■ビッグバン以前には何があったのか?
宇宙は時間の経過とともに膨張していった「Wikipedia」より引用
現代の物理学では、ビッグバン以前は端的な“無”があったと想定されているが、これは極めて直観に反する非常識的なアイデアだ。空っぽの水槽に自然と魚が発生するとは普通ならば誰も考えないだろう。さらに、無から有が生じることを無批判に認めてしまうと、科学を宗教化することにもなりかねない。始まりにおいて、何らかの超越的な存在者が宇宙を創造したという「神仮説」である。
英紙「Express」(6月17日)によると、この危険なアイデアに反するべく、米・物理学者アレクセイ・フィリペンコ教授は、宇宙の発生に神を密輸入する必要はなく、ただ物理法則によってビッグバンが生じた主張しているという。フィリペンコ教授にとって問題となるのは、「なぜ無から宇宙(有)が発生したのか?」ではなく、「なぜ物理法則があるのか?」という問いだ。しかし、これにも大きな問題が潜んでいる。
なぜなら、「ビッグバン仮説」では時間・質量・温度などが無限大に至り、あらゆる物理法則が成り立たない“特異点”の存在が想定されているからだ。特異点の問題を解決しない以上、ただ物理法則によって宇宙が発生したとは言えないのである。
画像は「Express」より引用
そこで、ジェームズ・ハートル博士とスティーブン・ホーキング博士は、この問題を避けるため、この宇宙の時間や空間には境界や端が存在しないという「無境界仮説」を考案。実時間に虚数時間を導入することで、物理法則が全く成り立たなくなる特異点を避けることに成功した。しかし、これにも問題がないわけではない。虚数は英語でimaginary number(想像上の数)と言われるように実在するものではないため、想像された時間から実時間へのジャンプを解明する必要があるからだ。
■宇宙誕生の秘密は「トンネル効果」にあった?
画像は「Futurism.com」より引用
この難問を解決するにあたり、大きな役割を果たしたのが量子論で扱われる「トンネル効果」である。ボールを壁に投げると、極めて低い確率でボールが壁をすり抜けるといわれる時のアレだ。これが宇宙の発生において起こり、虚時間から実時間へ量子がジャンプすることで宇宙が始まったとすればよい、というわけだ。これが事実であれば、神に頼ることなく宇宙の発生を考えることができる。とはいえ、このようなファンタジックな現象が実際に起こったというのだろうか?
この度、最新の科学技術情報を伝えるウェブサイト「Futurism.com」が、「無境界仮説」の最新の検証が行われたとのニュースを報じている。独マックス・プランク研究所のジャン・リュック・レナーズ博士らは、ハイゼンベルグの不確定原理を用いて、同説を数学的に厳密に精査。すると、トンネル効果が起こりやすい宇宙は、不規則でくしゃくしゃなことが多く、発生してもすぐに崩壊してしまうような極めて脆弱なものだったという。つまり、「無境界仮説」では我々の知っている規則的な宇宙は発生しないし、持続的に存在することができないということだ。ホーキング博士らの思弁はきっぱりと否定されてしまった。
となると、「無境界仮説」よりも、“端的な無”や物理法則が成り立たない“特異点”を想定する従来の「ビッグバン仮説」が、現在のところ我々が知る最良の仮説ということになる。やはり、神が宇宙を創造したと考えるしかないのだろうか? 謎は深まるばかりである。 トカナより
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