2017年1月6日金曜日

がん治療が飛躍的に進歩しても、がん死亡者が年々増えている

現在、日本人の死因の1位はよく知られているとおり「がん」で、死亡者数のおよそ3割を占めています(2015年、厚生労働省人口動態調査)。
 
日本で、がんが初めて死因の1位になったのは1981年のこと。それ以来、がんの死亡者数は年々増え続け、現在にいたるまで死因1位の座を不動のものとしています。

この数字が物語るとおり、がんは多くの人の命を奪う恐ろしい病気です。がんと聞けば、誰もが深刻にならざるを得ないほど、その恐ろしさが周知されています。

それだけに、がん治療の研究は絶え間なく続けられており、その成果として新しい技術や新しい薬が次々に開発されています。

また日本では、国民が公的医療保険に加入し医療費を互いに支え合う「国民皆保険制度」があるため、基本的に誰もが平等に医療の恩恵を受けることができます。

さらに、1カ月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合は、超過した金額が後から払い戻される「高額療養費保険制度」もあり、国内で保険適用されている最先端の医療を誰でも受けやすいのです。今、話題となっている超高額薬価の抗がん剤オプジーボ」も、基本的には誰でも使うことができます。

普通に考えるなら、がん治療の進展に伴い、医療環境が整った日本におけるがんの死亡者数は年を追うごとに圧倒的に減っていくはずです。

ところが実際には、この日本において、がんで亡くなる人の数は年々増えつづけています。がん治療の研究は継続的に行われているというのに、なぜ死亡者数は減少しないのでしょうか。

私たちが暮らす日本のみならず、世界の国々においても、がんの死亡者数は増えつづけているのでしょうか。

がんは無限に増殖する?

 がんは細胞のイレギュラーによって起こる病気です。私たちの身体は約60兆個(近年の研究では約37兆個との説もあります)の細胞からできていて、それらの細胞は自らをコピーし、細胞分裂を繰り返しています。
 
正しくコピーが行われていれば問題はありませんが、何度もコピーをするなかで、うまくコピーできないもの、いわゆるコピーミスが起こります。それが「がん細胞の元」になるのです。

誰の身体でもコピーミスは1日5000回程度起こる、つまりがん細胞の元は1 日に5000個ほどできるといわれています。

「1日に5000個」と聞くと、絶望的な気分になりますが、こうした「がん細胞のもと」は、ほとんどが修復されたり、死んでしまったりします。たとえ修復されずに生き残ったがん細胞の元があっても、「NK(ナチュラルキラー)細胞」と呼ばれる免疫細胞が、修復されなかったがん細胞の元を食べて体内から消滅させます。

しかし、万が一NK細胞ががん細胞の元を見逃してしまうと、それが分裂をくり返すことになるのです。

正常な細胞であれば、分裂を数十回ほど繰り返すと死滅(アポトーシス)し、新しい細胞に入れ替わります。しかし、イレギュラーであるがん細胞の元は、死滅することなく分裂を繰り返し、増え続けていくのです。

ひとつだったがん細胞の元が2つになり、4つ、8つ……と増殖を繰り返し、その数を増やし続けていくと、やがてがんとして認識されます。

がん細胞の元が増殖を始め、それが大きくなりがんと呼ばれるようになるまでには、およそ10年かかるといわれています。これは、がん細胞が1センチ(細胞数10億個)になるまでの期間は約10年と考えられるからです。

つまり、60歳でがんと診断された人は、少なくとも50歳くらいの頃から、がん細胞の元が成長し始めていたのかもしれません。

現代の西洋医学では、がんは無限に増殖するとされています。これは近代医学の祖といわれるドイツ人医師のルードルフ・ルートヴィヒ・カール・ウィルヒョウ(1821~1902)の「がん細胞増殖説」に基づくものです。ウィルヒョウは、「がん細胞は、ひとたび発生すると無限に増殖を続ける」と主張しました。

しかし、その説に沿うと、納得できない面があります。がんは、1回分裂すると2個になり、2回分裂すると4個……、40回で 1兆個に達します。この計算でいくと、46回目の分裂で64兆個となり人間の細胞の数とされる60兆個を超してしまいます。

ウィルヒョウの理論では、「正常な細胞の多くは、分裂を数十回くり返すと、それ以上の分裂能力を失うか、細胞がアポトーシスするように設計されている。しかし、DNAに異常のあるがん細胞は、アポトーシスすることなく分裂を続ける。そして分裂・増殖を繰り返し、ついには宿主(患者)を死に至らしめる」とされています。

しかし、これは150年も前の時代の理論です。私たちの体内には、毎日5000個ともいわれるがん細胞の元が発生しています。ウィルヒョウの説が正しければ、人類はとっくに滅亡しているはずです。毎日がん細胞ができているのに人類が100万年以上も生き延びているのは、NK細胞をはじめとする身体の免疫システムが、がん細胞の増殖を抑えてくれているからです。

ウィルヒョウの時代には、免疫細胞の存在すら見つけられていませんでした。そのため「がん細胞・無限増殖論」に世間は納得したかもしれません。しかし、免疫細胞の存在が明らかになった現代でも、なぜかまだウィルヒョウの理論が定説となっているのです。

日本人のがん死亡者数が減らない原因のひとつは、いまだに「がん細胞・無限増殖論」を信じるあまりに、自分自身が持っている免疫の力を忘れてしまっているからではないでしょうか。
Business Journalより

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