今インドを訪れる旅行者を悩ませる最大の問題がキャッシュ。ATMで現金の引き出しが制限されているのだ。1回につき4,500ルピー(8,100円)しか引き出せない(去年末までは2,000ルピーだった)のだが、インド国外で発行されたクレジットカードでのキャッシングなら、この操作を何度でも繰り返せるので問題はなかった。ちなみに僕は20回繰り返しました。
ただしATMで1回キャッシングするたびに108円の手数料が取られるのは問題です。これまでだと通常だと1万ルピー下ろして手数料は216円だったから、かなり損をする計算になります。
しかし町によっては現金を手に入れることさえ難しい場合もあります。とくに地方都市では現金不足が恒常化していて、ATMの前には長蛇の列ができています。街中にATMはたくさんあるものの、大半が紙幣不足で稼働していないマシンなので、現金が供給されたATMには人々が集まってくるのです。
列に並ぶのが苦手で、すぐに横入りするのが当たり前だったインド人も、ATMの前ではしっかりルールを守っておとなしく列を作っています。インド人も洗練されたんだなぁと妙なところで感心。しかしこれは銀行口座を持っている、それなりに社会的信用のある人たちの例であって、鉄道駅や映画館の前では、相変わらず窓口に殺到するインド人らしさ全開の姿を目にすることになりますが。
とにもかくにも、30分以上列に並んでようやく現金を手にすることができると、ひと仕事終えたような達成感を得ることになります。
そもそもなぜインドが現金不足に見舞われているかというと、去年の11月に行った「500ルピー&1,000ルピー廃止」という政策の結果です。これは脱税や資金洗浄といったブラックマーケットを標的にした政策だと言われていますが、同時に市民生活に大混乱をもたらす劇薬であったわけです。
もし日本政府が「明日から1万円札と5,000円札は廃止。新札2万円札で行きます」という通達を突然出したら、非難囂々で政権はとても維持できないと思います。でもインド人は貨幣経済をそれほど信用してないので、「まぁそういうこともあるでしょう」と比較的おおらかに構えています。
もともとインド人は通貨の価値をあまり信用していないところがあって、手持ちの現金を貴金属や高額商品に替えておく習慣があります。どの街にも必ず「金銀宝飾店」界隈があって、資産は(価値が比較的変わりにくい)モノに替えておくわけです。そうすれば、今回のような紙幣廃止が起きてもダメージは最小限に抑えられる。ガンディーの肖像が描かれた紙幣の価値なんて、はなっから信用していないのです。
この「旧紙幣廃止、新札切り替え」のタイムリミットは2016年12月31日まで。2017年になると、旧紙幣は紙クズになってしまうというので、僕も手持ちの5,000ルピーを何とか新札に替えてもらう必要に迫られたのです。しかし銀行の窓口では「ATMで現金を引き出したというレシートが必要」と言われて(そんなものすぐに捨てちゃうよ)しまったので、仕方なくバイク屋のオヤジの協力を得て(彼の銀行口座に預けるというかたちで)、何とか切り抜けることに成功しました。タイムリミットまであと4日。ギリギリのところで紙屑化を逃れることができたのです。
旧札も新札も結局デザインはほぼ同じ。マハトマ・ガンディーが描かれています。まぁガンディー以外の偉人や宗教的な図案だと、それに反対する人も大勢いるから、「安全パイのガンディーで」ってことになるのでしょうね。
1月1日をもって紙クズになったはずの旧500ルピー札と旧1,000ルピー札を販売する謎の屋台を発見しました。20ルピーで売っているが、誰が何の目的で買うのでしょうか? さらに謎なのは、このお札がコピーされた偽札だということ。よく見ると番号はすべて同じ。謎だらけです。
と思っていたら、実はこれ、旧札をデザインしたお財布なんだそうです。今回の紙幣切り替え騒動を逆手にとったジョーク商品なのですね。しかしまぁこんなものよく考えたなぁ。
さて、インド全土に大混乱をもたらした今回の旧紙幣廃止騒動。これがモディ首相の狙い通りブラックマーケットにダメージを与えたのかどうかはわかりませんが、その副作用によってインド経済が大きなダメージを受けているのは確かです。なにしろ口座から現金を引き出せるのが1日2,000ルピー(今は4,500ルピー)までに制限されたわけだから、高い買い物(たとえばバイクや車)をしようと思っても、手元に現金がないので諦めざるを得ない。実際、バイク販売店のオーナーは「景気は悪いよ」と言っていました。
インド政府関係者は「これを機に、現金決済からクレジット・電子決済社会へ移行するのだ!」とぶち上げているらしいですが、「そんなのムリでしょう」というのがインド庶民の正直な感想でしょう。インド人がクレジットカードを使っている場面なんて全然見たことがないし、カードそのものがまったく普及していない。スマホは急速に普及しているけど、貧困層まで行き渡っているわけではない。
確かにこの数年でインド経済は確実に成長を遂げてきたし、インド人の金回りは良くなりました。
5、6年前だと何かモノを買って500ルピー札を出すのはドキドキものだった。「釣り銭がねぇよ」と受け取りを拒否されるのが当たり前だったから。でも今は違います。路上に果物を並べて売る行商人だって、ちゃんと500ルピーを受け取ってくれる(まぁ「みんな」ではないけど)。
とはいえ、「ようやく現金ってものの価値を信じ始めていた」インド庶民に対して、「これからは電子決済の時代です。あなたの銀行口座の数字のみが信用できるのです」と言ったところで、「はぁ? なに言ってんだ?」という反応しか返ってこないはずです。明らかに時期尚早です。
最後に、これからインドを訪れる日本人旅行者へのアドバイス。大都市であれば、基本的にATMでのキャッシングはできるし(多少列に並ぶことはあるにせよ)、引き出せる上限額も気にしないでいい(その分手数料はかかりますが)。空港での現金の両替はレートも悪く、手数料もぼったくられるので避けた方がいいです。また、デリー国際空港の両替ショップでは、使えなくなった旧500ルピー札を渡すという詐欺行為があったとのこと。要注意です。 MAG2NEWSより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年1月21日土曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
日産ケリー前代表取締役の保釈決定 保釈金7000万円 東京地裁
金融商品取引法違反の罪で起訴された日産自動車のグレッグ・ケリー前代表取締役について、東京地方裁判所は保釈を認める決定をしました。検察はこれを不服として準抗告するとみられますが、裁判所が退ければ、ケリー前代表取締役は早ければ25日にもおよそ1か月ぶりに保釈される見通しです。一方、...
-
インターネット 上には「掛けてはいけない電話番号」と銘打たれた、詳細不明の電話番号のリストが多数存在しています。それら電話番号と共に書かれている文面を見るに「掛けると死ぬ」「呪われる」「ドッペルゲンガー」「 宇宙人 」「貞子の電話番号」「花子さんの電話番号」などなど、いかにも恐ろ...
-
ホラー 映画『ファイナル・デッドコースター』で描かれるような遊園地での悲惨な死亡事故は、残念ながら現実でも起きてしまうことがある。今年8月には岡山県の遊園地で、走行中のジェットコースターの安全バーが外れ、乗客1人が負傷する事故が発生した。また、同日には大分県の遊園地でも、レールを...
-
人を殺した人と会う。 死刑囚 の実像に迫るシリーズ【3】 「“あの時”に 時間 を戻せたらいいのに、ということはいつも思います。ただ、もしも“あの時”に戻れるとしても、今の自分で戻りたいです。自分まで当時の自分に戻ったら、また同じことを繰り返してしまいそうだからです」 昨...
0 件のコメント:
コメントを投稿