富な利点を生かし発電した大量の電気で国外の大消費地の需要を満たそうとするものだ。各国固有の電圧への対応や安全保障面の懸念の払拭など課題は山積しているが、高い経済効果が見込まれ、関係国も計画の行方を注視している。

技術的に可能だが

モンゴルでスーパーグリッド構想の一環として検討されているのが、70億ドル(約7794億円)規模の石炭、風力、太陽光発電所「シベエ・エネルギー・コンプレックス」建設計画だ。計画が実現すれば、発電能力は528万キロワットに達し、中国やロシア、韓国、日本に送るための十分な量を確保できる。モンゴルの政府系投資会社エルデネス・モンゴルや同国エネルギー省が計画を推進している。

停滞する経済の立て直しを狙う同国は、潤沢な資源を活用できる、世界最大級の発電所を保有したい考えだ。世界銀行によると、モンゴル経済は今年、0.2%のマイナス成長となる見通し。国際送電網の構築を目指す非営利団体「GEIDCO」は、シベエの計画により、5年間にわたり2万5000人の雇用が創出され、国内総生産(GDP)は同期間中、平均で年率4%増加すると見込んでいる。

プロジェクトディレクター、タミル・バトサイハン氏によると、月内にフィージビリティースタディー(実現可能性調査)が終わる予定だ。

スイスの金融大手UBSのアジア電力リサーチ責任者、サイモン・パウエル氏は「アジアでの国際送電網は技術的には可能だが、いくつか問題がある」と解説する。

中国などアジアの経済大国も同計画を支持している。とはいえ、他国への送電は、電圧や電気料金の違い、電力供給を他国に依存するエネルギー安全保障に対する懸念があるという。これらの問題を解決できなければモンゴルの計画も夢で終わる。

英調査会社BMIリサーチによると、アジアの電力市場は2026年まで年率平均約3.5%の成長を続ける見通しだ。

中国送配電最大手の国家電網、日本のソフトバンク、韓国やロシア勢が北東アジア向けのスーパーグリッド構想を支持している。

国家電網の前会長で、現在はGEIDCO会長の劉振亜氏は4月、「今後30年間のエネルギー需要は天文学的数字になる。現時点で想像すらできないほどの規模で電力、主にクリーンエネルギーによる電力が必要になる」と述べた。

中国依存に警戒も

国家電網も国際送電網の整備に動いている。同社の張啓平・技術責任者は昨年11月、中国は余剰電力をインドや東南アジアに輸出可能だと述べた。スーパーグリッド構想は、インフラと投資を通じて欧州・アジア・アフリカの連携強化を目指す習近平国家主席肝煎りの現代版シルクロード構想「一帯一路」とも合致する。

ロシア送電大手ロシア・グリッドの開発担当副本部長、コンスタンティン・ペチュコフ氏も、中国、韓国、日本と2カ国間の送電網構築に向けた話し合いを進めていると明かした。モンゴル政府とも同様の協議が進行中という。

UBSや英コンサルティング会社ウッド・マッケンジーのアナリストらは、国際的な送電網確立に向けた課題として、異なる規格の電線やインフラをつなぐことや電気料金の価格設定方法以外に、電力の供給や技術面で中国への依存が高まることを警戒する国があると指摘する。

ウッド・マッケンジーの中国・北東アジア電力担当コンサルタントのフランク・ユー氏は「中国の技術を取り入れると、自国の電力システムの安全性、ひいては国全体の安全保障が脅かされると懸念し、慎重になるのではないか」とみている。  SankeiBizより

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