2017年3月29日水曜日

安保法制1年 朝鮮半島有事で自衛隊は… 進む検討、見える限界

集団的自衛権の限定的な行使を容認した安全保障関連法が施行されてから29日で1年となる。この間も北朝鮮は弾道ミサイル発射や核実験を繰り返し、日本を取り巻く安保環境は「新たな脅威の段階」(安倍晋三首相)に入った。トランプ米政権が北朝鮮への先制攻撃を本格検討するなど朝鮮半島有事の勃発も否定できない中で、安保関連法の持つ意味は重要性を増している。

「米国にとって大事なのは、国連平和維持活動(PKO)の駆け付け警護よりも、集団的自衛権だ。これで米国の日本を見る目が変わった」

対米交渉に関与する政府高官は、日米同盟において安保関連法が持つ意義をこう説明する。

米政府が重視するのは、安保関連法が成立する直前の平成27年4月に改定された「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」だ。指針では共同作戦計画の策定・更新が規定されている。複数の政府関係者によると、日米の防衛関係者は外務省も交えた検討に入っており、現在も作業は続いているという。

共同作戦計画の中身は極秘中の極秘だが、朝鮮半島有事の際の米軍と自衛隊の役割分担も含まれているという。ある防衛省幹部は「安保関連法で自衛隊ができることが多くなった。これを共同作戦に反映させることが、日米両政府の課題だ」と話す。

朝鮮半島で軍事衝突が発生した場合、自衛隊はどのような措置をとり得るか。最も現実味があるのが、放置すれば日本への直接的な武力攻撃に至る恐れがある「重要影響事態」での後方支援だ。

周辺事態法とは異なり、安保関連法の下では弾薬の提供や緊急発進準備中の戦闘機への給油もできる。活動地域で戦闘が行われる見通しがあっても活動することが可能だ。とはいえ、実際に戦闘が始まれば自衛隊は撤収を余儀なくされる。米軍を見捨てる形になるわけで、自衛隊内には「米軍には理解してもらっているが、実際にそういう事態が起きた場合に米世論の理解を得られるかどうか」(幹部)との懸念は残る。

事態がエスカレートし、日本の存立を脅かす「存立危機事態」となれば、全面的な戦闘を意味する武力行使が可能で、戦闘の有無にかかわらず活動できる。

政府内で想定されているケースの一つが、韓国に約3万8千人(平成27年10月現在)在留する邦人の保護だ。自衛隊の輸送艦などが朝鮮半島に近づけない場合、米軍に邦人の輸送を依頼するケースもある。米軍の輸送艦が公海上を日本に向かって航行中に、北朝鮮軍が攻撃を加えれば、自衛隊は反撃することができる。

トランプ米政権は北大西洋条約機構(NATO)諸国に対して国防費の増額を迫る一方、日本に対しては在日米軍駐留経費の増額も含めてあからさまな圧力を加えていない。外務省幹部は「安保法制や安倍政権で地道に防衛費を増やしてきたことが一定の評価を得ている」と受け止める。

だが、日本の存立が危機に陥らなければ集団的自衛権は行使できない。安倍首相は、これ以上の法改正は憲法改正が必要としており、安保関連法は「成果と課題」の双方をはらんでいる。
産経ニュースより

0 件のコメント:

コメントを投稿

日産ケリー前代表取締役の保釈決定 保釈金7000万円 東京地裁

金融商品取引法違反の罪で起訴された日産自動車のグレッグ・ケリー前代表取締役について、東京地方裁判所は保釈を認める決定をしました。検察はこれを不服として準抗告するとみられますが、裁判所が退ければ、ケリー前代表取締役は早ければ25日にもおよそ1か月ぶりに保釈される見通しです。一方、...