トヨタ自動車は24日、米インディアナ州にある工場の生産能力を増やし新規に約400人を雇用すると発表した。トランプ米大統領への配慮とみられるが、別の思惑もある。インディアナ州の前知事は副大統領のペンス氏だ。親企業で知られた同氏は自動車業界に詳しい。打つ手が読めないトランプ大統領。トヨタはペンス氏をテコに米国の新政権との関係構築を探っている。
「トランプ氏とは一切関係ない。前からある話だ」。トヨタの関係者は発表後、今回の投資はあくまでビジネス上の判断だとの点を強調した。同じコメントは月初に相次ぎ雇用増を発表したゼネラル・モーターズ(GM)もフォード・モーターも出している。「トランプ時代」の模範解答だ。
理由はどうあれ雇用の話はトランプ大統領には響く。そして、今回はペンス副大統領のお膝元での投資と雇用だ。「米国に貢献していないとは言わせない」との思いが発表には込められている。
インディアナ州にとってトヨタの存在は絶大だ。同じ州にあるGMの工場よりも多い約5000人の従業員を抱え、賃金水準も「周辺企業より高い」(日系メーカー関係者)とされる。
何より州関係者が覚えているのは米系メーカーが雇用を大幅に減らした2008年の金融危機時だろう。この時、トヨタは07年から生産を委託していた富士重工業のインディアナ工場で「カムリ」の生産台数を2倍以上に増やした。トヨタがいなければ同工場で大規模なリストラが起きていた可能性もあった。
そんな同州出身の前知事を、トヨタはトランプ氏とのパイプ役と位置づけているふしがある。9日にデトロイトでの北米国際自動車ショーに出席した豊田章男社長はその足でワシントンに飛び、ペンス氏と会談した。今回の投資もほのめかし、トランプ氏の「口撃」回避の糸口を探ったとみられている。
ペンス副大統領に頼ろうとしているのはトヨタだけではない。10日、デトロイトで開かれた業界向けの夕食会で、フォードのビル・フォード会長は「業界のことを分かっているのはペンス副大統領」と明言している。
フォードはメキシコ投資でトランプ氏から厳しい批判にあった。グローバルに散らばる部品供給網や設備産業がゆえに投資撤回が難しい点など「自動車業界特有の複雑さをトランプ氏に伝えるには側近のペンス氏が最適だ」というのがフォード会長の見立てだ。
24日にワシントンで開かれたトランプ大統領とGMやフォードなど米自動車大手3社との会談にもペンス副大統領は同席した。トランプ氏の意をくみながらも、業界を傷つけず最適な着地点を探る。そんな役割を自動車業界はペンス氏に期待しているように映る。
「インディアナでの経済発展への貢献に感謝する」。富士重工業の工場敷地内にはペンス氏の知事時代のサインが入った賞状が飾ってある。インディアナ州にはこのほかホンダも拠点を構え、日系3社が車の製造で進出している。企業誘致の目的から知事在任中の訪日も多かったペンス氏の日系企業への感情は決して悪くはないだろう。
日米自動車摩擦を思わせる発言など予測不能のトランプ大統領。新政権の産業政策を読むうえで日本の関係者がペンス副大統領の動向から目が離せなくなったことは間違いない。
日経新聞より
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年1月25日水曜日
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