混乱が続く韓国で、マスメディアの対日論調に変化が起きている。韓国の文化財窃盗団が2012年に長崎県対馬市の観音寺から盗んだ仏像について、1月26日、韓国大田地方裁判所は、韓国政府に対し、所有権を主張する韓国・浮石寺に〈引き渡す〉ことを命じる判決を下した。つまり「日本に返す必要はない」との結論である。
韓国では、日本に渡った経緯を「倭寇による略奪の可能性が高い」という論調が主流で、それに則った結果となった。しかし、この判決に対し、韓国最大の発行部数を誇る全国紙・朝鮮日報は、匿名の国際法専門家の話としてこう報じた。
〈「略奪されたという確証がなく、韓国人が盗んできたことがはっきりしている文化財を『韓国のもの』だと主張するのは国益のためにならない」〉(1月27日付)
さらに韓国3大紙の一つである東亜日報もこの判決に疑問を呈した。
〈500年前に略奪したという理由で、21世紀の明白な盗品を返さなければ、国際社会が私たちをどのような目で見るのか気になる。このようなやり方が認められれば、世界の博物館は修羅場になるかもしれない〉(1月27日付)
これまでの韓国メディアであれば、日本バッシングの“材料”として、この判決を絶賛するような報道に終始したはず。こんな“日本寄り”の報道は、ほとんどなかった。
論調の変化は、韓国メディアにとって反日報道の“最大のネタ元”だった慰安婦像問題でも窺える。
日本政府が在韓大使を一時召還する原因となった釜山市の日本総領事館前の慰安婦像設置について、朝鮮日報はこんな報道をした。
1月7日付の同紙では、この問題を取り上げ、日韓関係は経済や民間分野で深い結び付きがある一方で、歴史問題で対立が続く〈複雑な関係〉であるとし、こう報じた。
〈日本との複雑な関係を「親日か反日か」といった単細胞的な観点からしか考えられないとなれば、冷静かつ常に用意周到に立ち回る日本人と渡り合うことなど到底できない〉
気持ち悪いほどまともなのである。韓国メディアのお家芸である反日報道は、どこにいったのか。産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏が、突然の“まともな報道”の謎を解き明かす。
「朴槿恵大統領の一連の弾劾騒動で、韓国の政治機能は停止。対米では、トランプ新大統領への対応に乗り遅れ、対中では、韓国がTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備を決めたこともあり、全ての軍事交流が中断。そんな中、日本が日韓通貨スワップ協定の協議中断を表明し、駐韓大使の一時帰国も長期化していることで、外交が三方塞がりになっているのです。
特に日本の強硬な対応に韓国国内は戸惑っています。“これ以上、日本を怒らせるな”という雰囲気が政府やメディアにあるため、反日報道にブレーキがかかっているのでしょう」
韓国人ジャーナリストの河鐘基氏もこう言う。
「最近、この手の記事が目立つようになったが、書き慣れていないせいか、何が言いたいのかわからないものが多い。やたらと長文でまどろっこしいのです。本当は分かりやすい反日報道がしたいのに、一方で日本との関係も考慮しなければならない。そんなジレンマを感じます」
※週刊ポスト2017年2月17日号
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年2月9日木曜日
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